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金融勉強塾: インプライド・ボラティリティの算出方法②

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内容と振り返り

過去の記事にて、オプションから算出されるimplied voliatilityからリスク状況が分かるという話と、そもそもoption ってなんだろう、という話をしてきました。ここからは、「何故リスクが高くなると、implied volatilityが高くなるのか」という話に移ります。

リスク・オフ環境になると、プット買いが進む

前回の通り、
- コール・オプション:  株価が上昇すると得をする+株価が下がってもオプション・プレミアム(保証料金)だけに損失は限定される
- プット・オプション:  株価が下落すると得をする+株価が上がってもオプション・プレミアム(保証料金)だけに損失は限定される
ことになります。

上記の通り、プット・オプションは株価が下がると儲かるため、リスク・オフ環境になると、「今資産を売りたくはない」「今売ろうとすると、買い手があまりにいなくて足元を見られる」みたいな環境の時に、プット・オプションを買うという投資家が増えます。
これがリスク・オフ環境になると、プット・オプションの買いが進む理由です。

オプションの買いが進むと、Implied Volatilityは計算上、上昇する

当たり前の話ですが、需給の観点で、買いたい人が多くいれば値段は高くなりますし、売りたい人が多くいれば値段は安くなります。
上記事例において、プット・オプションを買いたいという人が増えた場合、オプション・プレミアム(保証料)は当然上昇します。

ここで、大学の経済学部などで頻出の「ブラック・ショールズ・モデル(BSモデル)」というのが出てきます。細かい計算式は割愛しますが、BSモデルにおいて、オプションの価格に影響を与えるのは、下記の要素だとされています。

  • 今の資産の価格

    • 例)100円だとする

  • オプションの行使価格

    • 例)プットにおいて行使価格80円のプットを買うよりも、90円のプットを買うほうが得する確率が高い(後者であれば、90円以下になった段階で、プットを行使して90円という高値で商品を売れる)

  • 満期(いつまでに有効なオプションか)

    • 例)今後半年間有効なプットと、2年間有効なプットの場合、実際の資産価格が90円を下回る確率は、2年間有効期間がある方が単純に高い

  • 金利(及び割引率)

    • 例)例えばコールを買う場合、オプションを買う場合は価格が上昇するメリットを享受するために、保証料金額だけ払えばいい。実際に買おうとすると資産価格全部払わないといけないので、必要な元手はオプションだと少なくなる=お金を調達しなくていいので金利分得する

  • ボラティリティ

    • 例)全く資産価格が動かない場合: 100円が90円を下回る可能性は低い=オプションが有効となる可能性が低い=保証料も安くていい。逆に資産価格が激しく動く場合は、90円を容易に下回る可能性も考えられるため、保証料は高くなる

さて、「需給の問題で、買いたい人が多くなったとき、オプション・プレミアムは上昇する」と言いました。
では、需給でプレミアムが上昇するとき、具体的に上記5つのうち、何が影響を与えてプレミアムは上昇するのでしょうか。
考えてみましょう。

答えは「ボラティリティ」になります。
需給の問題なので、「現在価格は動いていない」「行使価格も動いていない」「満期も変わらない」「金利も変わらない」状態です。
消去法で「ボラティリティが動いたと考えるしかない」ことになります。

では、実際にボラティリティが動いたのか、というと、オプションの需給バランスが変化しても、物の値段が激しく動くわけではないですね。
ただ、「オプションを欲しい人が増えた=将来的な価格変動が大きくなると予想する人が増えた=Implied Volatility(投資家が考える、この先のボラティリティ)が上昇した」と考えることは出来そうです。これがオプションが買われるとImplied Volatilityが上昇する理由であり、Historical Volatility (過去の価格変動から算出されるボラティリティ)とImplied Volatility(将来の価格変動がどれくらいか、を想定して算出されるボラティリティ)を分けて考えることの重要性につながります。

結論:  IVはオプションの値段から逆算されるものでもある

何がいいたいかというと、Implied Volatility (IV)は、需給などに基づくオプションの値段から逆算されるものでもあるということです。
プット・オプションを買う人がいるということは、売る人もいます。そして、金融市場は基本ゼロ・サムゲームなので、プット・オプションを売る人は行使価格から先の下落リスクについては損を負担しないといけません。

オプションを取引するときに、「IVがこれぐらいかな」と思ってオプションを取引することも多いですが、ことリスク・オフ環境下においてプット・オプションを買いたい!という人が増えてくると、売り手は逆に下落リスクを負担しないといけなくなります。でも売り手も当然リスク・オフ環境下において、下落リスクを好き好んで引き受けたいわけではないです。

極端なリスク・オフ・シナリオになればなるほど、「正直IVをどれくらい見込めばいいか、この荒れた環境では全く分からない。でも、この取引をするなら、保証料は30%貰わないと、感覚的に割に合わない。」みたいな取引が行われます。
結果、「保証料30%から逆算されるImplied Volatility」が算出されます。

勿論、こういう環境下においては極端に保守的な価格設定に基づいて取引がされたりするので、数年に一度のリスク・オフ環境下においては、「世の中のオプション取引における、オプションプレミアムが高騰する」=「逆算されるIVが高騰する」結果、VIX(IVから計算されるVolatility Index)も急上昇することになります。

ちなみに。。。

VIXによってリスク・オフ環境下どうか、というのが分かりやすいという話からスタートしましたが、オプションの世界では、他の指標も参考になります。

リスク・オフ環境下においては、上値を追えるコール・オプションよりも、下値をヘッジできるプット・オプションの需要の方が高くなるため、結果的にコールとプットが織り込むIVの値は大幅にずれることになります。
この「プット・オプションとコール・オプションが織り込むIVの差」を金融市場ではVolatility Skew (ボラティリティ・スキュー)と呼び、このVolatility Skew もリスク・オフかどうかの判断の参考になります。
(スキューが開けば開くほど、プットの需要が高い=下値をヘッジしている人が増える=リスク・オフだと認識されている)

オプションの世界も奥が深いので、あげていくとキリがないのですが、是非興味を持っていただいた方は色々ご質問いただいたり、調べていただいたりすると幸いです。

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