金融勉強塾: インプライド・ボラティリティの算出方法①
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内容
前回はVIX (volatility index) 及び Implied Volatility (IV)から見る「現相場のリスク状況」について触れました。(こちら未読の方は、先に前回のVIX記事を参照いただけると大変ありがたく存じます。)
もっとも、過去の相場変動から算出されるRealized Volatility とは異なり、Implied Volatility は「今後相場がどれくらい変動するのか」の予想がプライスに反映されるため、何か具体的な算出根拠があるわけではありません。
では、Implied Volatilityとはどういう風に算出され、取引されているのか、という話です(スタートアップ業界における金融知識とは若干外れます。)
長くなるので、これも数回に分けて解説していこうと思います。
オプションとは
そもそもIVの話をする前に、オプションについての説明が必要となります。
オプションとは前回も触れましたが、「何かを買う・売る権利」の取引になります。主にはコール・オプション、プット・オプションの二つに分かれます。
Call Option
青線: 商品(X)を(単純に)購入した場合の損益グラフ
緑線: コール・オプションを購入した場合の損益グラフ
青線は分かりやすいと思いますが、100円で購入したXの値段がその後上昇すれば利益が出ますし、100円で購入したXの値段が下落した場合は損をします。
対して緑線は、Xを「100円で買う権利」(= 行使価格が100円のコール・オプション)を買った場合のグラフになります。
オプションは、権利というよりは「保険」の売買に近いと思います。青線と緑線の差分は「保険料(=option premium、プレミアム)」になります。
緑線の人は、プレミアムを払う代わりに、権利を購入します。
例えば、
行使価格: 100円
プレミアム: 5円
が緑線のコールオプションだとしましょう。
この場合、その後Xが200円になった場合、緑線のオプションを購入した人は権利を行使することで、Xを100円で買うことが出来ます。
この場合の損益は、
200円 (今の値段)- 100円(オプションを用いて買う値段) - 5円(プレミアム=保険料) = 95円
になります。
このように、コール・オプションを買った人は物の値段が上昇した場合、利益を得ることが出来ます。但し、単純に商品を買うよりは利益は出ないですし、保険料が高ければ高いほど利益が出るために必要な値段の上昇幅は高くなります。
(上記例でいうと、例えばプレミアムが100円だった場合、商品の値段が200円になったとしても、購入のために100円払い、プレミアムで100円払っているので、利益は0になります。)
一方で、「保険」の通り、モノの値段が下落した場合でも、最大の損失はプレミアム分に限定されます。買う「権利」を持っているということは「買いません」という判断を最終的に下すこともできるので、例えばXの値段が80円にその後下がっていた場合には、単純に買う権利を放棄すればよいことになります。よって、オプションを購入した場合の最大損失はプレミアム(保険料分)に限定されます。
ちなみに、スタートアップにおいて付与されるStock Optionは、この「コール・オプション」の付与になります。
付与時点での会社の企業価値が行使価格となるので、例えば企業が成長して一株当たりの価値が大幅に上昇した場合、安く株を買って高く売れるので、大きな利益が見込めることになります。
Put Option
青線: 商品(X)を(単純に)売却した場合の損益グラフ
緑線: プット・オプションを購入した場合の損益グラフ
プット・オプションは若干分かりづらいですが、コンセプトは一緒です。コール・オプションは「買う権利」なので物の値段が高くなる場合に利益が出ますが、プット・オプションは「売る権利」なので物の値段が安くなると利益が出ます。
但し、単純に売却した場合と比較すると、プレミアム(保険料)分利益は少なくなります。一方で、Xの値段が高くなった場合の損もプレミアム分に限定されます。(100円で売る権利を持っていて、結果200円に商品の値段が上昇したとしても、権利行使をしなければ損はしない。その後、市場で直接200円で売れば高い値段で売ることもできる。)
纏め
コール・オプション
- 物を行使価格で買う権利
- 値段が上昇したら得をする
- 値段が下落しても、損失幅はプレミアムのみに限定される
→基本的に値段は上昇しそうだと思っているが、一応下落するリスクも見ている時に買う。
プット・オプション
- 物を行使価格で売る権利
- 値段が下落したら得をする
- 値段が上昇しても、損失幅はプレミアムのみに限定される
→基本的に値段は下落しそうだと思っているが、一応下落するリスクも見ている時に買う。
長くなりそうなので、今回はオプションの説明までで止めたいと思います。
次回はこれらのオプションがどういう風に活用されるのか、その中でインプライド・ボラティリティという概念がどこに出てくるのか、について触れていければと思います。