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一言解説: 債務上限問題とは??市場は今どう見てる??

債務上限問題の概要

債務上限問題が話題になっていることを知らない方に

今、金融市場では米国の「債務上限問題」が、注目を集めています。バイデン大統領と、下院議長のマッカーシー議員が日々交渉を行っていますが、イエレン財務長官(元FRB議長)含めて、関係者が日々楽観的・悲観的な見通しやコメントを出すほど、米国全体の注目を集める事象となっています。

債務上限問題って何。。。?

そもそもの原因は、「米国政府が発行できる国債の総額は法律で決められる」ことにあります。これが日本やその他で「債務上限」が問題にならず、米国では頻繁に問題になる理由です。

債務上限が引き上げられないと何が問題になるの。。。?

債務上限に近づくと、借金のための国債を発行できなくなります。
一番懸念されるのは、「デフォルト」(債務不履行)認定です。国債を発行して借入が出来なくなるために、必要な国債の元利金払いや支出対応が出来なくなる可能性が高いです。元利金の支払いがなされない場合には、いくら米国といえどもデフォルト(債務不履行)が認定される事態となります。

実際に2011年に債務上限の引き上げが難航した際には、ぎりぎりで妥結に至ったためにデフォルト認定は避けられたのですが、交渉妥結期限と目されていた日付を過ぎてしまったために、S&Pが米国債の格下げを実行し、市場が一時期混乱する事態となりました。

また、2013年には、暫定予算の成立が遅れたことにより、政府機関が一部ロックダウンし、国民の日常行動にも影響が出ました。2018年12月にも、同様に暫定予算の期限切れで一部政府機関がロックダウンしています。

デフォルト回避のために、何が必要なの。。。?

基本的には、議会承認を得て債務上限を引き上げることが解決策になります。ただ、無限に上限を引きあげるわけにもいかないので、引き上げ主張する立場(大統領)と相手方での交渉が実施されます。バイデン大統領は民主党なので、今回は共和党が多数を取っている下院の承認が得られるか、がカギであり、マッカーシー下院議長(共和党)との交渉が難航しています。

何故今注目が集まっているの。。。?

イエレン財務長官が「6月に入ると、デフォルトの危険性がかなり高くなる」と発言したことで、「5月末までの合意」が期限として強く認識されていることが大きな理由です。(もっとも、6月1日が何故デッドラインなのか?という点に関する疑問は、与野党議員から出ていたりもしますが。。。)

現状の市場の見方

現状整理

現状整理としては、確かに米連邦政府の現金残高は明確に減っており、0に近づいてきている状態です。仮に手元現金が0になった場合には、当然米国債の元利金払いが出来なくなるため、デフォルト認定される危険性が極めて高くなります。

米連邦政府の現金残高は、明確に減少しており、0に近づいている
出所:US Treasury, Bloomberg

市場の見方

T-Billという短期の米国債市場の利回りは、大幅に上昇しています。特に注目するべきは、6月以降のT bill 市場の利回りが大幅に高くなっているという事象です。こちらを見ると、「5月末までは安全」「6月に入ると、返済がないかもしれない」と投資家が見ていることが確認できます。

デフォルト認定されると、額面上の投資金額(100)が全額返ってこない可能性が高くなるため、返ってこないと思われる金額(例えば3円とか)を利回りベースに換算した上で、その損失分が補える水準での取引(100ではなく97とか)が実施されます。結果、デフォルト認定されるかもしれない6月以降のT-Billの利回りは、損失分を埋められる水準での取引がされて高くなります。

6月以降のT-billの取引利回りは、5月前に満期を迎えるものに比べて3%程度高い
出所:  Bloomberg

一方で、「リスク回避資産」と言われる金の価格推移は、落ち着いているというのも注目です。金市場の取引推移を見ていると、少なくとも5月頭に懸念されていたほどには、交渉状況を悲観視する向きは少なく、「どこかで交渉は妥結するだろう」と思っているように見えます。

金の取引価格は、5月上旬の最高値と比較すると、落ち着いている
Source:  Bloomberg

上記を総合すると、今の市場の見方は「5月末までに合意できなかったら危険」「ただ、本線は5月末には合意すると思っている」「6月に入ったとしても6月1日がデフォルトかというと、恐らくそうではなさそう」「最終的には5月末を過ぎるにしろ、何かしらの交渉はデフォルト認定前に纏まりそう」というのが、市場全体の目線だと考えています。

「自分も同じ意見」という最後ずるいコメントを残して、纏めを終わります。笑

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