見出し画像

【世界驚嘆!!衝撃のディストピア・ストップモーション映画】『JUNK HEAD』ヲ目撃セヨ!

3月26日から公開された『JUNK HEAD』という映画を知っているだろうか。日本発のストップモーションアニメだが、独学&7年もの歳月を費やして完成させた作品で、海外の映画祭などでも高い評価を得ており、今最も注目されているといっても過言でない作品だ。筆者も公開週の土曜日にアップリンク吉祥寺で観てきたが、これが想像以上に濃く魅力的な作品だった。ここでは『JUNK HEAD』の魅力と内容を感想と共に紹介していきたい。

【『JUNK HEAD』~あらすじと概要~

画像1

製作年:2017年 製作国:日本 監督:堀貴秀

~あらすじ~今より遥か未来。人類は遺伝子操作で不老不死に近い命を手に入れたが、その代償として生殖能力を失ってしまう。その後、新型のウイルス影響により絶滅の危機に陥った人間は、地下世界に住むマリガンたちの生態を調査することにする。マリガンとはかつて地下開発のための労働力として生み出していた人口生命体だったが、人間に反旗を翻し地下世界を乗っ取り独自の進化を遂げていた。地下世界への調査員になったパートンはポッドで地下へ降りていくのだが…

『JUNK HEAD』は二極化した世界を描いたディストピアSFだ。高度な技術と文明は手にしたが、代わりに生殖機能を無くしてしまった人類が生き残りのヒントを得る為に地下世界に調査団を送り込む。生存のヒントを頼る相手は、かつて自分達が作り出した生命体。まず、この設定が皮肉めいてて面白い。異なる階層に住む人々を描いたSF映画というと、古くは『未来世紀ブラジル』(1985年)から、最近では『エリジウム』(2013年)や『スノーピアサー』(2014年)、『アリータ バトル・エンジェル』(2019年)などが挙げられるだろう。本作もそういった系譜に名を連ねる作品ではあるが、異形の者たちの世界に潜り込むという点や、どう進化しているか分からない地下世界という舞台が、より緊張感とワクワクを感じさせてくれる。

【ギレルモ・デルトロ監督も激賞!迷宮のような地下世界とキモ可愛い住人達に魅了される】

画像2

主人公のパートンを通じて、観客も地下世界を探検していく訳だが、この地下世界のビジュアルが何とも魅力的。スチームパンクを彷彿とさせる地下世界が格好良いし、そこに住む生物たちは奇妙だがどこか愛くるしさがある。(個人的にはマリガン達の目がゴーグルのようになってる所がツボだった)『パンズ・ラビリンス』(2007年)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018年)のギレルモ・デルトロ監督は、本作のことを「狂った輝きを放ち、不滅の遺志と想像力が宿っている」と評したらしいが、コメントを寄せたことも納得。本作のキャラクター達は、デルトロ監督のキャラクターに通じるようなグロテスクさと可愛らしさを持ち合わせているに感じた。(地下世界の雰囲気は個人的にゲームの『クーロンズゲート』を思い出した)
地下世界の生態系や食糧事情など、なかなか気持ち悪い描写もあるので、誰にでもお薦めできる訳ではないが、ギレルモ・デルトロ監督や初期のティム・バートン監督、ヤン・シュヴァンクマイエルン監督の作品などが好きな人は本作を気に入るんじゃないだろうか。ちなみに世界設定や登場キャラクターなど、劇場パンフレットに細かい情報が載っているが、本作のパンフレットは、もはや設定資料集といえるくらいの充実っぷりなので、本作を気に入った人には購入を強くお勧めしてたい。製作過程や撮影機材まで紹介しており、ストップモーション製作に興味ある人にとっても参考になるのではないかと思う。(また、パンフレットの売り上げは続編への製作資金に繋がるということで、そういう意味でも本作を気に入った人はパンフの購入をお薦めする)

【制作のキッカケは新海誠監督!映像制作経験ゼロで始めた映画作り】

画像3

本作の最も特筆すべき点は、これだけの物語を少人数で、約7年の歳月をかけて完成させたという点だろう。(パンフレットの情報によると、冒頭の30分はほとんど監督1人での制作で、追加制作も数日のアルバイトを入れても12人程の少人数での制作だったとのこと。平均2~3人程で作り上げた作品ということらしい)しかも、本作を手掛けた堀貴秀監督は映像制作の経験は無かったというから驚きだ
これだけの作品を何故1人で始めようと思ったのか気になっていたが、制作に至ったキッカケには新海誠監督の存在があったらしい。もともと映画が大好きだった堀監督だが、映画は1人では作れないと考えていた。そんな時、新海監督がほぼ1人で『ほしのこえ』(2002年)を作り上げたということを知って、自分もコマ撮りならできるかもしれないと思い立って作り始めたということらしい。何故「コマ撮り?」と思うかもしれないが、パンフレットによると、堀監督は、絵画や彫刻、操り人形の販売などをしていたらしく、そういった経歴も本作の制作に繋がったことが伺える。だからこそ劇中のセットやキャラクターの完成度が素晴らしいわけだ。例えば、下の画像のバルブ村のセットは半年掛かったとのことらしいが、確かに少人数でこの完成度はヤバ過ぎる…!

画像4


【怯まないことと継続するということ。本作はクリエイターを目指す人にこそ観て欲しい】

画像5

個人的に本作はクリエイターを目指す人に特に観てほしいと思う。映像制作経験のない監督が、7年という歳月を掛けて作品を完成させ公開まで漕ぎつけたという事実。それ自体が、個人で何かを作ろうと思ってる人、作っている人には勇気づけられるんじゃないだろうか。堀監督によると、『JUNK HEAD』というタイトルは「ガラクタ(JUNK)のようだった自分でも諦めずにこの映画を作ることが出来て、"ガラクタでもやれることはあるんだぞ"」という意味も込めてつけられたとのこと。(主人公のパートンが頭一つで旅するというダブルミーニングでもあるだろうけど)本作は専門スタジオなどではなく、1人のクリエイターから作られた作品だ。だからこそ誰にも邪魔されず脳内世界を完全に再現できたともいえるだろう。そして、7年間という長い歳月を掛けて作られた作品を99分で堪能するということ、これ自体が物凄く贅沢な映画体験なんじゃないだろうか。

ということで、『JUNK HEAD』気になる方は是非とも劇場で鑑賞することをお薦めしたい。なお、池袋シネマロサ、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺では映画製作に実際に使用したキャラクター達の人形を展示しているので、気になる人はそちらも要チェックして欲しい。

画像6

上の画像はアップリンク吉祥寺で撮影したもの。映画鑑賞後に見ると、よりテンションが上がる…!

読んでいただきありがとうございます。 参考になりましたら、「良いね」して頂けると励みになります。