第6話

〜初日〜


月曜日 8:05


「おはよー!」


2日前の入学式と同じように公園にて待ち合わせしている
2番目に到着して到着してる人物に声をかけたのは里奈だ


「相変わらず早いわね。今日も5分前に着いてたの?」
「今日は7:50頃かな?」
「早っ!いや、いつものことだけど!」
「遅刻するよりはマシ!」
「うん、知ってる…でも……」


言葉にした時間でも充分早いのだが、里奈その時間より早く到着してることを知ってる。
そんな里奈はいつも時間ジャストに到着する。
なんでもギリギリまで自分の時間として有効活用しているからそれが効率的に使ってるということらしい。
もちろんそれは里奈独自の考え方なので他の人からしたら謎理論なので理解されることはまずいない。


「で、いつも通りって感じ?」
「まぁ、そうだな」


里奈は溜め息混じりに少し項垂れつつ、そっとスマホを取り出してコールする。


トゥトゥティ トゥトゥティティン
トゥトゥティ トゥトゥティティン

プッ


「もしもし?!」
「もしもし…」
「今どこ?」
「家出て向かってる…」
「…で、ホントは??」
「ホントだって」


タタタタッ


「お待たせ」


走ってる音が聞こえたと思ったらすぐに到着した
電話での内容はホントだった
ほら見ろと言わんばかりの顔を見た里奈は溜め息混じりに


「ったく、相変わらずすぎでしょ!高校生になっても変わらないとか!」
「ごめんね」
「まぁまぁ。今日はこれくらいにしてさっ!」
「はいはい、さっさと行くわよ!」
「うん」


眠気眼の克己を先導する形で歩き出す里奈
優希也はボソッと里奈も相変わらずだな、と言うと
同じくらいの声量で俺が悪いから、と返す克己
言い終わると互いに目を合わせて苦笑いする


「ぐずぐずしてると遅刻するわよー!」


ふと気づけば振り向いて少し声を張っている里奈
思ってた以上に離されて歩いてる二人は慌てて里奈に駆け寄る
その光景を見て、ふふふっと楽しそうに笑う里奈

この光景は本格的に学校がはじまり、其々が忙しくなると見れない光景ということは里奈は理解していた。
だからこそこの瞬間を愛おしく思っていた…


教室に到着後、席に荷物を置いてそのまま座る克己
克己は座るやいなや座ったままの状態で目を閉じ、うつらうつらする。
決して夜更かしをしているわけではないし、平均睡眠時間は8時間と睡眠時間も充分足りてる。
それでも朝は遅刻しがちだし、眠そうな仕草を繰り返す。
里奈はこの一連の流れを小学生の頃からだと聞いている。
里奈と克己は小学生時代からこれまで一度も同じクラスメイトになったことがないため周囲の人からの話や通りかかった際に実際に見かけたことがあるので知ってはいたが、同じクラスになって見るのは初めてのことだ。


「なんともまぁ…」


ボソッとつぶやく里奈
噂や遠目からではなく、目の前で起こってる出来事に開いた口が塞がらない様子で、思ってることを無意識のうちに言葉となって…否、漏れ出たといった表現が正しいであろう
里奈はそれくらい何とも言えない心境においやられた。


ガラガラガラッ


気づけば朝のホームルームの時間になっていた。
今日から正真正銘の高校生
その最初の時間がこれからはじまろうとしてる。
教室内は少し緊張感が走った…一部を除いて…

担任の盛田が入ってきた


「おいっす〜、ホームルームはじめっぞ〜〜」


気怠そうな声が静寂に鎮まりかえってる教室に響く
その瞬間に一気に教室内の空気が変わる
皆、担任の盛田の気怠そうな態度・雰囲気を完全に忘れていたのである。
クスクスと笑いがこぼれるなか、とあるプリントが配られる。


「わかりやすいように複数枚をまとめて1束にしてるから、一人1束取るように〜。間違えて破ったりしないように気をつけろよぉ〜。」


プリントは最前列の人に列の人数分をまとめて渡されて、一人分受け取ったら後ろに回していく。
盛田がそう言ったのは殆どの列が列の半分くらい渡し終わった時点でのことだったため、人によっては勢い余って破ってしまい、仕方なく破れた状態のモノを手元に置いた生徒もいる。
それに該当する生徒は複数人にのぼるようで、なかには早く言ってくれれば良かったのにと今にも言わんばかりの何とも言えない表情をしている生徒もいる。


克己は回ってきたプリントをしっかり確認してから最後の一部を後ろの人に渡そうと"左回り"で振り向きながらプリントを渡そうとした…
そのとき克己の視界に入ってきたのは教室には似つかわしくないと思われるほどの漆黒で、それは輝いている…
一瞬目を奪われて固まってしまった克己だが、後ろの席の生徒に声をかけられて正気に戻る。
正気に戻った克己は改めて漆黒を視認すると、それは長い黒髪の女生徒だった。
前髪が長いせいか顔が確認できないような髪型をしていたせいもあり、振り向いた状態から前に向き直す短い時間では顔を見ることすら難しかった。


あれは誰だ?


後ろを振り向きたくても、何の意味もなく振り向くと不審極まりないため
改めてその女生徒を視認することを我慢する克己
その心はまだ落ち着く様子は微塵もないようだ…


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