キャリアは逆算すると狭くなる
最近、20代の進路相談に乗ることがあった。みんなとても優秀だが悩んでいる。僕が社外取締役を務めているワンキャリア社でも「人の数だけ、キャリアをつくる」と掲げているように、現代において人生の“正解”は消えつつある。
最近は新卒で会社を選ぶときも、2-3年後の転職を前提に選ぶ学生が増えているという。終身雇用が実質的に成立しなくなっているので、自分の身は自分で守るしかない。この流れは不可逆だろう。
ただ話を聞いていると「あのポジションに就くために」「あの会社に入るために」などと、数年後の自分を考えすぎている傾向も感じる。今の仕事はあくまでステップであり最短経路を辿りたいと。SNSで周りの活躍が見えすぎるゆえの焦りもあるだろう。しかし、今持ち合わせた視野でキャリア逆算しようとしすぎるのは、結果として自分の可能性を狭めるように思う。
「プランド・ハップンスタンス(Planned Happenstance)」という考え方がある。「キャリアというものは偶然の要素によって8割が左右される。偶然に対してポジティブなスタンスでいる方が未来が広がる」という理論だ。
1999年にスタンフォード大学で教育学と心理学の教授を勤めていた、クランボルツ教授によって提唱された考え方だが、実際に僕の周りを見ていても、大成する起業家やビジネスパーソンにはそういうスタンスの人が多い。(アスリートは分からない)
僕も以前、こんなnoteを書いた。
結局、仕事もキャリアも、誰かのために汗をかいていたら、感謝としてパスが巡ってくるものだと思う。自分が勝ち馬に乗ろうとするのではなく、顧客を勝ち馬にする姿勢こそ、運の正体とも言える。
たしかに専門職は技術の磨き込みが求められるだろうが、総合職の人は、自分のスキルやポジションを確立することに一生懸命になるのではなく、「誰のために」「何のために」働きたいかを決めて、がむしゃらに頑張るほうがブレない軸となり、実はキャリアという資産が積み上がっていくのではないか。
ちなみに僕の場合は、ブランディングの仕事をしたかったわけではなく、尊敬する「起業家のために」動いていたら、結果的に今のようなキャリアになった感覚だ。そして今それが「地方のために」という形で縁が広がっている。不思議なものだ。
人生に決められた正解などはないが、こういう偶然を楽しめるかどうかは問われているのかもしれない。