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ダニエル・ラドクリフが挑む前代未聞の脱獄劇『プリズン・エスケープ』

9月18日に公開される『プリズン・エスケープ』。本作は、『ハリーポッター』シリーズなどで知られるダニエル・ラドクリフ主演の脱獄スリラー作品だ。その公開にあわせて8月31日に行われた、シネマート新宿の特別先行上映イベントに筆者も行ってきたので、その感想をネタバレ無しで皆さんにお伝えしたい。(ちなみに映画上映後に、クイズ大会があったが、スピーカーの不具合などあったのに会場を盛り上げてくれてとても楽しかった。トートバッグや、ポストカードなども頂きました。)

プリズンエスケープ⑤


【作品情報:『プリズン・エスケープ』】

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製作年:2020年 製作国:イギリス・オーストラリア合作 監督:フランシス・アナン

南アフリカ人のティム・ジェンキンは、白人でありながら反アパルトヘイト組織「アフリカ民族会議」の隠密作戦をおこなった罪により、同胞のスティーブン・リーとともにプレトリア刑務所に投獄される。ティムとスティーブンたちは、アパルトヘイトへの抵抗の意志のために脱獄を決意する。しかし、最高警備を誇る刑務所を脱獄するためには、10にも及ぶ扉を開ける必要があり…

【ダニエル・ラドクリフ7変化、今度は髭もじゃの脱獄犯!】

本作の主演をつとめたのはダニエル・ラドクリフ。ダニエル・ラドクリフといえば、『ハリーポッター』シリーズのハリーポッター役で世界中の人々に知られる存在だ。日本でも2023年に『ハリーポッター』のテーマパークが作られる予定があるなど、その人気・知名度は非常に高い。

ハリーポッター①


そのダニエル・ラドクリフだが、ハリー役を卒業後、様々な役に挑戦している。パイロットに遭難者、坊主になったり角を生やしたりと、見た目にもユニークなキャラクターを演じ続けている。ハリーポッターのイメージから脱却するために、敢えて様々な役柄に挑戦しているのだろうが、ダニエルが挑戦する役柄は、正直いつも癖が強い。(作品選びは常に自分で行っているということなのでユニークな役柄が好きなのだろう)最近だと『スイス・アーミーマン』(2017年)の死体役が話題になったが、このキャラクターも強烈だ。(しかもこの死体はオナラで海を渡るのだから驚きだ)

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そんなダニエルが今回演じるのは、難攻不落の牢獄に閉じ込められてしまった政治犯という役どころ。ダニエルは、今回の撮影の為に、何ヶ月も髭をそらなかったということで、髭もじゃの姿になっており、その姿にハリーポッターの面影は全くない。今回、ダニエル・ラドグリフの出演作の画像を集めて観たが(上記画像参照)、こうしてみると、ダニエル・ラドクリフはとりあえず外見から入るタイプなんだということがよく分かる。もちろん、見た目だけ拘ってる訳ではない。今回の役を演じるにあたり、本人に直接話を伺ったり、南アフリカの歴史などを学んだだけでなく、ロベール・ブレッソン監督の『抵抗(レジスタンス)-死刑囚の手記より-』(1956年)や、ジャック・ベッケル監督の『穴』(1960年)といった脱獄を題材とした作品も鑑賞するなど綿密な部分まで役作りに励んでいる事が分かる。本作では、脱獄犯という新しいダニエル・ラドグリフの姿が描かれている。

【アパルト政策に立ち向かったティム・ジェンキンのノンフィクション小説が原作】

本作は、ティム・ジェンキンが2003年に上梓したノンフィクション小説『脱獄』を原作としている。ティム・ジェンキンは、アパルトヘイト政策下の南アフリカで育ち、白人という立場でありながら、アパルトヘイトに反対する「アフリカ民族会議(ANC)」の隠密作戦を行ったために投獄された。

プリズンエスケープ③

アパルトヘイト政策を知らない人は、こちらを読んで頂くとして、注目するのは、アパルトヘイト政策に反対運動を起こしていた白人が主役という点だろう。これまでのこれまでの人種差別、特に黒人差別を描いた作品では、主に白人側は加害者として描かれることが多かった。こちらの記事によると、本作を監督したフランシス・アナン監督はこう語っている。「これまで白人はしばしば侵略者として、あるいは傍観者として無力であるかのように描かれてきました。これらの描写のみでは、アパルトヘイト政権への何十年にもわたる広範な闘争がどのように展開されたかを理解するうえで、真実を読み取ることはできません」本作はこれまでの人種差別を扱った映画の中でも、観客に新しい見方を与える作品といえるだろう。

【前代未聞の脱獄劇にヒヤリとさせられる】

ダニエル演じるティム・ジェンキンが投獄されるのは、最高警備を誇るプレトリア刑務所。もちろん実在の刑務所だ。ティム、そして共に投獄されたスティーブンは、アパルトヘイト政策に対し、抵抗という意志を示すために脱走を決意する。ただ、脱獄するためには、厳しい看守の目を擦り抜ける必要と、10もあるドアを突破するための鍵が必要となってくる。驚くのが、本作のキーアイテムにもなっている「鍵」の作成方法。いわゆる「脱獄」モノの作品は数多くあるが、こういった手段を用いた脱獄作品は初めて、まさに前代未聞といえる。

プリズンエスケープ④

【最後に:感想まとめ】

本作は、あくまでも実話ベース。なので、脱獄モノにおけるエンタメ的なハラハラドキドキ感は正直少なめ。そこに期待しすぎると肩透かしを喰らうかもしれない。加えて、主人公たちの脱獄の動機もアパルトヘイト政策に対する抵抗という大義名分がある。(もちろん恋人や家族に再会するためでもあるが)なので、主人公達に感情移入するというよりは、脱獄の様子を淡々を見守っているような印象を受けた。こう書くと「何だ、つまらないのか」と思う方もいるもしれないが、作品の満足度は正直高い。テンポが良いので、最後までダレることはないし、ハラハラする部分も勿論ある。何よりラストが良い。もし観るのを迷ってる方がいるなら、是非ともスクリーンで観る事をお薦めしたい。


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ヴィクトリー下村
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