不思議な8x10カメラの世界
フィルムカメラには今でもとても大きなフォーマットが残っています。
8x10インチ、いわゆる六つ切りサイズ。A4の縦方向短い版みたいなやつです。一般的なプリントとしても少し大きめのサイズに入りますが…、あのサイズのフィルムで撮ります…。こういうことをすると何が起きるのでしょうか。
すごく昔の写真とかだとベタ焼きが多かったので結構見かけるフォーマットですが、だんだんと引き伸ばしが一般化し少しずつ第一線からは退いて行きました。
しかし、圧倒的な高解像度を得られる為競争スピードがゆったりとしている広告写真の世界では王者として君臨し続け、現在でも(ぎりぎり)生き残り続けています。
ボケのバケモノ
8x10で撮られた写真見ると気付くのは驚くほどのボケ量です。F値も大して小さくない為被写界深度は深めなのですが、ただでさえフィルムのサイズが大きすぎるので視覚的にボケ量がとんでもない量になります。ボケの仕組みの勉強になります。溶けるような背景の世界。被写体がまるで目の前に有るような立体感。4x5などでも似たような効果は得られますが…、レベルが違います…。
f9の開放でここまでボケてしまうともはや感覚が麻痺します…。どういうことなの…。
失敗写真でスイマセン。が特徴は伝わると思います。。。
接写のボケ方はよくわからないくらいボケます。玉ボケ等も少なくとろけ沈み込む世界です。
緊張感あふれる細い線
8x10のもうひとつの特徴は高解像度を生かした線の細い描写です。
実際の目で見ている世界に極めて近く、ものすごい視覚的インパクトを得られます。
世界はこんなに美しかった。
前項でも述べたボケの話も相まり非常に印象的でありながら現実的な側面を持ち合わせる、特異な現象が起きます。
総評
8x10のもたらしてくれる世界は、私達カメラ好きの価値観を大きく広げてくれるものだと思います。そんじゃそこらのカメラとはもう160度くらい見え方が違います。画質とかじゃなくて、深さ、細さ、遠さ、近さ。
先日、ソルントンシャッターをお借りし、写真を撮らせて頂きました。いわゆる昔の写真館の撮り方ですが、同行してくださった方の言葉を拝借すると、「魂を吸われる音がした。」
ソルントンシャッターのシャッター音の性質も有ると思いますが、8x10で撮っていたから尚更強まったことだと思います。
19世紀後半、写真に初めて触れた方々が似た感想を持った事は有名な話です。8x10は当時の撮影法に最も近く、最もかんたんに触れられる技法です。
The Intrepid Camera Companyさんからやたら安い値段で購入できますのでお試しに是非。
ちなみに僕のメインで使っているフジノンWS210/5.6は一万円くらいで買える安いレンズ。これでここまで写るなら試す価値ありだと思います。絞るとサークル足りませんが…。絞り過ぎ注意!
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