終わらせないお金の使い方
お金を稼ぐのは大変だが、その稼いだお金を上手に使うのはもっと難しい。特に、大きな額になるほど難しい。
僕の尊敬する先輩経営者が興味深い話をしていた。ぼかして書くが、その人は何十件もM&Aをしてきた投資・ファイナンスのプロである。出資する際はいわゆるDD(契約前調査)を徹底的にする。しかし、人生で唯一、何の条件も一切見ずに数億円投資したことがあると。
それは、前に会社を一緒にやってたときに、誰よりも現場で頑張っていた人。経営上の事情や様々な不運も重なり、ハッピーエンドを用意できなかった。色々と苦労をかけてしまったことが引っかかってた。その人がもう一度独立して挑戦したい、と言ったときノールックでの投資を決めた。
このエピソードを聞いたとき、僕は「終わらせないお金の使い方」だと思った。
お金には、支払うことで解決し、その関係を終わらせる役割がある。金融を表す英語「finance」の語源を辿ると、映画の終わりに出てくるフランス語の「fin」と共通している。つまり「終わりにする」ということ。
仕事でも事故でも離別でも、お金を払うことで一区切りつけることができる。特に人生を切り替えたいときには有効だが、逆にお金は関係性をブツブツと切ってしまう性質の道具だとも言える。
一方で、人生の豊かさは、家族や地域など長く続く関係性によって、思い出などとともに育まれるものでもある。そういう関係性を続けるためのお金は良いお金の使い方なんだと思う。少なくともそれを語ってる先輩の顔はとても晴れやかだった。