Shimizulab:清水勝彦研究室

慶應ビジネススクール教授 BCGの内定を辞退し創業2か月のCDIに新卒で参画。 1…

Shimizulab:清水勝彦研究室

慶應ビジネススクール教授 BCGの内定を辞退し創業2か月のCDIに新卒で参画。 10年間の戦略コンサル、テキサス大学准教授(テニュア取得)を経て、2010年より現職。 国際学術誌4誌の編集委員。 ドリコム取締役監査等。 ダートマス大学MBA、テキサスA&M大学Ph.D.。

最近の記事

幽霊と創造力

幽霊は想像の産物と言われる。だから「幽霊は想像力の欠如の産物」と指摘する本を読んで(『世界を、こんなふうに見てごらん』日高敏隆)、確かに、とうなった。まさにゼミでも強調する「That’s interesting」である。 「タクシーに乗った舞妓さんの首がころがっていた」みたいな話も、実はかつらが取れていただけだったりする。舞妓さんってどういう人だっけ、と想像をしないからいきなり「幽霊」という結論に結び付けて騒ぐ。 「難しい決断をするのがリーダーの仕事」とよく言われる。本当

    • 場違いなところで思ったこと(清水勝彦研究室ブログ)

      年をとればとるほど自分が知らないこと、やったことがないことが多くて愕然とする。実はまだ大相撲も見に行ったことも富士山に登ったこともない(ぜひやりたい)。そんなこともあり、さっぱりわからないけれどロックな感じに魅かれてごくたまにお能を見に行く。東京では中学生か高校生の時に済ませているらしいけれど。 佳境の時に写真を撮る人がいた。それも隠し撮りではなく、フラッシュをたき音もたてて2枚。当然のことながら係員が来て、注意される。何も知らない外国人かと思いきや普通のおじさんだった。

      • インフレと転職とガバナンス(清水勝彦研究室ブログ)

        10月からまた値上げ。インフレは止まらない。一方、給料は上がらないと嘆く人も多い。生活が苦しい、節約だ、副業だ、(選挙があるので)バラマキ補助だ、でいいのだろうか? 経団連や政府は「給料をあげよう」と呼び掛けているが掛け声で変われば苦労しない。固定費として中長期的に業績に影響が大きいということもあるが、実は単純に「給料をあげること」にぴんときていないのではないか?安い給料を前提に(頼って)ビジネスモデルを作って当然だと思っているように見える。 そうした重い腰をあげさせ、ま

        • 金利が上がると経営できない?(清水勝彦研究室ブログ)

          良くも悪くも石破内閣が生まれた。個人的には期待するところも多かったのだが、いきなり日銀に金利を上げるなだって。え、経済再生担当大臣の仕事ってそれ?さらに驚いたのは「金利を上げると経営が苦しくなる」と平気でいう人々が結構いたことである。 それは確かかもしれない。しかし、これだけ低金利が続いているのは日本だけのまさにガラパゴス現象である。いつのまにかそうした特殊な「心地よい」状態が「当然」だと思ってしまっている。 一方で、金利の高いアメリカを拠点とする企業と比べて「日本企業はイ

          「誠に申し訳ありません」問題(清水勝彦研究室ブログ)

          あるスーパーの入り口で驚いた。数量限定販売の商品が売り切れたといって謝っているのである。限定300個が200個になったのならわかる。ありがとうございました、というのも分かる。謝るのはなぜ? 「習い性」という奴だろう。「申し訳ありません」と言えば何とかなるという経験から無意識のうちに謝ってしまうのだと思われる。そういえば、クラスの発言でも、まず「すみません」から始める学生がいる。 小さなことかもしれない。しかし、そうした(無意識の)姿勢の積み重ねを文化と言い、その文化がカス

          「誠に申し訳ありません」問題(清水勝彦研究室ブログ)

          また熱中症になりました!(清水勝彦研究室ブログ)

          やっと涼しくなってやや場違いだが、10日前にまた熱中症になってしまった。先月末の京都も結構へとへとで、授業も始まり9/8からは特に忙しかった。13日の金曜日は午前中にゼミをした後、疲れたから温泉でも行こうと午後に武蔵小山に行った。いいお湯だったと家族に自慢するために写真を撮り、その夜から熱を出し、土曜日は一日中寝てる羽目になった。バカ丸出しである。 熱中症は昨年とっても痛い目に合ったので、相当気を付けたつもりだった。ただ、考えてみれば、温泉に入るのは体内温度を上げるので、熱

          また熱中症になりました!(清水勝彦研究室ブログ)

          地方百貨店の生き残り?(清水勝彦研究室ブログ)

          7月末に岐阜県最後となる高島屋岐阜店が閉店をした。その記事にあった「地方百貨店が生き残るには自身の役割を再定義することだ」(日経MJ2024年8月23日)という言葉を読んで考えさせられた。 地方百貨店が生き残りとか、書店の生き残りとかはずいぶん前から話題になっているが、成功した例を知らない。というか成功するわけはないと思っているので、まだこんなこと言っているんだと感じてしまった。 一言でいえば「役割を終えた」からである。バイクメーカーが50ccの原付の生産を相次いでやめて

          地方百貨店の生き残り?(清水勝彦研究室ブログ)

          村上隆@京都を見逃して(清水勝彦研究室ブログ)

