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【募集中】洋館のシェアメイトになりませんか?

下鴨ロンドを主宰する本間です。

2023年4月に会員制シェアスペースとしてスタートした下鴨ロンドも、まもなく3年目の春を迎えます。
現在は属性も世代もさまざまな21名のシェアメイト(会員)がいますが、年度の変わり目を迎え、新たにシェアメイトを追加募集いたします。

これまでお会いしたり、ロンドをご案内した人からも「シェアメイトってなに?どんなことができるの?どんな人たちがいるの?どうやったらなれるの?」という質問を多く受けてきましたので、今回はシェアメイトに関する話をさせていただきます。
長文になってしまいましたが、どうぞお付き合いください。

©︎uenotomohiro

洋館との出会い

まずはじめに、私がこの洋館に出会い、下鴨ロンドを始めた経緯を紹介させてください。

私がこの家に出会ったのは2016年6月のこと。
たまたま下鴨を散歩していたときに「お、こんなところに洋館がある。空き家っぽいな…」というのが第一印象でした。
以来、近くに行った時はわざわざ立ち寄って、「よかった、まだ残ってる…」と現存確認をするなど気になる存在でしたが、そのままでした。
それから5年も経った2021年の秋、意を決してオーナーさんにコンタクトを取り、「建築を勉強しているので中を見させていただけませんか?」と許可をいただき、はじめて見学させていただきました。

2021年10月当時の部屋の様子
2021年10月当時のキッチンダイニングの様子
2021年当時の2階書斎、多くの家財が残っていました
©︎uenotomohiro

コンタクト当初、オーナーさんは「人に貸せる状態ではなく維持管理もできないので解体して駐車場にする予定」という話でしたが、「建築をやっていて自分たちでなんとかするので貸していただけませんか」と、1年かけてオーナーさんのお宅に通い、家族や家の歴史をお聞きしながら条件などを調整してきました。

オーナーさんは90歳代の方で、個人で空き家を維持管理をするには限界があります。
一方で私のような古い建物が好きな建築オタクは京都で生活していくなかで「素敵だな」とか「この通りを歩くと、あの建物に会える」と勝手に愛着を感じていても、ある日前を通ってみると更地になっていた、という経験を何度となくしてきました。

近所にあった煉瓦塀のお宅
あっという間に解体され更地に

建物も土地も当然のことながら誰かの所有物であり、通りすがりの赤の他人が「素敵だから残してほしい」と無責任に言ったところで、所有者さんは様々な事情で、残したいと思っていても手放さざるをえないこともあります。
その判断に赤の他人がとやかく言う筋合いはありませんし、いくら古い建物が好きでも全ての古い建物を残すことは到底できませんが、ご縁のあった身近な建物だけでも未来に残していける仕組みを模索できたら、と私個人は思っています。

文化財にするのも建物を残す手段の一つですが、文化財にすれば未来永劫安泰というわけでもなく、(たとえ価値があったとしても)文化財に指定しなくとも健全に使いながら継承していける方法はないだろうかー。

所有者さん個人では背負いきれない建物を、古い建物が好きで残ってほしいと願う熱意ある他者の個人が(自己責任で)背負い込むのでもなく、その思いに共感して集まった様々な人たちと少しずつ負担も享受も分け合っていけたら、、、、という考えから、下鴨ロンドは会員制のシェアスペースという運営形態を取ることになりました。

それぞれが、それぞれの過ごし方をしながら共存している空間
©︎Yuma Hashimoto
ロンドには流れ着いた新建築と芸術新潮の40年分のバックナンバーが配架されています
©︎Yuma Hashimoto

洋館をどんな場所にしたいか

私自身、建築史の研究を生業にしていますが、これまで特定の大学や組織に長く属することもなく在野で活動してきました。
また、多くの若手研究者が長らく任期付の立場だったり所属が不安定であることを鑑み、所属や立場にとらわれない在野の研究者のためのオルタナティブ・スペースがあると良いなと、かねてより思いを巡らしていました。

京都には、近年アーティストやクリエイターのためのサードプレイス、オルタナティブ・スペースは少しずつ増えてきましたが、大学や研究機関も多いにも関わらず、研究者たちが分野や所属を問わずに出入りして集える居場所は案外少ないと感じていました。
下鴨ロンドの説明を「在野の研究者のためのオルタナティブ・スペース」としているのはそのためです。

