定型化というしがらみ
建築設計事務所はブラックだと良く言われる
今、公共施設の修繕設計を行なっている。
なんてことはない。外壁の状態を調査して、修繕する範囲を決めて、基準に則った修繕方法を明確した設計図をまとめる仕事だ。
ちょっと大きめの地方自治体だと老朽化した施設など膨大にあるのでそれを専門に担当している職員もいる。
彼らにとってはいつもの定型化された仕事なのだろう。とりあえず資料を渡しておけば当たり前に以前に誰かが担当したものと同じ品質の設計図が出来上がると思っている。
40年分の膨大な資料を何の説明もなく渡され、調査を開始。調査資料を取りまとめて提出すると、「早く設計図をよこせ」と催促するので、急ぎで設計に着手、出来上がった図面を提出すると、開口一番に、
「何勝手な図面を作ってるんだ‼︎参考図面渡しただろ‼︎その通り描くのが当然だろ‼︎明日の朝までに直せ‼︎」
膨大な資料から説明もなしに、貴方の要望の参考図面を探し当てて、その通り書けと…
激昂している相手に文句を言っても逆撫でするだけなので、とりあえず夜中までかかって直す。
すると…次の日…
「設計条件が変わりまして…設計内容が減るので委託金額を減らさせてもらえないでしょうか…」
そういう時だけ猫撫で声で電話をかけてくる。
上司に事情を説明して了承を得る。
そしてまた図面を直して提出。
次の日の夕方…
「直ってねえじゃねえか‼︎チェック送ってるんだからその通りも直せねぇのかよ‼︎」
確かに直り切っていないところもあったので謝罪
「明日の朝までに直せ‼︎」
もう夕方の17時過ぎてますが…
また夜中までかかって直して提出。
次の日の夕方にまたチェックが来て「明日の朝まで」
もう、そのチェックも表現の仕方など、趣味のレベル。また夜中までかかって修正して提出。
ここまで来ると夕方になるとソワソワしてくる。
電話が鳴る…またか…
「実は伝えて忘れていた条件がありまして…」
…図面半分以上書き直し…
ここまで酷いことはそうそうないが、似たようなことは良くある。上司に説明したら条件が変わってしまったなど…
最近は就職氷河期の世代の空洞化のせいか建築担当者が30代の若手であることが多い。
知識が十分ではないせいか、効率化が謳われているせいか定型化された決まり事が非常に多い。
担当者の裁量もない。だから、作るものの出来栄えや仕事の段取りよりも定型化されたものに則ることが最優先される。
定型化することは悪いことだとは思わないが、定型化された理由を知らずに定型化されたものにこだわるほど邪魔くさいものはない。
建築設計を生業にしているものとしては数十年積み上げられたそういったもののしがらみから逃れることは難しいと思う。
決して楽な仕事をしたいというわけではないが、もう少ししがらみを軽くして人間らしい生活を送らせてくれやしないだろうか。
今日も愛犬を抱いて癒されよう。
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