人とシステムの関わり方に思う事
私は20年以上IT業界に関わっています。
その間、ひとくちにITと言っても
いろんな形でかかわってきました。
インターネットコールセンター、スマホコールセンター、
様々な業界のプログラマー、システムエンジニア、
カスタマーサポート、インフラ管理などなど。
そんな私は、あと5年ほどで
IT業界から足を洗おうと思っていますが、
今感じている、ITに関する想いをつづってみます。
①私が若かりし頃
私が若い頃、20代後半~30代はITを過信して、
システムさえしっかり作り込まれていれば、
人間をいくらでもコントロールできるとか、
コンピュータが優秀なら人はいらなくなるとか、
本気で思っていた時期もありました。
今になって思えば、私自身が人間でありながら、
人間というものを理解していなかったと、
恥ずかしく思います。
20年以上関わってくる間、実に様々な
新技術が発表され、新言語が発表され、
そのたびに飛びついては触れていました。
新しいWindowsが出ればすぐ導入し、
仕事でサーバ構築をする必要が出れば、
自宅でわざわざサーバ専用機を組み立てて、
Linuxサーバを構築したりもしました。
もちろん、MacもMacOS8くらいから触りました。
新しい開発言語が出れば、すぐパソコンに入れて
触り始めたりもしました。
ソフトだけでなくハードも、
新しいCPUが出れば載せ替えたり、
新しいグラフィックボードが出れば、
買ってきてパソコンに搭載したりしました。
それだけでなく、iPhoneやAndroidスマホ、
タブレットなども様々なものに触れました。
②色々触れていく中で気付いた事
今では、新しいものを追い掛け回す事はしていません。
ある時から、自分が新技術や新言語を追う事で、
「単に振り回されている」
という事に気づいたのです。
新しい技術、新しい言語、新しいソフトウェア。
いくらでも新しいものが出てきます。
そう言ったものが出てくるたび、
「次の時代はこれだ!」
と言って追っている自分を冷静に振り返った時、
「この技術がすごい!このソフトがすごい!」
という風に、よく中身を理解もせず、ただ盲目的に
新しいものを追っていた事に気づいたのです。
その時、それが
自分に本当に必要か
これを知って社会に役立てるか
自分がいる組織の為になるか
これで誰か喜ぶか
などは考えていませんでした。
要するに、
「技術を見て人を見ず」
という状態だったのです。
まさに
「木を見て森を見ず」
こういった状態だったのだと思います。
③システムや新技術に振り回されてはいけない
システムやそれを構成するコンピュータは、
結局は人が作ったものです。
ですから、人がそれを使いこなすなら良いですが、
「人が作ったものに人が振り回されてはいけない」
私はこのように思うのです。
新しい技術はまだまだこれからも出てきます。
それが本当に自分に必要なのか、
意味があるのか、役に立つのか、
よく考えて必要なら追えばいいと思います。
そうでないなら、それがどんなに新しくとも、
追う必要はないでしょう。
放っておいても、普及すればいずれ使う日が来るし、
その時にはいろいろな問題が解消された状態で
触れられることになると思います。
新しいものに何でも飛びつくのは、
新しいものに振り回されに行くようなものだと
私は思うのです。
そう、ちょうど
竜巻の中心へ自ら飛び込むようなもの
ではないかと感じます。
④人を大切にしたうえでシステムを活用する(特に組織では)
それから、システムやコンピュータを重視するあまり、
人対人の関係性を軽視するのは、問題だと思うのです。
これはかつて自分がシステムを重視するあまり
人を軽視していた時期がある事の反省でもあります。
例えば、最新のシステムを導入して
組織を構築したとしても、その組織で実際に動くのは
コンピュータではなく、まぎれもなく、
「人」
です。
その人同士の関係性をシステマチックに、
論理性と効率だけで整理整頓しようとすると、
かえってシステムではどうにも解決できない
人間関係のトラブルという問題が発生しかねません。
また、そういったトラブルは無かったとしても、
利便性を損なう事は往々にしてあると思います。
その事が結果として、かえって効率を落とす事にも
なり得るでしょう。
人間が便利で使いやすいと思うかというのと、
システム的に制御や稼働しやすいかというのは、
全く別物だと考えています。
人間の利便性に偏ればシステムの処理の上では
非効率になり得ます。
また、システムの効率に偏れば、
人から見た利便性は低下するでしょう。
ですから、システムというのはそこのバランスを
よく考えて導入・活用する必要があると思うのです。
何でも新しいシステムが良いわけではありませんし、
新しいシステムを入れた結果、かえって効率が落ち、
それだけでなく人対人の連携が上手くいかなくなり、
組織が崩壊した例もいくつか見てきました。
ですから、
新しい≠良い
古い≠悪い
だと思うのです。
つまり、新しいものが必ずしも良いわけではないし、
古いものが必ずしも悪いわけではないと思うのです。
新しいものがあるというのは知りつつ、
本当に必要があれば導入し、古い物でも問題が無ければ
そちらを選択するというのでも良いのではないかと思います。
特にシステムを活用して何らかの組織を運営するなら、
新しいものの導入は一定の慎重さを持つ事が
大切ではないかと思います。
最後に
今まで色んなシステム開発に関わり、
色んなOSやコンピュータをさわってきました。
そんな中で今思えるのは、やはり
現時点でコンピュータは少なくとも
「感情を持つ」という側面で人間を超えられない。「人」がどこまで行っても「人」である様に、
「機械」はどこまで行っても「機械」でしかない。人間は、その人の人となり、温度感、感情の起伏や機微、
ちょっとした表情に現れる心境の変化などなど、
コンピュータには理解できない事が理解できる。これが理解できないシステムに偏重するのは、
人同士の関わり方を著しく損なう可能性がある。
と思うのです。
私はITに関わる、いち技術者として、
これからもIT業界にいる少なくともあと5年は、
まずはシステムではなく
「人を大切にするIT技術者」
でありたいと思います。
そして、人とシステムをマッチングして、
どういうシステムを組み合わせれば便利になるか、
楽しくなるか、そんなことを考えられる
そんなエンジニアでありたいと思います。