かなしばり
色々ライヴもやってお疲れ様、一日ゆっくり休んで心も身体も休息したつもりが、しっかり悪夢とがっつり金縛りにやられてしまった。昨夜のことである。なかなか眠れず、一旦起きて煙草を吸ったりラーメン食べたりして、夜中に再び眠ると悪夢を見た。まあそれは別に良い。不意に目を覚まして、といっても布団の中で目は閉じたまま意識が戻った状態、あぁ夢か、と思いつつ、薄目を開けると、きみが隣で寝ていた。
常夜灯だけの静かな部屋、自分は、彼女の方を向いて横に寝ており、彼女も同じ体勢、つまりこちらには背を向けて壁際の方に寝ている状態、今何時かな、もう少し寝るか、と思って自分は再び目を瞑っていたのだった。すると、きみがムクリと起き上がり、そのままリビングの方へスタスタスタと歩いて行った。別に気に留めることも無く自分は目を瞑っていたが、スゥーと寝息が聞こえたので薄目を開けると目の前には変わらずきみの寝姿があるのだった。先程と同じようにこちらに背を向けて寝ている。あれ?でも今、と思った矢先、リビングの方から蛇口をひねる音が聞こえてきた。誰?
その瞬間ギクリとして、幽体離脱とかドッペルゲンガーとか色んな言葉が頭をよぎる。そうして、リビングにいたきみ(?)がこちらに戻ってくる。スタスタスタ、って、近付く。ヤバいと思って自分は寝たふりをするが、背中越しに完全に誰かがいるのが分かる。むしろ覗き込んでいるような感じで、息遣いが聞こえる。幽体なのだろうか。こっちに反応すると危ないような気がした。意識ははっきりしている。これは夢だ、まだ夢を見ているのだ、と思っていると、ねえねえねえ、って幽体が背中越しに声を掛けてくる。そんで、自分の服をつまんで、グゥーっと引っ張ってきた。流石に抵抗しようとしたのだが、身体は金縛りで一切動かない。
昔何度か金縛りにあったことがあるが、あれは独特の恐怖感だ。意識が鮮明な分、身体が動かないという事実に怖くなる。そうして何とか必死に身体を動かそうとするものの、簡単にはいかない。それはつまり睡眠状態であるから。現実と思いきや、実はまだ夢の中で、だから、しっかりと目を覚まさなければならない。目の前でこちらに背を向けながら寝息を立てているきみに、頼むから起きてくれ、そして自分を起こしてくれ!と念じる。目は開くか開かないかの感じ、身体は動かないが指先だけ少し動くような気がする。体感では30分ほど、背中を引っ張る幽体と戦いながら、懸命に叫び、身体を動かそうともがいた。全身が痙攣状態となり、もうマジ勘弁してよ、ってこちらの意思と反して幽体の声は大きくなり、リバーブが掛かって、ねえねえねええええ、と部屋中に響き渡り、まるでどこかに連れて行かれるような怖さだった…。
突如、きみが目を覚まして、パッと振り向き、大丈夫?と言った。その瞬間、自分も完全に目を覚ます。フッ…と身体が軽くなり、動くようになった。幽体は消失したようだった。聞くと、自分は相当うなされていたらしくて、その声で起きたらしい。やはり悪夢だったのだろう。それにしてもあまりに地続きの状態で、起きてからもなお、夢か現か混乱していた。金縛り、ヤバかった、と安堵の深呼吸をすると、きみは、水飲む?と言って起き上がり、そうして、スタスタスタとリビングの方へ歩いて行った。
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