かさのしずくとり
私は傘立てが苦手だ。
スーパーの前の電柱に、犬がリードを結ばれて留守番をしていることがある。傘立てはあれみたいだから。きっと、留め具でギュッとくるまれておとなしくなり、ジトジトと雨水を落としながら心細そうに待っている。隣のやんちゃな傘がくるまれずにパサぁと開いて他の傘にしずくを垂らしていたりなんかすると、うちの傘は大丈夫かと、幼稚園に子を預ける親のような気持ちになる。すぐ戻って来るからな。知らない人に付いていくんじゃないぞ。
「傘ぽん」も得意じゃない。
傘ぽんは、傘を通すとガッシャンッと自動でビニール袋に包んでくれるあれだ。彼は単純作業も厭わないまじめなヤツなのだが、決まってニコイチででっかい青色のポリバケツといる。私はコイツが苦手なのだ。120Lの巨体で入り口にたむろし、使用済みのビニール袋を溢れさせる。「おれ悪くないから。」と見て見ぬふりをする。
私がすきなのは「かさのしずくとり」だ。
「かさのしずくとり」は、モップとモップの間に傘を擦り付けて雨水を落とすやつだ。
通り雨に遭って家に着いた子を、
「大変だったねぇ」とタオルで包むみたいで安心感がある。
きっと傘本人も、
「自分で拭けるよ!」とか恥ずかしそうに言いながらも喜んでいる。
全国の商業施設の皆様、おそらく10万円くらいするのですが、できたら「かさのしずくとり」が良いです。よろしくお願いします。