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【開催レポート】第10回&11回市民ゼロポイントブックトーク※当日レジュメあり

第10回&11回市民ゼロポイントブックトーク
開催日:第10回 2022年3月13日(日) 於:松本市中央公民館
    第11回 2022年4月10日(日) 於:同上
紹介した本:デヴィッド・ハーヴェイ著『新自由主義ーその歴史的展開と現在』(渡辺治監訳、2007年、作品社)
紹介者:田多井(企画運営委員)
参加者:第10回 14人(企画運営委員含む)
    第11回 13人(同上)

当日のレジュメはこちら↓

企画概要のわかるチラシはこちら↓

開催レポート

 今回のブックトーク会は、デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』と訳者の渡辺治氏による解説を取り上げました。
 まず、新自由主義の定義は、以下のような内容となっています。

新自由主義は、ヴェトナム戦争による軍需の過熱に対して、アメリカ合衆国大統領(リンドン・ジョンソン)が、金利を上げなかったことで、景気後退と物価上昇が同時に起きるスタグフレーションへの対処法として登場し、1970年代のニクソンによる変動相場制に伴う「金融の国家規制=固定相場制」の放棄によって、アメリカ・イギリスでレーガン・サッチャーによって推進された経済イデオロギー。
 具体的な建て前としては、
①個人の市場における自由の保障と、個人は自分自身の福祉・教育・医療・年金に責任を負わなければならない。②個人は合理的、自立した存在なのだから、自分の未来に対する情報を知っている。なので、国家の公的サービス(健康保険を含む)は、基本的に不要であり、民営化されなければ国家は不要なコストを生じさせる。③社会的な不成功というものは存在しない。すべて個人の責任である。④市場は資源配分を効率的に行うのだから、独占企業があっても、国家は公正取引委員会のような介入を行ってはならない。⑤人頭税の採用と、累進課税の撤廃。
を旨とする。ただし、本音としては、
①金融システム、金融機関が危機に陥らないよう、公的資金を、経営者責任も不問にして投じること。←国家は「良好なビジネス環境の整備」の建て前のもと、十分市場に対して介入的。②労働組合などについて、あるいは企業に対して敵対的な集団は、弾圧すること。③個人には経済に関する自由はあるが、政治的自由はない。個人に政治をゆだねた民主主義は、ファシズムを生みうる。統治は民主主義ではなく、専門家やエリートなどにゆだねられるべきで、紛争は専門家の仕切る法廷で解決されるべきである。④新保守主義との融合によって、強い国家=軍事国家を指向。⑤新保守主義の影響のもと、白人至上主義・人種差別・同性愛嫌悪・反フェミニズム・キリスト教右派との連携を原則とする。

以上のような、「お金持ち」でなければとうてい承服しない経済イデオロギーが、なぜ世界中を席巻しているのかというと、「自由」というものを消費社会でプライベートな消費生活を送るという「自由」にすり替えた、というのが大きな要因です。

こうした内容の著書については、ブックトーク会では金融経済と実体経済の分離について、
多くの質疑がありました。発起人としては、「まずは本書の内容をうまく紹介すること」が第1目的でした。質疑で本の内容がうまく紹介できたかというと、発起人としては自信が持てないところですが、とにもかくにも質疑に応答できたのが幸いでした。
ただ、日本において『新自由主義』という経済イデオロギーが、小泉政権で日本社会をも席巻した結果、「与党であり続けた自民党がそもそも小泉政権成立によって、その党のあり方、意見集約のあり方が従来の自民党の姿を著しく変えた」という背景があります。

会場で出たご意見としては、「団塊の世代に属する自分の世代は、おおきな間違いをしてしまった。後世の世代に負担を残した」という、なまなましいご意見をいただきました。
また、会場のみなさん、発起人ともども、「この新自由主義のもたらす弊害をどうクリアするかについては代替するような案がなかなかない」という現状に直面せざるをえませんでした。

以上が主な報告ですが、発起人の反省としては、取り上げた本がかなり理論色が強く、具体例を発起人が積極的に出して、本の内容の意義を具体的にわかりやすいものにできたかどうか、あまり自信が持てないというのがあります。
今後の会の反省点としたいと考えております。

(田多井)


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