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樹のコミュニティ

家から自転車を走らせているうちに、いつもとは違うルートで走ってみたくなった。道の岐路に来るたびに、「すてきな気配」のする方を選ぶ。気の向くままに。

この木の幹が目に入った時、一瞬「?」となった。急にアートが出現したような気がした。無骨で、やたらでかい茶色っぽい物。「ナンダ?」って感じで、視線を滑らせていったその次の瞬間、ひゃ~と、うなってしまった。巨木だった。

この根のたくましさ。自分の目の高さでは地面に隆とした幹しかみえない。自分の首をほぼ90度になるまで反らしてやっと、樹の先が見えてくる。

あぁ、、、高~っ。

樹冠の広がりの先を一つ一つで目で追って確認しようとするがはっきりとは見えない。「いったいどのぐらいの高さがあるんだろう。」隣にある建物の階数を数えてみる。「え~っと、1、2、3、、、、9階か。お、こりゃすごい。」

各階からはこの樹がどう見えるのだろう。地上階からだと、どーんと揺るがない太い幹が自分の正面に見えるはずだ。ふむ、やっぱりこんな初夏の日には光に透ける緑が目に飛び込んできたら素敵だろう。葉がちょうど目の高さになるのは何階ぐらいだろうと、もう一度建物に視線を這わせる。おそらく、3階、いや4階ぐらいからだろう。そこからだと、ちょうどこの樹に顔を近づけてお話しができそうだ。

樹冠を上から眺め下ろそうと思ったら? 6階ぐらいがいいようだ。

頭の中で、各階からこの樹がどんなふうに見えるのか想像してみる。朝はどうか? 夕方はどうか? 冬はどうか。この樹は冬は全部の葉を落とすんだろうか。鳥も来るかな? 毎朝ベランダに出て、樹に「おっはよぉ~」と、心の中で言う。どんなに素敵だろう、、、、、。

その日の夜、ベッドにもぐりこんだ後も、この樹のことが気になった。この建物に住む人はただの住人じゃない。樹を守るために集まった住民だ。そして、樹に見守られながら生活しているコミュニティーだ。樹のことを互いに話しても話さなくても、みんなが樹のことを想う。みんな樹で繋がっている。そして、樹はみんなを見守っている。毎日。毎年。何年も。樹は人の何十年かの人生のスパンをはるかに超えて続いていく。

毎夜、寝床に入って目を閉じて、樹に「おやすみなさい。」と言う。その日の想いをゆっくり静める。ああ、この樹のコミュニティーの住人になりたいなぁ。。。



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