しみさん夫婦

文章は夫、イラストは妻。イラストエッセイを書いてます。がんばった自分へのごほうびに執筆。

しみさん夫婦

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マガジン

  • アタイの気持ち

    「アタイにだって言いたいことがある。」 身近にあるモノの気持ちを妄想で書いてます。 モノにストーリーを、暮らしに温かさを。 文章:しみ、 イラスト:森あんじゅ

最近の記事

フィンランドの列車にて

「結婚してもしなくてもいいよ、しみさんと一緒にいられたら」 入籍前、フィンランドの列車に揺られながら、妻にそんなことを言われた。 その時点ではすでに婚約していたので、「これは婚約破棄…?」と動揺しながら話を続けた。 「結婚しなくてもいいの?」 「うん」 「どうして?」 「一緒にいたいだけだから」 しばらくのあいだ僕の頭上には、Now Loading…の文字が出ていたと思う。 時間を置いて、だんだんと理解が出来てきた。 どうやら妻は「結婚」という形式にこだわらなくて

    • ふたり史を育てる

      妻はマッサージを受けるのが得意だ。 いつものようにテキパキと家事を済ませた彼女は、首のあたりを抑えながら「このへんが凝ってるんだよね」と相談してくる。 患部を見ながら「へぇ、そうなんだ」と答えると、「どうやったら治るんだろうなぁ」と独り言のようにつぶやく。 「マッサージしようか?」と言うと、いや、言い切る前には「お願いします!」とうつ伏せになっているのである。 一見、僕の優しさで提案したようにも見えるが、あきらかな"誘導"であり、巧妙なトリックだということに最近気づい

      • ボクのふるさと

        息子には故郷(ふるさと)をつくってやれない。 そう思ったのは生後1年が経ったころだった。 というのも、僕と妻は根っからの移動好きで、前世はモンゴルの遊牧民だったんじゃないかと疑うほどに引っ越しを繰り返していた。 案の定、息子が1歳になったタイミングでシビレを切らし、引っ越しをすることになった。 片田舎の一軒家からシェアハウスに移り住むことになり、このタイミングで家具家電などはすべて手放した。 数ヶ月前に3万円で買った食洗機を1万円で売りさばいて「逆転売ヤー」としての

        • 感情の通訳

          息子は感情ネイティブだ。 先日、仕事に出ようとすると「パパ、コーヒー屋さんにいくの?」と声をかけられた。 振り返ると、むずかしそうな顔をした息子が立っていた。 「そうだよ」と答えると、「おうちでお仕事してほしいな、あおくん寂しくなっちゃう」と返された。 どきゅん。なんだこのつぶらな瞳をした子アザラシは。まんまと射抜かれ、カフェにいくのを取りやめた。 うちの息子は感情を隠さない。うれしい、恥ずかしい、悲しくなっちゃう、好き、嫌い、全部言うのだ。 この姿を見ていると、

        フィンランドの列車にて

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        • アタイの気持ち
          13本

        記事

          本日は閉店です。

          僕たち夫婦はよく閉店する。 付き合って6年ともなれば、朝起きたときの顔を見たらわかる。まぶたのシャッターが下がりに下がっていて、そのわずかな隙間から「あとは頼んだよ」とタマシイの叫びのようなものが聞こえてくる。 まもなくして地面に落下したエンピツのように直立のまま横たわり、こちらに背を向けてピクリとも動かないお客さん泣かせのゴマフアザラシが誕生する。 そんな妻を横目で見ながら息子を抱きかかえ、リビングへと連れていく。ふだんの感謝と敬愛の念を抱きながらそっとつぶやく。ゴマ

          本日は閉店です。

          トキメキの正体

          息子のトキメキが止まらない。 うちの息子(3歳)はアラレちゃん顔負けの天真爛漫さを発揮していて、朝から晩まで目をキラキラさせながら遊び倒している。 ガムテープを見つけたと思えば、家中に貼って結界のようなものをつくり「パパ、そこ通ってみて」と誘導してくる。引っかかった僕を見てケラケラと笑う。 スマホ三脚を見つけては「これ武器になるじゃん!」と嬉しそうに手にとり、ビヨーンと伸ばして僕のスネのあたりに一太刀喰らわせる。 ガムテープもスマホ三脚も、息子にとっては「初めて触れる

          トキメキの正体

          ひらべったい幸せ

          ひらべったい幸せを目撃した。 およそ1年前のことだ。 旅暮らしをしていた僕たち家族は、シンガポールから日本に帰ろうかというタイミングで「帰国して、どこに住む?」という話になり、シェアハウスをやっている友人に連絡してみた。 すると数時間後には「うちに住んでいいよ〜」と返事がきて、遊びの約束みたいなテンションで入居が決まった。 そのシェアハウスには、オーナー夫婦とその息子たち2人、ほかにも歳の近い女性が2人いて、僕たち家族を含めると、総勢9人が住む、にぎやかな一軒家となっ

          ひらべったい幸せ

          妻がエスパーになった。

          うちの妻はエスパーだ。 先日、息子が悲しそうにしていたので理由を尋ねてみると「ワンワンがいい」と返された。 ん?ワンワン?犬のことかな。 犬のぬいぐるみを渡すと「ちがう!!!」とブチギレられた。ほてった甘栗のような顔をしているので、早めにギブアップをして妻に聞いてみた。 すると妻は「ああそれね」みたいな顔をして、犬のコップに水を入れて息子に渡した。 甘栗はそれをゴクゴクと飲み干し、平熱に戻ったようだった。 翌日、同じシーンに出くわしたので、犬のコップにお茶を入れて

