今日が青春の終わり『東京の恋人』
6月27日から公開されている『東京の恋人』。渋谷のユーロスペースで7月2日(木)に鑑賞してきたので(何時の回は失念、客入りは4割ぐらい)感想を記しておきたい。(※内容に触れているので、未鑑賞の方は気を付けてください。)
「MOOSIC LAB 2019」の長編部門で最優秀女優賞などを受賞した本作。そもそも「MOOSIC LAB」とは何か?聞いたことのない人も多いのではないだろうか。
MOOSIC LAB:2012年から始まった新進気鋭の映画監督とアーティストの掛け合わせによる映画制作企画を具現化する音楽×映画プロジェクトであり、企画段階から映画作家とミュージシャン、映画と音楽との化学反応を意識的に制作、それらをコンペ形式・対バン形式で上映する異色の映画祭である。(MOOSIC LAB公式サイト参照)
要は音楽と映画のコラボレーションという事らしい。ちなみに筆者は、『MOOSIC LAB』作品を観るのはこれが2回目。3年ほど前に名古屋のシネマスコーレで上映してた『アナタの白子に戻り鰹』という下ネタ直球のタイトルの作品を観たが、非常に面白かった。
本作は、かつて東京で映画監督を夢見ていたものの、結婚を機に夢を諦めサラリーマンとして過ごしていた主人公が、学生時代のかつての恋人と1日だけの再会を果たすという物語である。ポスターの印象から、しっとりした作品かと思っていたが、内容は明るくポップ。「東京60WATTS」の曲が随時使用されていて、中盤まではミュージックビデオのようでもある。
本作を観て思うのは、これは大人への通過儀礼を描いた物語なんだという事。劇中で印象的な場面がある。2人でバッティングセンターに行き、もし主人公がホームランを打てたら、再び映画を撮るという約束をする場面。主人公はホームランを打つが、それは本当の約束というよりは、その場のノリのように思える。主人公は今の生活を捨てて、再び夢を追いかけるにはあまりに色々なものを背負ってしまっている。青春に始まりがあるように、終わりもある。夢を追いかけていた主人公は、当時の彼女と再会することで、夢と恋にケジメをつけたのだ。
前半の「演技している」演出が、後半のフリになっているのが面白いし、「東京60WATTS」の音楽も爽やかで心地が良い。そして、川上奈々美の存在感。可愛らしく別れた男を思い続けるいじらしい女性の姿を見事に演じている。別れた彼女が自分の事をずっと思ってくれる…というのも含め、男にとっていささか都合が良すぎる内容でもあるのだが、夢を見させるのが映画だ、これもありなのだろう。
ちなみに東京では上映は終了してしまったが、他の地域はこれから。気になる方は是非とも公式サイトをチェックしてみて欲しい。
公式サイト:https://tokyo-modernlovers.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=YvOzdwZY4Hg