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サイチョウの日の特別イベント。

 先日、愛媛県のとべ動物園で行われた、サイチョウの日に関するイベントに参加する機会があったので、そこで見聞きしたことに関して話そうと思います。是非最後までご覧ください。

1.サイチョウの日とは。

 アフリカや熱帯アジアに数十種が生息する鳥の一種で、大きな嘴と、頭の上の突起(カスク)が特徴的。それがサイチョウの仲間達です。
 サイチョウの頭のカスクは、人間の爪や髪に似てケラチンでできていて、声を響きやすくする等その用途には諸説あります。

サイチョウの一種、カササギサイチョウ。かつてはとべにもいました。

 サイチョウの日は、そんな彼等に関するあれこれについて、より多くの人たちに知ってもらうため、日本動物園水族館協会(=JAZA)によって制定された記念日で、毎年3月1日がその日になっています。

2.とべ動物園とは。

 四国の一角、愛媛県の砥部町。砥部焼で有名なこの町にとべ動物園はあります。地域・分類別に分けられた10のエリアが存在し、王道から珍しい種まで色々な動物たちを見ることができます。
 人間の手で育てられたホッキョクグマのピースや、サバンナゾウの繁殖でも有名な場所ですね。

ホッキョクグマのピース。とべの顔的存在です。
サバンナゾウの媛(左)、砥愛(右)姉妹。奥には、2頭の母親、リカの姿が見えています。

 今回の題材、サイチョウの中ではかなりの大型種であるオオサイチョウがいるのは、アメリカストリートというエリア。
 東南アジアに生息する鳥ですが、アメリカの動物たちのエリアにいるのは、姿形や生態に類似点が存在する、南米原産のオニオオハシ(別称はオオオオハシだが、正直言いにくい…)と比較展示されていた名残です。

オオサイチョウの屋外展示場。その右側には、南米獣舎の入り口が見えます。
オオサイチョウの室内展示場。入り口に近いところにあります。

3.特別ガイドを見て。

 さてさて、ここからは今月2日にあった特別ガイドから、小話をいくつかご紹介します。

ガイドでの1シーン。

3-A.とべのオオサイチョウたち。

 現在とべにいるのは2羽。屋外展示場に暮らしているのは、メスのNo.1。かなりの高齢で飛ぶことは苦手で、ほとんどの時間を地上で暮らしているとのこと。

No.1。ガイドがあった日は鳥インフル対策で、屋根のある奥の方で過ごしていました。

 そして、室内にいるのはオスの天王寺。とべに来る前は、大阪の天王寺動物園にいたことが名前の由来だそうです。

食事中の天王寺。野生下ではイチジクや小動物等を食べる雑食性の鳥、動物園ではコオロギやバナナ、蒸したニンジン等を与えています。

 オスとメスの見分け方は、頭の上のカスクに黒い線が入るか否か(入るのがオス)、瞳の色(オスは赤くメスは白い)です。

 現在は別々に飼育されていますが、繁殖期である3〜4月には互いの姿こそ見えずとも鳴き合う様子がよく見られるとのことです。

3-B.変わった繁殖方式。

 このオオサイチョウは、独特のやり方で子育てを行う鳥でもあります。

 それは、大きな樹洞の中にメスが立てこもり、入口を糞等で塗り固めた上で小さな隙間だけ設けた上で、巣立ちまでオスが餌を探し、運ぶのです。

子育ての間、オスは大忙しです。

 1回の産卵で産む卵の数は、1個だけ。巣の中にずっといるメスとヒナのために餌を探し、与え続けるのは重労働でしょうし、1羽に全力を注ぎ込み、確実に育て上げる道の方が良かったのかもしれません。

3-C.とべでの繁殖事情。

 実は、とべは日本で初めてオオサイチョウの繁殖に成功した実績を持ちます。
 彼等特有の生態に配慮するため、米松でできた大きな巣箱まで用意していました。ただでさえ大型である上、野生下では広大な範囲を飛び回る彼等のこと、決して広いとはいえないとべで、無事に繁殖にまで漕ぎ着けたことは凄いことだそうです。

繁殖賞の受賞の証。管理事務所で見ることができます。
繁殖に使われた巣箱。今でも展示場に残っています。

 最近だと、10年ほど前に産卵がありましたが、残念ながら無精卵。その後は個体の加齢もあり、現在は繁殖には取り組んでいません。

3-D.厳しき現実。

 さて、オオサイチョウは現在絶滅が心配されている鳥でもあります。原因としては、装飾品になる羽や頭部、食肉等が目当ての乱獲や、生息地である森林の乱開発が挙げられます。

南米獣舎で展示されている羽。これが標的にされています。

 繁殖に必要な大きな樹洞がある木は、開発するにあたっては邪魔な存在。なので優先的に切り倒されます。そして、木々が切り倒された後には、アブラヤシや天然ゴムのプランテーションに変えられます。そして、日本はそれらの一大輸入国。私たちの暮らしとは決して無縁ではないのです。

 また、巣の外で行動する機会の多いオスは密猟者に捕らえられやすく、そうなると巣の中のメスやヒナも死滅してしまいます。生き残るための策が、かえって個体数を減らしやすくする要因になってしまった。凄く皮肉な話です。

4.最後に。

 実は、オオサイチョウは国内では数ヶ所で10羽に満たない数が飼育展示されているだけの、貴重な鳥です。
 身体が大きく広い範囲を飛ぶため、狭いスペースでの飼育にはあまり向いていないことや、CITES(=ワシントン条約)では商取引が原則禁止であり、輸入が容易ではないことが、その要因です。

No.1。ガイドがあった日とは別の日に撮ったもの。

 とべでも今後見られなくなる可能性は高いです。その風変わりな姿を拝むことができるのは、まさに今のうちの貴重な機会なのかもしれません。皆さんも、オオサイチョウを飼育している場所を訪れてみたら、一度はじっくり観察してみてはどうでしょうか。

 今回は以上とさせていただきます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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