「研究者」と言っても専業の研究者に限った話ではなく、兼業や趣味で何かの分野を探求したり深めたい、分野を横断して出会い対話をしたい、あるいは自分は研究者でなくてもさまざまな領域の研究者と出会い対話をしてみたい、という人も大歓迎です。
もちろん、研究者には興味がなくても構いません。
ひとつの枠組みに当てはめずに、必要な人にとって必要な居場所になれば良いなと思っています。

幸いなことに下鴨ロンドの立地も、閑静な住宅街に位置するため(そのためネット上では住所非公開とさせていただいています)、いつでも不特定多数が出入りして賑わうお店やイベントスペース、大きな作業音が出る工房やアトリエというよりも、もう少し落ち着いて静かに思い思いに過ごすことができる居場所に向いている環境です。
実際、ロンドで過ごしているととても静かで、庭の樹木を止まり木にした下鴨神社の糺の森に棲息する鳥たちのさえずりが聞こえてくるほどです。

下鴨ロンドでは、戦前に作られた和洋折衷の室内空間を大切にしながら、一人でも心地よく過ごすことのできる居場所が沢山ある空間づくりを大切にしています。

©︎Yuma Hashimoto
2階書斎
2階ゲストルームの窓辺からは紅葉が見えます
唯一の和室である1階座敷

どんな人がシェアメイトになっているの?

では次に、「どんな人がシェアメイトになっているの?」という話をしていきたいと思います。

現在は21名のシェアメイトがいますが、基本的には1年単位での更新にさせていただいています。今年の春に数名が様々な理由で離脱されますので、入れ替わりで募集をしたいと思っています。
どんな方がいるかと言いますと、世代としては30代から60代まで男女もバランスよく参加いただいています。
毎月会費が発生しますので、経済的にも無理なく参加いただける方にシェアメイトになっていただいており20代のシェアメイトは今のところいません。
が、経済的にシェアメイトは難しいけど建物の修繕の手伝いをしたいという方は、学生も含めてボランティアとして関わっていただいています。
会費は月に2万円です。その金額を高いと思うか安いと思うか妥当と思うかは個人の価値観に委ねます(京都のコワーキングスペースの会費の一般的な相場よりは安いと思います)が、いずれにしてもロンドの活動の理念に賛同してくださる方々がシェアメイトになってくださっています。


半分くらいが京都や大阪など関西圏で日中利用がメインで、もう半分くらいは遠方からの京都の宿泊滞在拠点として利用しています。
現在は遠方からは、愛知、東京、島根、高知などの方々が参加してくれています。半年間(半期)で12泊までは会費内で泊まっていただけて、その泊数を超える場合も破格の値段で泊まっていただけます。
昨年は1ヶ月間滞在していたシェアメイトの方もいます。

ロンドにはシェアメイトの自己紹介を兼ねた選書棚があります
さまざまな分野の本が並び来訪者が自由に読むことができるコモンズのような本棚

下鴨ロンドは一見コワーキングスペースのように思われますが、占有空間はありません。個室は複数ありますが、1人(組)がずっと占有するのではなく、ほぼすべての部屋が共用空間となっています。
※1部屋だけ占有で住み込みの大学院生が管理人を担ってくれていています。

なので、バッティングする場合はシェアメイト同士お互いにコミュニケーションを取って、それぞれの意向を尊重しあって場を使い分けていただいています。
泊まれる部屋は3部屋あり最大8人まで泊まっていただけるので、トリプルブッキングまで対応可能です。
リジットに時間や空間を分節して占有するのではなく、少々煩わしくても他者を思いやりながら緩やかに場を共有することを大切にしています。

シェアメイトはサービスを享受するお客さんという立場ではなく、共に下鴨ロンドの運営を担っていただく、いわば共同運営者でもあります。
それぞれが使いながら使い勝手や気づいた点や困った点をフィードバックし、その意見をもとに優先順位を決めながら場を整えています。
運営もシェアメイトの意見を尊重しながら、シェアメイトで役割を分担して運営しています。使い方のルールづくりや運営方針なども最初からかっちり決まっているわけではなく、シェアメイト同士で少しずつ話し合いながら決めていっています。特定の企業や組織が運営するのではなく、自分たちの居場所は自分たちで作っていく自治を大切にしています。

