ぼーろランドへようこそ 3
朝を迎えた。
カラリエで枕までポカポカだった寝床は、朝までぐっすりと眠らせてくれて、むっくりと起きる。7時半。
リビングへ入ると、昨日より更に爽やかなぼーろ氏がいた。
既に朝食をこさえてくださっていた。
我が家の昭和家屋と違って、台所の換気扇が優秀なのか、料理が運ばれるまで香りがわからない。
白湯をいただいていると妹も降りてきて、朝食タイムとなっった。
そこに登場したのは
キヨさんのアレである。
おはよう、ドラッグストア昔話。
鹿の子の鳴き声で炊き上がったアレで、みちが涙を堪えてほうばったアレで、じいさんが米粒を飛ばしながらキヨの話を聞いたアレである。
更に見せると、
滋養たっぷりの野菜のお味噌汁付きである。
糖付けの大根や、味噌あえの昆布や、昆布と椎茸の旨煮や、梅干が添えられ、上品な朝の一品で始まってしまった。
そんな至福の朝餉ののち、ぼーろ氏のスーパーカブを見せていただこうと声をかけたら乗って良いですよ、と、さささっと、防寒グッズが出てきた。
これまた不思議なくらいなんの抵抗もなく、自分の服のように着ていく。
自他共に認める似合う感。
そして少しだけ、ぼーろ氏のカブでそこまで行かせていただいた。(カブでそこまでと言うブログを書いているのだ)
晴天。
9時をまわった頃の道はそんなに混んでおらず、遠くには山が見える。
ぼーろカブはギアチェンジが滑らかで、エンジン音もとても静か。オイル交換したてなのかと思ったら、ちょっと良いオイルを使っているそうだ。納得。
あったかくなったらカブで遊びに来よう
楽しみが増えた。
家に戻り、いざ3人で出発。
もちろん今日の予定も聞かない。
なんの不安もない。
お互いに答えを求め合わないガイドと客であることが、とてつもなく心地よい。
昔の私は予定がびっしりでないと不安だったことを思い出す。
次に何が起こるかある程度知っていたかった。
それは、自分を信じられなかったんだな、なんて答えが降りてくる。
車中では、ぼーろ氏が町の歴史を話してくれる。それだけで、景色には昔話が重なり、見えないものが見えてくる。
最初に来たのは、女郎塚だった。
中山道近くのお寺。
女郎塚は、とても綺麗に手入れされており、代々の檀家さんやご住職の心遣いを感じた。
女郎たちが丁寧に葬られた塚は、優しい光があたり、祈りで清められていて、私は心が少し軽くなった。
お招きくださりありがとうございます。
心の中で呟き、手を合わせた。
その後、立派な神社へと向かう。
都内を中心に動いていると、明治神宮はとても厳かに感じるが、各地に雄大な素晴らしい神社があって、明治神宮に重きを置きすぎていたことに気づく。
参拝後に、参道へ降りると、神社のお膝下にたい焼き屋さんがあった。
たい焼き食べましょう。
ぼーろ氏に促されるままにお店に入る。
餃子屋さんのおじさんに近い、真心のこもったおじさんがたい焼きを焼いていた。
お客さんに言うと喜ばれることや、自分の真心が伝わる言葉をおじさんは知っていた。
はい、3つね、これから焼きますからね
おうちで食べる分はこっちだよ、先に今食べる分は焼いてるからちょっと待っててね。
バッグに入れない方がいいよ、そのまま持っていってね。
そうやって、お持ち帰りのお客さんとも会話を重ねる。
どの言い方も優しくて、丁寧で、嫌な感じがひとつもしなかった。
自分の信じることを丁寧に表現することが仕事なのだという誠意を感じた。
焼きたてのたい焼きが来た。
一口食べる。
耳がカリッという。
遠くで、鐘が鳴った。
ゴーン………
美味しい。
平和な空間に、全てが融けた。
市街地を散策し、うどんを食べて、私たちは次なる聖地へと向かった。
つづく