幽霊になっても
こないだ「ア・ゴースト・ストーリー」という映画を観た。交通事故で死んでしまった男が幽霊になって妻を見守り続けるという話。幽霊、つまりゴーストは、白い布で覆われており目のところが穴になっている、どことなく漫画的ビジュアルで可愛らしい佇まいなのだが、そのため表情も無く、勿論言葉も無く、ただそこにずっといるだけの存在で、だからとても切ない。残された妻を隣で傍観し続ける。大切な人に、伝えたいこと、伝えられないこと。
悲しみにくれていた妻もやがて普通の暮らしを取り戻す。月日を重ねると悲しみも薄れていく、それは残酷なのかもしれない。ゴーストは何も変わらず、いつまでも、ここにいる。妻には新しい恋人が出来る。そして、ふたりで住んだ家を後にする。引っ越しの日に、妻はこっそりメッセージを書いた紙片を部屋の柱の隙間に隠す。なんて書いたのかな。ゴーストはその紙片を取り出そうと、カリカリカリカリ、柱をほじくる。ほじくるけど、取れない。何年も何年も…。途中から時間軸がぐるぐるして、最後はハッとする物語だった。
あぁ、私もいつか幽霊になるよな。幽霊になっても、ここにいようかな。幽霊になっても、そばで見とこうかな。
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