シェアメイトになる動機

シェアメイトの方の参加の動機やモチベーションも様々ですが、大きく分けると3つに分類できると感じています。

①純粋に場所を使いたい
→フリーランスでデスクワークなど仕事場として使いたいという人。自宅兼仕事場でお客さんを家に呼びづらいので打ち合わせ場所として使いたいという人。自宅が狭いので手元作業や絵画などの広い制作場所として使いたいという人(ロンドには広い庭もあります)。非常勤講師で京都の大学に教えに来る時の滞在拠点にしたいという人。建築を仕事にしていて京都の現場に毎月通うが宿代が高いので滞在拠点にしたいという人。広いキッチンでケータリングの仕込みをしたい、キムチづくりや味噌づくりなど食にまつわるWSをしたい、料理教室をしたいという人。読書会や勉強会や上映会を企画したい人、ゼミやサークルや大人の部活動を運営したい人、フリーマーケットや茶会やワイン会や小さな演奏会などのイベントを企画したいという人。
※下鴨ロンドでのイベントや企画は基本的にシェアメイトのみに権限があり、それ以外の方の場合は持ち込み企画として場所代をいただいています。

読書会の様子
写真史ゼミの様子
©︎uenotomohiro
広いキッチンを使ったケータリングの様子
©︎Yuma Hashimoto
小さな子ども連れの宿泊も多く、安心して滞在いただける環境を整えています

②古い建物の再生プロセスに参加したい
→個人で古い建物を継承したり維持管理をする自信はないけど誰かと一緒にならやってみたいという人。どのように建物を再生していくか、その作業や計画に関わりたいという人。

下鴨ロンドでは毎月第二日曜の午前に全体掃除の会をしており、シェアメイトやボランティアが毎回10〜20人ほど集まり、掃除や庭仕事をしています。作業後には時間の許す方々で昼食を囲みながら(初対面の人も多いので)改めて自己紹介をする時間を大切にしています。その運営もシェアメイト中心に担っています。
日常から切り離されて黙々と掃除をしたり庭仕事をしたり作業をすると達成感を得たり、リフレッシュになり、他者と適度に接することができます。
長い時間をかけて大切にされてきた古い建物とゆっくり向き合うことが、”洋館をケアすることで、自分自身がケアされる”時間になると感想をいただくことがあります。

修繕や改修については、建築を職能とする「営繕チーム」を中心に、優先順位を決めながら作業を進めていますが、設備や構造に関わらない作業の多くを建築を専門としない人たちも参加できるような形で進めています。
素人だけで何でもありのDIYをするのではなく、京都で他に解体された建物からレスキューしてきた古材を活用しながら、長く愛着を持って使い続けられるような工法とインテリアを大切にしています。

毎月恒例の掃除の様子
庭仕事
©︎Nika Nishimura
全体掃除には老若男女が参加しています
©︎yurica takemura
レスキューしてきた古材を転用して自分たちで床張り
©︎Yuma Hashimoto

③さまざまな属性の人が集うコミュニティに参加したい
シェアメイトは属性も職能も本当にさまざまで、半分くらいが研究系で建築史、写真史、服飾史、舞台芸術学、消滅危機方言の言語学、シェア居住の社会学、障害者家族の当事者研究、文化人類学、映像人類学、公衆衛生学、臨床心理学、日本文学など。
もう半分くらいが非研究系で、企業勤めの方、精神保健福祉士、公認心理士、精神科医、ライター、高校教師、行政職員、新聞記者、士業、イラストレーター、美術家やアーティストなどの方がいます。

たまたまですが、現在は広い意味でのケア領域の職能の方が多く、心理学系の読書会や上映会、休職中の孤立を防ぐ「休む人のためのカフェ」(任意団体「あわひ」共催)なども定期的に開催されています。
分野外の私もケア領域の方々と接することでとても勉強になっています。

下鴨ロンドのロンド(rondo)は世界人工言語エスペラントで「集まり」の意味です。つまり、単なる「下鴨の集まり」という意味で、特定の政治思想や信教など主義や主張の集まりでもなければ、大学や企業など特定の組織に属しているわけでもないインディペンデントな場であることを大切にしています。
「コミュニティ」と書くと閉じた印象を受けてしまうかもしれませんが、もともと友人知人や大学の同級生というわけでもない集まりなので、大人としてちゃんと節度のある関係性と距離感を心がけています。実際シェアメイトの多くがSNSでの告知でコンタクトをくださった方で、私自身も「はじめまして」の初対面からスタートしています。
その後も、この手の集まりにありがちな、"内輪ノリ”になることだけは気をつけて、「古い建物をなるべく長く使い続けていく、そのためにはどうしたら良いか」という緩やかな理念だけを共有した、今風の言葉だとコレクティブ、洋館のケアをめぐる開かれたコモンズであることを大切にしています。

