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画家と魂の旅 第3章 どんな絵画を研究しているのか


 現代の画家たちは、好きなものを自由に描くことができる。それができれば面白い絵画が生まれるのだが、大人にとってそれは雲を掴むようなものだ。
基礎的な技術を培った上で、研究対象を自分なりに展開する必要があるからだ。美術学生は、その過程の中で勝ち筋が一向に見えない闘いをする。

2022年版 清水広大展フライヤー表面
2022年版 清水広大展フライヤー裏面


 アカデミックではない環境のもとで描いていた。技法に囚われない制作をしつつ、必要と考えた技術を補っていくスタイルを実行した。一般的ではないスタイルだったが、表現者としてはメリットになる点もあった。
人を愛し愛されたいという気持ちも強く持っていた。それは明確に好きなものがあることだった。関わった人や創作上の人物から、心臓が揺さぶられるような感覚に襲われることがあった。つまり、惹かれる形があることであり、表現者として有利な点だった。
環境からは、自由さを。何となく惹かれてきたものは、好きなものに繋がった。そして、画家、表現者としての早い成長ができた。
そうして約1年間描き続け、大学3年生も終わりに近づいていった。社会に対する皮肉や、大人になるにつれて伝えづらくなる素直な気持ちを込めた作品群は、徐々に「面白い」と言ってもらえるようになった。
ちょうどその頃、銀座での初個展が決定した。この出来事は作品のコンセプトだけではなく、人生をガラリと変えることになった。
表現者は、きちんとみて考えて妥協のないものをつくり、それを発表しなくてはならない。その中で、たくさんの人に出会って支えられ、大学を卒業する頃には個展を2回も開催できていた。大学3年生のうちから作家デビューができたことで、作品コンセプトも変わっていった。初個展時の、批判的な問いかけや青年ならではのもどかしさを示した世界観は、愛や自由で溢れる楽園へと変わっていった。

2023年版 清水広大展フライヤー表面
2023年版 清水広大展フライヤー裏面


 とはいえ、根底にあるテーマは変わっていない。コンセプトは描く観点。そこから何を一貫して伝えるか。それがテーマである。
生きづらさを叫び、暴れている過去作と、炎や人型の生物が共に暮らしたり、旅している近作。それらは、愛と自由を探し続けている。愛と自由は、簡単に歪んでしまう。だが、美しいと感じた色を重ねながら、真の思いやりで溢れる時空があると信じている。その先には、全ての違う形に敬意を表したい想いがあり、作品自体が既にそんな時空の実体なのかもしれない。それは互いを尊敬し合える美しい楽園。尊敬とは私のテーマである。

第4章 楽園とは?愛と自由の研究について
に続く

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