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家庭用オーブンで作るテキサスBBQ

こんにちは、清水です。noteをやれと周りから言われたので始めました。記念すべき1つ目の記事です。

本研究の要約

家庭用オーブンでテキサスBBQに近いものを作る方法を開発していた
結果、普通のオーブンレンジで、BarkもありTender&Moistな本格的なテキサスBBQができた
和牛ランプ、スモークリキッドがポイント

材料まとめ


和牛ランプ 2kg~

ドライラブ(表面にすり込むスパイス)
トップバリュ ガーリックパウダー 1袋
トップバリュ コショー 1袋
塩 適当
砂糖 適当
(分量はあとで写真があるので目で盗んでください、計ってない)
マスタード
S&Bマスタード 1本

スモークリキッド

その他必要なもの
オーブン(130℃になればなんでもいい。我が家ではアイリスオーヤマの廉価なオーブンレンジ)
スモークリキッドをスプレーするための霧吹き
アルミホイル、でかいと楽
前半5-6時間、後半5-6時間、合計10-12時間加熱するぞという強い気持ち

レシピまとめ

  1. 和牛ランプの表面にマスタードを塗る

  2. マスタードの上に、混ぜたドライラブをすり込む。どうせ結構落ちるので大量にすり込んでいい。

  3. オーブンにぶちこんで130℃で加熱する。予熱とかそういう細かい料理じゃないので適当でいい。

  4. 30分~60分に1回程度、スモークリキッドを霧吹きで吹きながら、5-6時間程度加熱する。この工程でbark(表面の黒い美味いあれ)ができるはず。

  5. (ここで21時くらいになったので火を止めて後半の火入れは翌日にしましたが問題ありませんでした)

  6. 一度肉をオーブンから出してテキサスクラッチ(名前はかっこいいが要するになんかで巻く。今回はアルミホイル)して、130℃で5-6時間加熱

  7. おわり。

日本の家庭でテキサスBBQは作れないのか?

背景として、家庭でテキサスBBQを作りたいという人類の普遍的欲求があると考えられます。基本的に私は「米国のほうが肉は美味い、和牛は脂が多すぎる」というのは偏見だと思っており、ステーキは日本のほうが圧倒的に好きなのですが(そもそも今は日本でも脂多い和牛避けられる傾向あるし。)、テキサスBBQだけは本当に美味いです。本当に。肉料理科学界の金字塔と呼べる調理法でしょう。
ただし日本だとなかなか食べられる店がありません。かつ自作も、伝統的なBBQは東京都心でできるようなものではありません。だだっぴろい荒野にピックアップトラックで乗り付けてアホほどでかいオーブンで1日かけて焼くタイプのものです。その間もちろん銃はオープンキャリーです。そこまでいかなくても、最低でも広大な庭が無いとできません。

という前提があるので、とてもじゃないですが日本の2LDKのマンションで作るようなものではなく、日本の家庭ではできない、が定説でした。材料も手に入らないし。

科学的視点から分解するテキサスBBQ

テキサスBBQの構成要件とはなんでしょうか。工程で考えると
(1) 巨大な塊肉を
(2) 表面にスパイスを塗って
(3) 巨大な低温オーブンのスモーク環境下で6時間程度加熱し
(4) テキサスクラッチしてさらに6時間程度加熱する
ことが概ねの特徴だと思われます。それによって得られるものは主に以下の2点だと考えられます。

  • Bark: 表面の独特の香りと味を持つ表面の化学物質

  • Tender & Moist: 信じられないほど柔らかくしっとりとした内部の肉

この表面と内部のコントラストこそがTexas BBQの特徴だと考えています。特に、12時間程度と長時間加熱すると、普通は肉が固くパサパサになってしまいそうですが、それをうまくMoist、湿度のある状態に保っていることがポイントです。
またこのコントラストを出すためには、大きな塊肉でやることは必須です。通常米国ではおそらく10kg以上のサイズのブリスケットを用いることが多いと思われます。
Barkは、巨大なオーブンでスモークしつつ脂を落とし、表面をパリッと仕上げることがポイントです。ただいわゆるスモークチーズのような乾いた表面になってほしいわけでもなく、サクサクになってほしく、ここが再現が難しいポイントです。

逆に言えば、大きな塊肉があって、表面にBarkができて、内部がTender&Moistになればいいわけです。どうするのがいいでしょうか。
結論から言うと、肉に和牛ランプを選択し、スモークリキッドを吹き付けながら焼くことで実現できました。

日本版テキサスBBQ

肉の選定

実はこれがキモです。テキサスBBQの肉には適度な脂が必要だと思っています。米国の肉なので筋肉質!と思いがちですがこれは間違っていて、そもそも米国でもブリスケットなのでバラ、すなわち脂が多い部位をわざわざ使っているわけです。
「米国からブリスケットを取り寄せる」も一つの手なのですが、まず大きすぎて家庭用オーブンには入りません。あと、せっかく世界一の牛を有する日本なのですから、和牛でやりたいじゃないですか。
要件は以下です。

  • 脂の量が適度であること

  • 筋肉質であること

  • ある程度の弱めの筋が入っていてもよい

  • 3-6kg程度で手に入ること

  • 立方体に近い形で得られること(薄っぺらくないこと)

  • 日本において入手性が良いこと

以上を鑑み、和牛ランプのBMS等級8-9番を選択しました。この選択が最大の成功要因だったと思っています。私がいつも使っているサガミヤホールセールさんで、6kgのものをお願いしました。単価はキロ4300円。