大学時代も社会人でも付き合う属性は徐々に限定されていきますし、地縁や血縁などドメスティックな人間関係に収斂していくと思いますが、下鴨ロンドに出入りする人たちは本当に様々な属性や世代の人たちなので、自分がこれまで接する機会のなかった人たちともロンドを通じて出会うことになり、しかも社会的な属性や立場から切り離されてフラットに話ができる雰囲気があり、視野も交友関係も広がります。
下鴨ロンドの1階にある特注の長いテーブルが、社会的な属性や立場をリセットして、誰もがフラットに対話できるプラットフォームのように機能しているように思います。

フリーアドレスで共有するテーブル
©︎Yuma Hashimoto

そのように地縁や血縁、仕事などの社会的属性による関係性にとらわれない人間関係を形成する場に参加したいという動機から、下鴨ロンドのシェアメイトになってくださっている方もいます。
例えばシェアメイトのなかには初めての関西移住で、関西に友人知人がほとんどいなくて、職場と家だけが生活圏になっていたのが、ロンドに関わることで交友関係が広がったという方もいます。

シェアメイト(会員)になるには

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
ここまでの長文に付き合ってくださった方はシェアメイトへの関心が高い方だと思いますので、ぜひ以下のアドレスよりコンタクトしてください。

shimogamo.rondo✳︎gmail.com(✳︎を@に変更してください)
窓口:本間

メールでのやりとりを経て、実際に下鴨ロンドに来ていただいて、主宰の本間とお話させていただけたらと思います。
お互いの自己紹介や、どのような場として使いたいかなどお話をお聞きして、お互い「一緒にできたら楽しそう」と思った方にシェアメイトになっていただけたらと思っています。私たちも無理強いはしませんし、互いに無理のない距離感と関係性が健全だと思っています。

下鴨ロンドは、築90年を越える古い建物で、10年かけて少しずつ活用しながら修繕・再生させていくプロジェクトでもありますので、全ての部屋がリノベーション済みで最新の設備環境が整っているわけではありません。
民間事業者が運営しているコワーキングスペースの方が設備的にも環境的にも充実しているのは確かです。そのような上質な設備やサービスを求めている方は、他のコワーキングスペースをお勧めします。
むしろ、洋館を有志で再生させていくプロセスをともに歩んでくださる方を歓迎しています。少しずつ環境は整ってきていますが、それでもゆっくりとしたペースなので、実際に来ていただいて自分の目で見て、ご自身の活用イメージに合った環境下を確かめてみてください。

©︎uenotomohiro
©︎uenotomohiro

シェアメイトになれば、下鴨ロンドで基本的には何をしていただいても大丈夫です。
ただし、互いの迷惑にならないよう他者を尊重すること、ご近所さんの迷惑になるようなことはしないこと、犯罪や公序良俗に反したことをしないこと、宗教やネットワークビジネスなどの勧誘の場にしないこと、そして”敷地内禁煙”、これらは遵守していただきます。

シェアメイトは何かを企画していただいても良いですし、何も企画しなくても全く問題ありません。
ただ自分だけで過ごしたい、という方も大歓迎です。

他のイベントが開催中に、同じ空間にいても参加を強制することもありません。個人の意思を尊重します。

ちなみに、シェアメイトの登録時に公開範囲の意思を確認しています。
「顔出しOK or NG、名前出しOK or NG、どんな人が借りているか属性の公開OK or NG」といった形で、ご自身が下鴨ロンドのシェアメイトであることをSNSなどで公にしている方もいれば、シェアしていることを公表してほしくない方も当然います。
その点もご本人の意思を尊重し、互いに配慮できるように心がけています。

©︎uenotomohiro
サンルームもあります
©︎daisuke higuchi

昭和7(1932)年当時、田畑の広がる下鴨の地にポツンと建った洋館。
今では閑静な住宅地に囲まれ、庭に茂った大きな樹木に抱かれています。
今年の5月で築93年です。
シェアメイトになって、7年後に京都の洋館の100歳を一緒にお祝いしませんか?
まだ見ぬ、下鴨ロンドのような場を必要としている方からのご連絡を、心よりお待ちしております。


※シェアメイトになるモチベーションはないけど、理念に共感いただき、活動を資金面でご支援いただける方は、修繕運営費のカンパも受け付けております。
以下の登録フォームよりご連絡ください。

追って、本間より連絡させていただきます。

また、資金ではなく物資での援助も受け付けております。
その場合も、お互いの意向をすり合わせさせていただきますので、まずは上記フォームよりご連絡いただけましたら幸いです。

今後とも、下鴨ロンドをよろしくお願いいたします。

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