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ビーントゥバーチョコレートができるまで【1】〜カカオの世界実情を知った日から〜

この度、インターナショナルチョコレートアワーズ2020【ICA Asia Pacific】に初出品し、見事に銀賞を受賞することができました‼️✨✨
初出品初受賞はなかなかないと、出品経験のある方々から言われましたが、真相はどうかわかりませんが、受賞は間違いないようです。

インターナショナルチョコレートアワーズとは、チョコレートの国際品評会で、プレゼンと味覚審査で行われます。チョコレートといっても様々なカテゴリーに分かれているのですが、今回は【ビーントゥバーチョコレート】部門にエントリー、受賞になりました。

https://www.kasho-shimizu.com/menu/66


ビーントゥバーチョコレートを知らない人のために簡単に説明します。
ビーントゥバーチョコレートとは、カカオ豆からチョコレートバーになるまで、焙煎、選別、粉砕、磨砕、調合、調温、そしてモールディング、パッケージングまでを自社で行う一連の作業を行うことを【ビーントゥバーチョコレート】と言います。国内でもまだまだポピュラーな手法ではなく、ごく限られたショコラティエしか作ることのできないものです。
一般のパティシエの多くは、ビーントゥバーをはじめるこ自体が億劫で、そんなに売れるようなものでもないとかの理由で、敬遠する人がほとんどです。手間のかかり方も相当なものなので、やらない理由もわかります。

でも、だからこそやる価値があると思います。

弊社では、3年前から本格的に準備をはじめました。カカオ豆の勉強、栽培地への訪問も何度も経て、カカオ豆を選定してから試作開始。その試作も100回近い実験をしながらようやく昨年に、タイ、フィリピン、インドネシアのカカオ豆を使用したチョコレートバーが完成しました。完成後すぐに、東京渋谷ヒカリエでのバレンタインフェア2020に出品が決まったのもタイミングが良かったと思います。

なぜ、そんなにも大変なビーントゥバーチョコレートを自分で作ろうと思ったのか?

それは15年ほど前に遡ります。

ある方の講演会で世界のカカオ農園の実情のお話を聞きました。はじめて聴くことばかりで衝撃を受けました。

それは、カカオ農園のある国、地域のほとんどがいわゆる貧困地域であり、中には児童労働や人身売買もある…日当は日本円にして一日15円…人身売買は一人1500円ほどだと…そのときは聞きました。 

そして、この言葉。

【チョコレートを知らない子がカカオを育て、カカオを知らない子がチョコレートを食べている】

この世界の不条理が、ショックでした。何も知らずにい自分がショックでした。毎日チョコレートを使っている自分はそんなことも知らずに、格好付けて気取ってチョコレートを選んだり、ファッションやオシャレの一部としてチョコレートを使用したりすることもありました。

情けなかったし、自分が異様にダサく思えた。

そこからです。

『何か自分にもできることがないだろうか?』
パティシエとして仕事をしている以上、そんなカカオ事情を黙認し、見て見ぬふりをしながらチョコレートでお菓子をつくるということが許せなかったんです。

知ってしまったからには、何かしたい。どうにかしたい。そんな衝動に突き動かされました。

でも、何をどうしたらいいのかわからない…

で、取引のあるチョコレートメーカーさんに頼んで、海外のカカオ農園をこの目で見てみたいと懇願し、全国の有名ショコラティエの方々に混ぜてもらう形で、エクアドルという国に連れて行ってもらいました。

エクアドル共和国(エクアドルきょうわこく、(スペイン語: República del Ecuador)、通称エクアドルは、南アメリカ西部に位置する共和制国家。北にコロンビア、東と南にペルーと国境を接し、西は太平洋に面する。本土から西に1,000キロメートルほど離れたところにガラパゴス諸島(スペイン語ではコロン諸島:Archipiélago de Colón)を領有する。首都はキトで、最大の都市はグアヤキルである。なお、国名のエクアドルはスペイン語で「赤道」を意味する。(Wikipedia)

初めての南米、初めてのエクアドル、初めてのカカオ農園。かなり興奮しました。

初めてのカカオ農園はまさにジャングルの中。でも、日本からの支援もありしっかりと整備された環境と農家さんを支援する仕組みがありました。

そこで出会った当時9歳の男の子。ダニエル。

(写真は本人ではありません)

彼は学校に行っていませんでした。農家さんとの歓談の時間にダニエルが持ってきたサッカーボールで遊んでいるときに、質問しました。

「将来の夢は何?」

ダニエルは少し恥ずかしそうに答えてくれました。

「エクアドル代表のサッカー選手になって、家族を幸せにしたい」

聞くと、やはり彼の家は裕福ではなく、ダニエルも学校に行かずにカカオ農園を手伝っているとのこと。彼らが作っているカカオが遠い国日本でチョコレートとしてケーキやお菓子になっていることも彼は知りませんでした。

僕は用意していったチョコレートのお菓子
『ティグレ』を農家の皆さんに渡しました。
皆さん感激してとても喜んでくれました。

それからというもの、海外のカカオ農園に行くときには必ず『ティグレ』をお土産にしています。そのティグレは今や、菓匠Shimizuの看板商品にまで成長しました。


初のカカオ農園訪問で、チョコレートへの想いは更に強くなりましたが、その時は何をどうしたらいいのかまだよくわからずにいました。

そして昨年2020年にようやくビーントゥバーチョコレートが完成することになるのですが、そこまでに要した時間は約10年…

エクアドルの後も、コロンビアや他のカカオ農園にも何度か訪問しましたが、実際にチョコレート作りをはじめるまでには相当時間がかかってしまいました。

想いだけは持ち続けてはいましたが、自分でチョコレートをつくるまでには至らない年月がかなりかかったのです。

それが2017年に再び具体的に動きはじめることになります。

続く

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