届いたものがこちら。

サガミヤホールセールさんいつもお世話になっております

使い方ですが、これをサーロイン側とイチボ側でざっくり半分に分けて、イチボ側の半分を使いました。この使い方ができるのもランプを選んだ理由で、ランプはサーロイン側の半分は厚切りステーキから焼肉までなんでもいける肉がとれますが、イチボ側の半分は筋の噛み込みもあり、ランプ特有の味の濃さはありつつも少し使うのにテクニックが要る肉ということは皆さんご存知かと思います。そこをまるまるテキサスBBQにすることで、うまく活用できないかという作戦です。

我が家。後ろのオーブンレンジが「まさかあいつを入れるつもりか・・・?」と言っています
イチボ側の半分。いい脂の割合

肉の前処理

マスタードを塗って、ドライラブを塗るだけです。

ドライラブ。12時の方向から時計回りにガーリック、こしょう、砂糖、塩
マスタードを塗りました
ドライラブすり込み

加熱調理(前半、Barkづくり)

130℃のオーブンに入れます。温度はずっと130℃です。焼く過程で大量の脂が落ちてくるので受け皿が無いと大変なことになります。今回はオーブン皿を受け皿として、その上に魚焼きグリルの網を置いて使いました。
なおオーブンは廉価なアイリスオーヤマのオーブンレンジです。オーブンはなんでもいい。

3kg程度、これでギリギリ

前半の調理は表面にBarkを作るのが目的です。肉に火を入れるのが目的ではありません。Barkですが、基本的に以下が組み合わさってできるものです。

  • 糖分

  • スモーク成分

  • 水分

  • 油脂分

  • スパイス

和食で言えば、鰻の蒲焼きで表面に形成される黒い成分に近いと思います。あれもスモークされながら糖分・水分・油脂分が合わさることで形成されます。
とはいえ、使っているのが普通のオーブンなので、スモークを使うことは容易ではありません。米国で用いるBBQオーブンであれば、スモークチップを入れるところがあったり、局所的に高温になる部分があるのでそこにスモークチップを入れつつ、肉を熱源から離すことで「スモークはしつつ肉は低温」を実現できます。
このサイズのオーブンではそれは望むべくもありません。そこで今回用いたのがスモークリキッドを何度も吹き付けるという方法です。これが今回の成功要因の一つだと考えています。

こちらのスモークリキッドを用いました。スモークリキッドは、本来は何度も吹き付けて使うものではなく、かけて焼くか、焼いたものにかけるものです。しかし、このスモークリキッドは、スモーク成分に加えて、糖分なども入っており、これを何度も吹きかけることでBark形成に必要な糖分、スモーク成分、水分を同時に与えることができると考えました。
しかもスモークリキッドは、本来気相成長させるスモーク成分を液相で直接成長させられるという利点があり、短時間で強いスモークができるという利点も考えられます。

このスモークリキッドを30-60分に一回ずつ霧吹きで吹きかけながら6時間程度加熱するという方法により、Barkが形成されました。

焼いている途中
6時間後、Barkが想像以上に綺麗に形成され感動

加熱調理(後半、仕上げ)

前半の調理では内部温度はそこまで上がっていないと考えられます。そこでテキサスクラッチを行います。テキサスクラッチは一般的な方法なので解説は省きますが、基本的になにかで肉を包み、湿度を高めるとともに、肉からの放熱スピードを下げて肉の温度を高める効果があります。これにより、内部温度90℃以上に達すると言われています(測ってない)。
これにより、コラーゲンが完全にゼラチン化して柔らかくなる一方、普通にやると水分がどんどん蒸発してパサパサになるため、巨大な肉塊でやる必要があるわけです。

後半は何もする必要なく、130℃で加熱し続けるだけ。焼き上がったものがこちらです。

焼き上がり
スモークリキッドがかかってなかった部分の色が薄く、スモークリキッドの役割がわかる

実食

めちゃくちゃうまいです。日本で食べたテキサスBBQで一番うまい。
Barkがしっかりできているのと、和牛ランプの肉質が完全にマッチ。和牛のブリスケで作ったものも食べたことがあるのですが和牛、特にA5のブリスケだと流石に脂が多い印象なんですよね。
これはかなりあっさりしていて、一人400gくらい食べました。オーブン皿には脂が山のように落ちており、脂もうまく落ち、そして脂が落ちる過程でうまく表面にBarkを作ってくれたものと思われます。
Tender&Moistも完全に実現されており、テキサスBBQ特有の肉がプルプルという感覚。下の写真でもキラキラと輝く水分が見えると思います。Moistです。まじでうまい。

理想的な断面

残りの肉

ステーキや焼肉などにして頂きました。和牛ランプを使う方法の利点は、副産物としてめちゃくちゃ美味い肉が大量に得られること!ランプからいいところを取り出した残りをBBQにしてるようなものなので。

ラムシンのステーキ。ラムシンって本当に美味しいですよね。
いい火入れ具合。BBQの前に前菜として食べました
タレ焼肉
塩。右側の小さいのはネクタイ

私は特殊な訓練を受けているのでランプのブロックを綺麗に焼肉カットにまでできますが、正直和牛のランプは焼けば美味いので、実際はそこまでやらずに適当に焼いても美味しいです。

まとめ

テキサスBBQが自宅でできることが分かりました。和牛ランプ(BMS8-9)を使ったこと、スモークリキッドを何度も吹き付けるという方法が勝利要因だと思われます。
これをトライする際に一応先行研究の調査をしたのですが同様のことをやっている例が無かったので、知として残しておくべきと考えました。
今回は6kgの塊の半分の3kgで焼きましたが、意外ともう少し小さいサイズでもうまくいくのかもしれません。ぜひトライしてみてください。


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