死神のこども 1
死神の私に子供が与えられることになった。「次世代創生希望申請」を出していたので、それが当たったのだろう。私の名はヨル。送られてきた、問題ありの魂を管理する仕事をしている。公平性を期すため、天使のヒカリと組んでいる。子供の話をヒカリにしたらば「そうか、君も次の世代を育てる気になったか!来たら会わせてよ」と、存外よろこんでくれた。思ったよりも、心が暖かくなった。嬉しいものだったのか。
ここでは天使も死神も、次世代を担う子供を育てる気になったら、上記の希望書を担当部署に提出する。子供の数の増減は好ましくないので、選ばれた親のところに天界本部から子供が送られて、総数が一定になるように調整される。よほどのことが無ければ、書類の日時に現れる。今回、何故私は申請する気になったかと言うと、死神になってそろそろ中堅、自分の経験や知識を誰かに託したくなったからだ。不慮の事故で消滅してしまったとき、ここまでの努力が全て無に還るのが忍びない気がしたのだ。
子供がきたら、なんて名前にしよう。どんな容姿の子がくるんだろう。死神と天使、どちらの職を選ぶだろうか。独り、やってくる子供に思いを馳せる。私と同じく、死神を選んでくれたら少し嬉しいかもしれない。どちらにしても死神の仕事について知っておくのは良いことだ。1つ意外だったのは、子供がくるのを楽しみにしている自分だった。
こちらで働いていると時間の概念はかなり薄い。あっという間に予定の日となっていた。こどもの来る日であることを、すっかり忘れていた。寝っ転がって空を、正確には天界の果てとよばれる、美しくどこまでも広がる空間を見つめていたとき、それは現れた。緊張気味に、顔の整った子が尋ねる。「・・・あなたがヨルさん?」子供だ。子供がやっと来たのだ。「そうだ、私がヨルだ。顔を、よく見せて」起き上がって、近づこうとしたその瞬間、あの子がこちらに向かおうとした瞬間、子供の姿が崩れた。さっきまでいた場所には、砂の山だけが残されていた。
自分の仕事が関わっているのではないか。管理している魂のどれかが。玻璃の地面に小山のようにできた、煌めく砂の山を見つめていた。
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