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描かれているのは今に通じる女性像『羊たちの沈黙』

羊たちの沈黙ポスター画像②

6月7日(日曜日)にBSフジで『羊たちの沈黙』が放送した。筆者は、ザッピングしてる最中に、偶然観たのだがそのまま最後まで観てしまった。『羊たちの沈黙』が劇場公開したのは、1991年。今から約30年も前の作品なのに、これだけ引き付けられるのだから、映画は面白い。しかも、BSで放送したにも関わらず、『羊たちの沈黙』がTwitterのトレンド入りするなど、筆者だけでなく多くの人が、本作に改めて魅了されたようだ。今回改めて、観返してみて本作がどれだけ凄い作品か、また今を先取りしていた事などを述べていきたいと思う。

【本作は何が凄いのか?】

サスペンス、ミステリー、スリラー、ホラー…本作を調べてみるとジャンルが統一されてない事が分かる。それは本作が様々な要素を含む作品だからだ。連続殺人犯を追うクラリス、バッファロービルという、世にもおぞましいシリアルキラー、そしてハンニバル・レクターという巨大なカリスマ。本作の凄いところは、後世の作品に与えた影響からよく分かる。このシリアルキラーが登場する『セブン』(1995年)は少なからず、本作に影響を受けているだろうし、レクター博士を参考にしたであろうキャラクターなどは日本の漫画などからも見受けられる。(ちなみに画像は『サイコメトラーeiji』の沢木晃)

サイコメトラーエイジ①

本作は、その年のアカデミー賞(第64回アカデミー賞)で、作品賞を含む5部門を受賞している。(監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)主要5部門を制覇したいうのも物凄い事なのだが、こういったダークなテイストの作品で作品賞を獲得したのは本作が初というのだから凄い。

【女性の描き方が画期的】

筆者が本作を観て、特に感嘆したのは、女性像の描き方だ。『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019年)や『チャーリーズエンジェル』(2020年)など、最近でこそ女性=守られる存在という概念を変えるような、闘う女性の映画は多くなった。しかし、この映画が公開した1991年は、まだまだ女性が社会的にも軽んじられるような事が多かった時代でもある。(実際、クラリスが若い女性という事で、軽く見られてるであろう場面もある。)そんな時代に、連続殺人鬼の魔の手から被害者を救いに行くのが、賢く強い女性というのはこの時代に見ると、改めて画期的だと思う。

羊たちの沈黙②

もちろん、トマス・ハリソンの原作による所も大きいのだが、故・ジョナサン・デミ監督による演出、そしてジョディ・フォスターの知性を感じさせる演技が、クラリスという魅力的なヒロインを生み出したのだろう。


【『羊たちの沈黙』豆知識】


【当初、監督は本作の撮影に乗り気ではなかった!?】
本作の映画化権を獲得していたのは、『俺たちに明日はない』(1967年)、『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)などで知られるジーン・ハックマン。しかし、脚本が暴力的であったため、権利を放棄してしまった。その権利を買い取ったオライオン・ピクチャーがジョナサン・デミ監督に話を振ったらしい。監督は、当初、乗り気ではなかったが、脚本を読んでその奥深さに惹かれて映画化を受ける事を決意したらしいぞ。


【アンソニー・ホプキンスもジョディ・フォスターも第一次候補ではなかった!?】
レクター博士とクラリス。両者を演じたアンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターの演技は間違いなくこの映画に欠かせないものだが、実は二人とも当初から予定されたキャスティングではなかった。
レクター博士は、スタジオ側がはショーン・コネリーを希望したが、拒否されたため、第二希望のアンソニー・ホプキンスへ。
クラリス役は監督が、ミシェル・ファイファーを希望していたが、こちらも脚本が暴力的過ぎると拒否されたため、この役を希望していたジョディ・フォスターになった。結果として当初の予定通りいかなかったキャスティングだが、蓋を開けてみたら、アカデミー5部門受賞、映画史に名を残す作品になるとは、オファーを断った二人はさぞ悔しかったのではないだろうか。

【レクター博士の出演時間の短さにビックリ!!】
強烈な存在感を放つレクター博士、しかし、実はクラリスとレクター博士が対面したのは劇中内では4場面。しかもレクター博士が登場する時間は、118分ある作品の中で、わずか11分間に過ぎない。
これだけ短い時間であれだけの存在感をはなつレクター博士のインパクトと、彼を演じたアンソニー・ホプキンスの演技力の素晴らしさに改めて驚かされてしまう。

羊たちの沈黙④

という訳で、筆者も『羊たちの沈黙』、久し振りに鑑賞したが、その面白さと完成度の高さに改めて感嘆としてしまった。今もって、思わず目をそらすようなグロさや怖さも健在。ジョディ・フォスターの凛とした可愛らしさと美しさが同居した存在感にも目を奪われる。そして、アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士のカリスマっぷりも素晴らしい。何より、これだけの時間を経ても色あせない映画という存在の素晴らしさを改めて感じることができた。

映画界の金字塔的もある作品である本作だが、約30年も前ということで、観てない人も案外多いのでは。もしこれを読んでる貴方が、まだ観てないのなら是非一度鑑賞してみることをお勧めしたい。



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ヴィクトリー下村
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