          妻がエスパーになった。

          人の目センサー敏感です

          うちの妻は人の目が気になるタイプだ。 これをやったらどう思われるかなとか、誰かに迷惑かかるかもしれないなとか、そういったことを先回りして考えて「やっぱやめとこ」になることが多い人である。 人の目センサーとやらがスパイ映画の赤外線レーザーのように張りめぐらされていて、少しでも人の目を感知すると本部に緊急事態速報が入る。 そんな気にしいな妻が、唯一ガバガバになっている感覚がある。 外見だ。 自分の外見に関しては、この人の目センサーがいっさい感知しなくなるのである。 た

          人の目センサー敏感です

          ライフイズムービー

          人にはいろいろな役割があると思う。 僕はやりたいことのサポートをする「メンター」という仕事をしている手前、日々さまざまな人生に触れている。 個人でサロンを開業してみたくて…という人もいれば、転職をしたいので背中を押してほしい…という人までいて、熱中している人生をフーフーせず、アッツアツのまま未来までデリバリーしている。 そんななかで感じるのが、「みんな主人公なんだな」ということ。 誰しも「わたし」という映画の主人公を生きていて、監督からの「カットォォーーー」の一言を聞

          ライフイズムービー

          本日もよく歩きました。

          最近は、妻と朝散歩をするのが日課だ。 数週間前、妻のほうから「コーヒーでも買いにいく?」と誘ってくれてノコノコとついていったのが始まりだった。 その翌日には僕のほうから「コンビニいくけど、いく?」とお誘いした。 いまとなっては「いきますか」という合図とともに2体の大人がコンビニへと歩きはじめる恒例行事となった。もはやなにも買わずに帰ることすらある。 この朝散歩が日課になって三週間ほどが経ったのだけど、なんというか、もう手放せないくらいにはどっぷりハマっている。 コン

          本日もよく歩きました。

          北欧旅ですっからかん

          僕と妻はいろいろと違うところがあるものの、唯一ピッタリと合う価値観がある。 「お金の使いどころ」だ。 ふたりともブランド物とかにはあまり興味がないし、タワマンなどに住みたい願望もない。たまごかけごはんに醤油と韓国ノリで悶絶しているようなふたりなもんで、コスパよく幸せに暮らしている。 しかし、そんな庶民派のわれわれが貯金の大半をベットしてもいいと思っているのが「体験」だ。 僕たち夫婦の価値観として、「人生の幸せって、自分がしたい体験をどれだけできたかに尽きるよね」みたい

          北欧旅ですっからかん

          妻はツバメにゴマをする。

          妻といると、よくハプニングに見舞われる。 先日のことだ。お昼すぎに夫婦で出かけようとなった。 妻はいつものようにサクサクと準備を済ませ、僕はいつものようにすこし遅れをとっていた。シビレを切らして玄関にむかう妻。 すると、バタバタバタッという音がして、「しみさん!しみさん!」という焦りの声が聞こえてきた。 ん?なんじゃ? 「あそこ!見て!」 なんと、玄関に一匹のツバメがいるではないか。 彼はキョロキョロとあたりを見渡しながら、思い立ったようにグルグルと飛びまわり、

          妻はツバメにゴマをする。

          青春の賞味期限

          息子とはよくタッグを組む。 先日、カメラのキタムラに行った。 妻がプリントしたい写真があるらしいので、僕と息子もノコノコとついていくことにしたのだ。 店内にはたくさんのカメラとパソコンが並んでいて、3さいの息子はキラキラと目を光らせていた。 やってしまった。物損モンスターこと息子を、高額な機材に囲まれたユートピアにつれてきてしまった。あろうことか息子はいちもくさんに走り出し、高そうなカメラの前で止まった。 「これほしい!」 そう言って手にとったのは、最新っぽい赤いカ

          青春の賞味期限

          だれかに信頼されたいマン。

          自分の可能性って、自分じゃ気づけなかったりする。 6年前、初めてカメラを買った。 ソニーの人気の機種で、さぞかし嬉しかったことを覚えている。 黒光りするボディを眺めながら、長いクチバシのようなレンズを取り付ける。ファインダーを除いて、カメラマンのまねごとをしてみる。 そうしてニマニマしながら映像の世界に入った僕は、毎日のように撮影にいそしんでいた。 家のなかでも映像を撮るもんだから、妻には何度も「この三脚捨てていい?」とおどされた。 最初は趣味のつもりだったけれど

          だれかに信頼されたいマン。

          妻と僕は、たわいもない。

          妻とはよくたわいもない会話をする。 先日のことだ。 「保護者会の役員になったらしい」と妻が切り出した。 そういった重役はおそらく挙手制とかで決まるはずだろうと思った僕は「らしい、なんてことある?」と返してみた。 すると、「役員できるか聞かれて、あいまいな回答したら役員になった。しかも夫婦で」という特大カウンターをくらった。僕も役員になっていたのだ。 そのあとも「ああいうPTAとかってさ、子どものころは大人たちがなんかやってるな〜、くらいに思ってけど、いざやるとなると

          妻と僕は、たわいもない。