自作の冊子
昔からのお客さんで、遠くに住んでる人がいる。今は舞台に来ることも無くて、もう長い間会っていない。別に仲が良いわけでもなく、そもそも大して話したことも無い、名前と顔を知っているという程度の人なのだが、ただ時折、といっても本当に年に一度かそれくらいの頻度で、手紙と自作の冊子を送ってくれる。勝手な印象は、何となく退屈そうな暮らしっぷりで、溜め息混じりに日々をぐるぐるしている様子。冊子は完全な手作りで、最近あったことや今好きなもの、思ってることなどを自筆の文章で書いた紙、それはお世辞にも綺麗な字ではなく殴り書き、誤字脱字もあれば間違えた箇所を毛虫でぐるぐるしてたりもする。それら何枚かをコピーして折り、イラストや写真でレイアウトされた表紙に挟んでホッチキスで留めたような感じ。これが届くと、何故か妙に嬉しく思う。その冊子は友人何人かに送っていると書いていた気がするが、何故私にも送ってくれるのかは分からない。連絡などは特に無い。
昨日久しぶりに新作の冊子が届いて、表紙に5と書いてあったから5冊目である。「つい三日前に体験したことを覚えてるうちに書きます」という件の話は、やはり殴り書きだったが記憶を細かな描写で綴っており、リアルな熱気に迫るものがあって、面白かった。
彼女は確か同い歳だった気がするが、生存確認というか、まあ何とか生きてるんですね、と思う。昔、彼女が住む街でライヴをしたことがあって、それは偶然その街に住んでいた、というだけなのだが、多分今もそのときのことを、彼女は大切にしている。やがて私も、あなたも、どんどん年老いていくんだろうなと思う。
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何もいりません。舞台に来てください。