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日本語の会話は「譲り合い」〜あいづちと発話権放棄の数から見える日本語会話の特性〜|コーチング学習雑記帳

先日、コーチングにおけるクライアントとの信頼構築の重要性とともに、信頼構築における「あいづち」の重要性を纏めました。

今回はこれに関連して、「あいづち」の数と発話ターンの交替形式に着目して、他国語と比べた日本語会話の特徴について纏めました。

コーチングスキルには直接関係しませんが、信頼構築において会話の組み立て方が重要な要素であるという前提に立つと、我々の母国語である日本語の使われ方を熟知しておくことは大いに意義があるという思いでこのようなnoteを纏めています。

1.「あいづち」の多い日本語

日本語にはあいづちが多いという言語学的特徴があります。

日本語母語話者と英語母語話者(ニュージーランド人)それぞれ二人一組のグループにおける会話を分析した大浜・西村(2005)の研究では、以下のような結果が出ています。

【研究結果|日本語会話vs英語会話の比較】

結果①:日本語の方があいづちの打たれた総数が多かった。

結果②:日本語の方が自分の発話ターンを放棄する回数が多かった。(後述)


結果①に出た、日本とニュージーランドそれぞれのあいづちの数をグラフに表すと下記のようになります。

▼会話が続いた時間の長さ

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▼あいづちの数

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つまり、会話の長さは日本の方が1.3倍長かったのに対して、会話の中で打たれたあいづちの数は日本の方が2.2倍多かったという、あいづち数の有意差が確認されています。


ちなみに、日本語の会話では他国語と比べてあいづちが多い傾向にあることは様々な先行研究において共有されているため、この研究でも同様の結果が出たという形です。

また、本題はここからです。


2.「譲り合い」の多い日本語

同研究では、日本語のもう1つの特徴として発話権放棄の数が多いこともわかっています。

その根拠は発話ターンの交替の仕方と、ターン交替の回数から伺えます。


発話ターンの交替の仕方は先行研究(Sacks, Schegloff, & Jefferson(1974))でも定義されていますが、欧米型の会話を基にしたモデルだったため今回の研究結果を説明し切れず、大浜・西村(2005)では加筆されて下記のようなモデルで日本的なターン交替形式がモデル化されています。

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大浜・西村(2005)で追加されたターン交替形式は下記です。

【日本に特徴的な会話のターン交替形式】

取得放棄:
現在の話し手がターンを終えても会話の相手がターンを取ろうとしない。

取得再放棄:
(取得放棄が発生した際、)現在の話し手もターンを継続しようとしない。

最終自己選択:
取得放棄、取得再放棄の末にどちらかがターンを取る


ちなみに、追加された3つのターン交替形式の具体例を同研究から引用すると、

A:もう大変よ、引っ越し、俺今度するじゃん?

B:ああ〜。(取得放棄) そう言っとったね。(取得再放棄

A:うん。(取得再放棄
   あのさ、レンジがね余るんよ。(最終自己選択

という具合になります。


そして、上記3つの「取得放棄」「取得再放棄」「最終自己選択」は日本語会話の場合、ニュージーランドの結果よりも軒並み出現割合が多かったことが特筆できます。

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ひとたび取得放棄が発生すると、そこではしばらくの間あいづちの応酬が見られます。

つまり、あいづちの応酬で作り出される「譲り合いタイム」が生まれるのです。

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まとめ

今回のポイントを纏めると下記です。

【日本語会話の特徴|〜あいづちと発話権放棄の数に着目〜】

・日本語の会話にはあいづちが多い

・あいづちの使い方も他国と比べて多く、発話権放棄の目的で使われる場合もある

・会話参加者どうしで発話権放棄が行われると、しばらくの間あいづちの応酬(=譲り合いタイム)が行われる


日本語の会話はあいづちが多く入ることが前提の会話スタイルになっている、というnoteを纏めましたが、今回はこれに関連して日本の会話は時に「譲り合い」タイムを生む傾向にある、という内容でした。

前回のnoteもぜひ併せてご一読ください。


参考文献

大浜るい子,西村史子『日英のターン交替と相づち使用の実相ー日本人学生とニュージーランド学生の比較を通してー』(2005)

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