大國魂神社例大祭「くらやみ祭」について
例年4月末になると、府中では例大祭「くらやみ祭」の準備で街が慌ただしくなります。ゴールデンウィーク中は多くの参拝の方々で溢れる大國魂神社。しかし今年(2020年)は新型コロナウィルス感染拡大を防止するためお祭りの行事は自粛、神職による神事のみの斎行と決まりました。
いつもと違う5月を迎え、市民も戸惑いの日々だと思います。当方も神社のすぐ隣で飲食店を営んでいますので、お祭りの期間中、例年お客様で大変賑わいます。それだけに今年は商売的にも残念ですが、また盛大にお祭りが出来るように、今は自粛を遂行できたらと思います。
さて今回は大國魂神社例大祭「くらやみ祭」について書きたいと思います。
そもそも、まつりとは
日本には昔より「まつり」の文化があります。縄文時代の昔より自然を敬い、豊作大漁、子宝安産、雨乞いや疫病除けといった「祈りや感謝」「慰霊」を神様や目に見えないものへ捧げてきました。これが「まつり(祀り)」です。私たちのご先祖たちは自然と共生する中で人間の「自力」だけでなく、自然の力という「他力」をいかに得るか、味方につけるか、ということを考えてきました。
例大祭とは
現在、全国各地の神社神道で行われる祭祀ですが、重要度や頻度によって「大祭、中祭、小祭」と分類されます。「大祭」とは神道にとって、一年を通じて文字通り非常に重要なお祭りの事。多くの神社では「祈年祭」「新嘗祭」「例祭」と呼ばれる3つの神事を大祭としています。祈年祭は2月に行われる、今年の五穀豊穣を願う神事。新嘗祭は11月に行われる、今年の収穫を感謝する神事。これらは皇居にて天皇陛下が祭主として行うのと同様に、日本各地の神社でも行われます。そして例祭は神社それぞれにとって重要な神事のことを指します。毎年行われる大祭だから「例大祭」と言うこともあります。
大國魂神社例大祭「くらやみ祭」とは
大國魂神社(詳細は過去記事をご覧ください)は東京都府中市のほぼ中心に位置する神社。こちらの例大祭は「くらやみ祭(まつり)」と呼ばれ、もともとは国府祭を起源とする古来より続く格式と伝統あるお祭りです。
祭祀が夜、暗闇の中で行われる理由は、貴いものを直接見る事は許されないという古来より存在する儀礼に起因しています。「神聖な御霊(みたま=神様の魂)が神社の本殿から神輿に移り御旅所に渡御するのは人目に触れる事のない暗闇でなければならない」という神事の伝統によるものです。例大祭は時代の移り変わりとともに開催時間が変更されるなど変貌を遂げつつも、古式に則った行事が現在でも厳粛に行われています。
くらやみ祭は今日、とても大規模な祭りとなりました。神事は4月29日の品川沖での「品川海上禊祓式」から始まりますが、神社周辺で特に活気が溢れるのは5月3日から6日まで、たくさんの神事や行事が催されたり、屋台が出店したりと大変賑やか。
5月3日に行われる「競馬式(こまくらべ)」は馬場大門のケヤキ並木に馬の市が立っていた当時に行われていた、6頭の馬による駆け比べ。同じく、ケヤキ並木では府中囃子保存会の各支部による囃子の競演が行われます。
5月4日にはカラフルに仕上がった万燈(まんどう)の競演「万燈大会」。子ども神輿の渡御。六張もの大太鼓の饗宴。府中囃子の山車行列。
そして一番のクライマックスは5月5日から6日にかけて行われる、八基の神輿を担いで巡行する神輿渡御となります。くらやみ祭は期間中、のべ70万人もの人出で賑わう、東京でもトップクラスの参拝客数が集まる祭りとなりました。
くらやみ祭は明治時代初めに、神社だけでなく町人も手伝う形となり、発展しました。その時の神社周辺の4つの町内(本町、番場、新宿、八幡宿)の方々に協力頂いたことからこの町内を「四ヶ町(しかちょう)」と呼び、この町内を中心に祭が行われてきました。私はその中で「新宿(しんしゅく)町」という町内に所属しています。現在の行政区分でいうと宮町、府中町周辺です。新宿町は「五之宮」のお神輿を担当する町内です。武蔵国の五之宮は埼玉県児玉郡神川町にあります「金鑚(かなさな)神社」のことを指します。武蔵国は本当に広い!
撮影した写真は新宿のものが多いのは、そういうわけです。祭りの期間中は町内、囃子保存会、氏子青年崇敬会の各団体のお手伝いがあるため、手が空いた時にその場で撮影したものになります。
さて、いかがでしたでしょうか。長い歴史の中で、たくさんの方々に支えられて続いてきた「くらやみ祭」ですので、人・町内によって色々な切り口で語ることができる祭りですが、今回は祭りの概要を書きました。また折を見て、別の視点から書きたいと思います。
昨年(2019年)、くらやみ祭を舞台に家族の絆と地域社会の繋がりを描いたオール府中ロケの映画が上映されました。俳優の六角精児さん、高島礼子さんらが出演する、映画「くらやみ祭の小川さん」です。そちらをご覧になるとさらにくらやみ祭が楽しめます(私もエキストラ出演しました)。
公式ページに予告編の動画がありますのでよろしければご覧ください。DVDの発売も近々行われるそうです。