「世界」を広げるもの
社会に出てから10年以上、
組織を設立して代表を務めながら
シナリオ執筆や企画・原作など、いろんな仕事をしてきました。
ゲーム・アニメ・マンガ・ノベルと
媒体/プロジェクトによって付き合う方、
絡み方の深さなどが違ってくるのですが、しみじみと思ったのが
「『誰かとの出会い』が『自分の世界を広げてくれる』」ということ。
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■「十人十色」――
書き手同士で集まると、よく話題になるのが
「『食べてきたもの』が違うから、
アウトプットも違ってくる」というもの。
例えば自分は少女マンガが好きで、児童文学が好きで、
子供の頃は図書館に行って「怪談話」の類を恐る恐る開いていた一方、
放課後は友だちと集まってRPGをわいわい言いながら楽しんでいました。
『クロノトリガー』
『ドラゴンクエスト』シリーズ
『ファイナルファンタジー』シリーズ
『スターオーシャン』に『テイルズ』に『ポケモン』……
挙げ出すとキリがないですが
「今でも記憶に残っているコレら」が「美味しく食べてきたもの」であり
「同じように楽しんできた人」も多いと思うのですが
一緒に遊んだ友達や家庭の状況、学校の様子などは
当然ながら違うわけで「血肉」にはなっていても
「どんなふうに刻まれているか」は「必ず違ってくる」。
その為、同じような道を辿ってきたとしても
「必ずアウトプットされるものが違う」――
「だから創作も人生も面白い」といった話になり、ぼくが
「共同制作がやめられない、魅力を感じるポイントの1つ」になっています。
■「相手の脳に入る」――
新人時代、自分の師にまず最初に教えてもらったこと。
仕事の依頼主である「相手の脳」に入りこみ
「相手の考えていること」を正確に把握し
「求められるもの」を書け。
キャラクターも、そう。
「どうやって書けばいいんだろう」ではなく
「キャラの脳に入り、視えるもの、感じるものを
『こっち』に持ってくる」――
そんな意識でやると良い、
そう言ってもらい肩の力が抜け
「描かなければならないキャラ」が
「よく知る友人」のようになり
「もっと輝くポイント(自分が「好き」だと思える部分)」を
「『こっち』に持ってきて、
多くの人に知ってもらおう(そして同じように、愛してもらおう)」。
この意識は
「誰かを理解し、話す」
「お金をもらう仕事をする」という
「社会に出る」上ですごく大切なことだったと
後ほど、自分は知ることになりました。
そして、これはまた
「自分の世界を広げてくれるものだったんだ」
と気づかされ、冒頭の話に戻る。
■「視野」と「価値観」の発見――
「相手の脳に入って考える」――
これによって「相手の心情の理解」に繋がり
自然と「気遣い」なども出来るようになるのですが
一番「良かった」と思ったのは
「自分では知ることのなかった
『視野』と『価値観』が手に入ること」。
先述したとおり、すごく近い道を通ってきても
「必ず誰かと自分は『違う存在』になっている」。
好きな作品で意気投合し
「この人、相性いいなぁ」なんて思った後
「あ、そんなこと知ってるの?」
「ああ、そういう捉え方もあるのか!」と
「自分とは違う『視野』――物事の見つめ方や価値観」に気づく、
なんてことがたくさんあり、これらによって自分は
「どんどん内にある器が広がった」と
「積み上げてきて良かったこと」として胸に刻まれています。
こんなことを書いているのもまた、そんな
「新しい出会いと発見」に興奮し
「誰かの為」「なにかを考えるキッカケや刺激にでもなれば良い」――
普段の作品づくりでこめている想いが湧いたから。
■「『生きづらい』と思ったら」――
今の世の中、いろんなものが「可視化」されたことで
迂闊に自分の意見が言えない、好きなものが好きと言えない、
息苦しさも含めて「自分」を理解してもらいたいのに……
こんなことを思っている方も、少なくないと思います。
そんなときに必要なこと、
解決法の1つになるかもしれないのが
まさに「相手の脳に入る」であり
「自分の世界(器)を広げる」という意識ではないか、
と個人的に思っています。
辛く苦しいことが多い、
毎日疲れ果て「自分」を保つのだけでいっぱいっぱい――
そういうときこそ、まず
「自分以外の誰かを理解しよう(脳に入ってみるか)」と
1歩を踏み出し「その人が喜びそうなこと」を1つしてみる。
これはたとえば、マクドナルドにおけるスマイル――
「されて自然と心が動きそうなもの」でも良い。
「気軽に、少し頑張れば出来そうなこと」をまず相手に向かって、
手を伸ばすことで「違う世界」が手に入り、
灰色に染まりがちな視界は少しだけ明るくなるかもしれないし、
そうしたことがキッカケで「一生の友達になる」なんてことも
決して起こらない、とは言えないだろう。
「今」を変えるには、まず「自分」から――
誰かに手を伸ばしてもらえることもあるけど、
自分から伸ばすことで、ほんの少し頑張ることで
「世界」はどんどん広がり
「楽しいこと」「刺激になること」は増え、
毎日が少しずつ、1%ずつでも面白味が増していく。
難しいことかもしれないけど、
大変なことかもしれないけど
「自分がしてきたことで、良かったこと」シリーズ。
これからもふとしたときに、記していければと思います。
作品で伝えるのが、本分ではありますが
「言葉」で「文章」で「活力」や「気づき」を与える――
これもまた、自分の仕事であり
「誰かにしてあげられること」に違いないから。
株式会社クオリア ライターズCOO 下村 健