怪談に通じる血の繋がりを巡る物語、映画『犬鳴村』
2月7日に公開された映画『犬鳴村』。
福岡に実在する心霊スポットを舞台に、そこで次々と起きる凄惨な事件に巻き込まれていく家族の物語を描いた作品だ。
主演は、『ダンス・ウィズ・ミー』の三吉彩花。高嶋政伸、高島礼子のベテラン勢が脇を固める。先日、新宿のバルト9で鑑賞してきたので、その感想をまとめておきたい。
【監督は日本ホラーの名手、清水崇!】
監督を務めるのは、『呪怨』シリーズで、日本のみならず世界中で名を知られる清水崇。
『リング』の中田秀夫監督とともに、Jホラーブームを牽引してきた人物だ。『魔女の宅急便』(2014年)、『ブルーハーツが聴こえる』(2017年)など、ホラーにとどまらず、様々なジャンルの作品を撮ってきているが、今作は、監督自身も「どホラーにいった」と言うほど、ホラー直球で攻めた作品だ。
【ビックリ系ホラーかと思いきや…】
鑑賞前は、てっきり犬鳴村を訪れた男女が襲われるドッキリ系ホラーだと思っていた。
しかし、予想と違い、物語は犬鳴村の謎を巡る展開から、主人公の奏含む森田家の物語へと展開していく。日本特有の湿り気のあるホラーという印象を作品からは受けた。
観に行っておいて何だが、実は筆者は大きな音で驚かすドッキリ系ホラーが苦手。
なので、ビックリ系を期待して観に行った人は、肩透かしに感じるかもしれないが、このタイプのホラーはむしろ筆者としてはありがたかった。
【一筋縄じゃない展開が面白い】
上述したように、この物語は単なる体験型ホラーというよりは、謎解きを含めたホラーという話に展開していく。
少し内容に触れると、犬鳴村という場所を非日常的な空間として扱う事で、終盤の展開にツイストを効かせてるのだが、筆者としては、これがなかなか面白かった。
本作は血縁を巡る因果というテーマがあるのだが、これも洋ホラーというよりは、むしろ日本の怪談など、昔から描かれてきたテーマ。
妙な場所に立ち入ってしまうというホラーなら、それこそ『悪魔のいけにえ』(1974年)や『サランドラ』(1977年)などの直球的な展開でも描く事はできただろう。だが、敢えてこういう展開を選択したところに、筆者は、監督のこだわりを感じた。
清水監督曰く、自身も年齢を重ねた事により、不思議な偶然を強く感じるようになったとの事。それで、幸せだけでない血筋にまつわるドラマを描く事で、若い人だけでない人に楽しんで貰えるように作ったとの事だ。
まさしく、今作はホラー映画のメインターゲットである、10~20代の男女以外でも楽しめる作品と言えるだろう。
【ホラー好きあるある?ネットで見かけた怖い話が散りばめられている】
かつて某巨大掲示板のオカルト板に、一時期いた事がある筆者としては、今作は「この展開観た事あるある」の連続だった(具体的には、鉄塔の場面や、電話ボックスの場面など)
それこそ「洒落怖」というワードでピンとくる方なら、既視感を感じる事だろう。筆者は観てて、何度がニヤリとしてしまったぞ。
【総評】
筆者としては、誰かに強くお薦めするほどではないが、値段分には充分に楽しめる作品だと感じた。フランスの映画祭で審査員賞をとるなど、日本以外でも評価されている本作。
気になる方は、是非真っ暗な劇場で!