          8月末に京都のKBSの経営幹部セミナーに出講した。台風の影響で1時間出発が遅ければ新幹線が止まっていたぎりぎりのタイミングだった。しかし、今回はそのことではない。 クラスが終わってから京都市美術館開館90周年記念展で村上隆展をやっていることに気づいた。しかも台風の影響で人は少ないらしい。ただ、へとへとになっていたことといつ帰れるかわからないこともあり、見ずに伊丹空港から帰京した。 自宅で記念展に関するYouTubeをいくつか見て、逃した魚の大きさに今さらながら気づく。彼の作品

          村上隆@京都を見逃して(清水勝彦研究室ブログ)

          逆ダイバーシティ問題(清水勝彦研究室ブログ)

          シカゴで15年ぶりに旧友のJames Conley教授にあった。次男のボストン留学が決まってドタバタしていたせいか、連絡を取ったのは帰国2日前。会えるとは思っていなかったが時間を切り詰めてディナーに参加してくれた。 5人の子持ちで長女が2日前に結婚したところだという。次男の話をするとぜひシカゴに来いとかいつでも泊まれという話から、彼が担当する博士課程の実態を聞いて驚いた。 彼はエンジニアリングとビジネス(Kellogg)の両方に籍を持つ。前者の博士課程には毎年150人くら

          逆ダイバーシティ問題(清水勝彦研究室ブログ)

          Edmondson 教授と(清水勝彦研究室ブログ)

          “It’s Not Just You. Let’s Have an Honest Conversation about Failures”というセッションに出た。実際、この職業は目に見えたfailuresが多い。そもそも何を博士論文(dissertation)のテーマに選ぶかで迷走、あるいは書き始めてから行き詰まって1年どころか数年延びることはよくある。いったい自分はどうなるのかと暗澹となる。そして前職の業績とは全く関係ない就職活動。その後も論文を学会誌に出しては(散々レビュ

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          25年を超えて(清水勝彦研究室ブログ)

          実は1999年8月にもAOMはシカゴで開かれている(まだトランプタワーはなかった)。この時は博士課程4年に入る直前、ABD(All but Dissertation)と言われる状態で今でも覚えていることがいくつもある。 まず、就職活動の開始がこのAOMだった。今回もスーツを着てネクタイをしている若い出席者を見るが、初任給は高騰しており、今や当時の3倍、20万ドル超えも普通とのこと。 高校時代にちょっとだけ存じ上げていた香港中文大学(当時)の牧野先生に再会したのもこの年。優

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          AOMシカゴ報告1(清水勝彦研究室ブログ)

          8月半ばにシカゴで開かれた2024Academy of Management (AOM)総会には無事出席・発表できた。最高気温が30度を越さない日も多く、とても快適だった。ショッピングエリアの交差点に物乞いの親子がたくさんいるのもこの気候ゆえではないかと思ってしまうほど。 中国人の先生が目立つのは当然として、1年飛ばしてしまったせいかもしれないが、構成も結構変わっていた。その中で圧倒的にドミナントだったテーマはAIである。 AIと働き方、AIと起業、AIとクラスなどで、そ

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          専門家の意見とフェイクニュース(清水勝彦研究室ブログ)

          ブームに人は群がる(というか人が群がるものがブーム?)。私の体験したもので言えば、1987年NTTの株式公開(当時は時価総額世界1位)、その後の土地・株式バブル。目新しいところで言えばタピオカ。終わるからブームというのだろう。 ブームの時、ほとんどの専門家は「一過性ではない」と理屈をつける。「バスに乗り遅れるな」「This time is different」と。そしてブームが終わると全く反対のことを言い出す。プロと素人の差は予測・予想の内容や精度ではなく「自信を持っている

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          海外でのパーティのもう1つの意味(清水勝彦研究室ブログ)

          AIBは7万円弱の参加費で毎日のランチと2回の夜のパーティが含まれているので、他の学会に比べ少しお得感がある。海外のパーティなどで日本人ばかりが固まってよろしくない、ということを言う人がいる。半分は正しいと思うが、半分は間違っていると思う。 これは学会特有かもしれないが、日本では会えない人に会えたりするからである。海外にいるということが、日本人同士が知り合うハードルを下げてくれるし、このきっかけが長く続くことも少なくない。 例えば長年香港中文大学にいらして日本に戻られたM

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          パーパスAgain(清水勝彦研究室ブログ)

          これまでも、色々パーパスばやりに対する違和感は書いてきたが(そういえば最近聞かないなあ)、今回はちょっと違う。「ああ、こう考えればいいのか」と腑に落ちた感があったので共有したい。 7月の半ばにかけて恒例の慶応ビジネススクール主催の「高等経営学講座」(通称トップセミナー)が帝国ホテル大阪で開かれた(これはゼミ生も見学)。最後の3日は毎年ハーバード・ビジネス・スクールの先生にも登壇いただいており、今年来てくださったKerr先生のユニリーバのケースで「なるほど」と思ったのである。

          パーパスAgain(清水勝彦研究室ブログ)

          異文化コミュニケーション(清水勝彦研究室ブログ)

          やっと学会らしい話をする。AIBで必ず取り上げられるのが、国の文化の違いである。戦略からマーケティング、あるいは人事制度までその影響は多岐にわたる。 ある異文化コミュニケーションのセッションで面白い考え方を聞いた。国の文化とステレオタイプの問題。「日本人はこうする」「アメリカ人はこうだ」と十把一絡にした議論に「ちょっと待ってくれ」と言いたくなった経験は誰しもがあるのではないだろうか。 それに対してアメリカ人のプレゼンターは服の例えを出して3つの質問をしろと指摘した。 1

          異文化コミュニケーション(清水勝彦研究室ブログ)