見出し画像

響け! ユーフォニアム3

 私は1期からこのアニメを視聴していて、原作はほとんど読んだ事ないです。アニメ関連の記事を書くのはこれが初めてとなります。けいおん!や氷菓、日常、中二病でも恋がしたい!やたまこまーけっと(涼宮ハルヒは後追いですが)など多くの京アニ作品を見てきましたが、今作のストーリー展開には複雑な感情を持ったので記事を書いた次第です。※できる限り中立に書きたいと思います。

 今回の改変を受け入れる前提は、実力主義である北宇治・吹奏楽部全体の切磋琢磨と成長を見るか、久美子・麗奈を中心軸で見るかの違いなんだと思います。前者であれば、黒江真由が救われたと感じるでしょうし、後者だと9年描いてきた最後がこの結末では複雑、納得がいかないという方もいるのでしょう。原作通りにやってほしかったという意見も理解できます。

 賛否が分かれたのは、12話で、足掛け9年やってきて主人公・黄前久美子が 3期で登場した黒江真由にソリで敗北したという点でしたね。
原作とは違う展開。所謂改変ですが、原作の武田綾乃さんも言っていた通り、アニメと原作は別物である。というのは私も理解していますし、そういう作品は他にいくらでもある。なので原作者を中傷するなんて以ての外。

 12話では顧問の滝先生が黄前久美子、黒江真由の名前を両方あげ、ソリを部員に決めてもらうという形になりましたが、初期に高坂麗奈が「滝先生はすごい人だから。馬鹿にしたら許さないから」という台詞でもあった通り、音楽の知識や目利きをそれ相応に持っている人物である。そうでなければ初めから吹奏楽部顧問として成立しませんからね。麗奈が最後に音だけで黒江真由を選ぶのであれば、滝先生がまずそれを理解していなければおかしいわけです。それが、いわば部員に丸投げするような形というのは少しキャラ崩壊してしまっている印象を受けました。


 1・2期で描かれている通り、久美子は小学生の頃からの演奏経験者であり、その久美子が実力があると言われているとはいえ真由に負けたというのも、黒江真由がどういう人物でどう歩んできたのかという掘り下げが今まで欠けていた為、起きたのでしょう。3期からいきなり出てきたキャラクターで部員とどこか距離があり、最後にソリを吹けない黄前久美子はなんだったのかという違和感。スポーツなら客観的評価基準(足の速さや良いパスが出せるなど)があると思いますが、音楽は基本的に個人的主観によって判断されるものであり、例えば部員Aが久美子の方が上手いと思う事もあれば、部員Bは真由の方が上手いと思うこともあるでしょう。
 アニメなら、久美子の演奏に迷いがあっても3年の最後に麗奈と演奏したいというプラスの面を描いた方がポジティブな印象を与え、結果として久美子が選ばれたという展開ならここまで賛否は別れなかったと思います。

 ただ、吹奏楽に真剣に向き合い、ストイックに実力主義を貫いたが、それが麗奈にとって久美子ではなかったという涙のシーンは本当に見事だったといえます。同時に金賞を取るためにだけに演奏を追求してきたという虚しさも描いていたともいえます。それを描く為の改変とも言えますが、そのifを見たいか見たくないかは本当に人それぞれ好みの問題になってくる。

 大衆というのはベタな感動を求めるもので、葛藤や苦難を乗り越え、最後はどうあれハッピーエンドを見たい。現実は不条理で叶わない事が幾つもある中で、努力は必ずしも自分が思っている理想の形で実るわけではない。だけど、努力は決して無駄ではないんだ”的な内容に変わってしまうと、アニメでそれやる必要があるだろうか? それを視聴者は求めているのだろうか? という事になる。それ以前に努力~理想に向けて進むが思っていた形でなかったというのは、晴香部長、優子部長の頃にそれに近い事を視聴者として見ているわけですからね。個人に差はあれ、努力は必ずしも~は、私達が今まで生きてきた中で誰しも一度や二度は経験する事であり、そのリアリティはアニメで描くまでもなく、知っているわけです。
 アニメにまで過剰なリアリティを持ち込むのは見たくない。アニメなんだから、一定のリアリティは重視しつつ、王道で大団円に持っていってほしかったという事なのだと思います。アニメ=大衆娯楽であるという視点になれば私もその思いは強くなるのは事実です。
 最後に麗奈と久美子の演奏でエンドを迎えるという形も、賛否は出るでしょうが、納得する割合はこちらの方が多かったのかもしれませんね。9年間描いてきた集大成の上に成り立つカタルシスそれを見たかったなと。黒江真由に関してはまた別の形で救いのシーンも作るのを前提となりますが。演奏シーンは回想が多く、時間の都合もあって、あっさりと終わってしまった感じがあり、正直、消化不良でした(結果的に12話で真由選んだのが13話で活かされていない形に)

 原作者と脚本家、京アニそれぞれの相互理解と信頼の上に今回の改変が成り立っているので、そこは安心した次第ですが、今後、この作品を見返す事があるかというとその可能性は低いというのが正直なところです。
ただ、京アニの方々には大変なことが沢山あった中で、ここまでこの作品を描いたことに関しては心から拍手と敬意を表したいです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?