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We Are Visitors!

 観光地に名物はつきものである。しかし、ときにあまりにも強引すぎる名物が散見されるので、要注意だ。商業的な意図が見え隠れし、どう頑張って解釈しても土地の名産や、歴史の由来といったものにたどり着けない、言ってしまえば、日本中どこででも売れるものである。伝統的な「エセ名物」に木刀が挙げられる。修学旅行生がオカンを困らせる事案が数多く報告されている。修学旅行前には、おやつの議論よりも、「エセ名物」に騙されないための授業を設けて欲しい。

 高校時代、修学旅行で行った台湾でも、私の友人が被害に遭った。帰りの空港の免税店で、彼は何を血迷ったか腕時計を買っていた。しかも、でっかい方位磁針がシリコン製の真っ赤なベルトに乗ったような姿で、文字盤全面が台湾国旗になっている。ベルトが磁石式で、装着する際にはパチンッ!と音を立てて腕に巻きつく。ライダーにでも変身して、バイクで帰国するんじゃないかと周囲を動揺させた。彼は両替した通貨を使い切る焦燥から、判断能力を鈍らせてしまったのだ。

免税店から出てきた彼に「何買ったん?」と友人たちが尋ね、彼は「え、これやで。」と京都帰りの八ツ橋のように披露した。友人たちが「へぇ〜」と言いつつ、本人も含め徐々に疑問が噴出したあの空気感が忘れられない。

 開き直って、なんでも抹茶味にするのも良くない。最近はあらゆるものを緑にして苦くすれば良いと思われている。企業は緑化運動やCSR活動と勘違いし始めている。先日訪れた観光地近くの小売店は、かつての甲子園球場さながら緑化整備がされていた。今にも阪神園芸のおっちゃんが出てきそうである。

愛おしいグリーンフードたち
抹茶フェアに紛れる下段
緑に乗じたメロンはかなり図々しい。


 また最近よく見られるのは、3000円〜5000円で、和牛のサーロインを焼いて串に刺し、ウニやイクラを乗せた下品な食べ物だ。「名物!うにいくら和牛串」と書かれた筆字に心奪われる。かつてのパリサンジェルマンもびっくりのオールスター。もはや日本人でも食べたことのない謎の料理だ。

 観光地に行くと、ついテンションが上がって思考が停止してしまう。私も、異国から日本旅行に来たとして、グリーンフードに真っ先に飛びつく自信がある。何も考えずにピーマンまでお土産にしそうである。だから旅行に行くときは、なるべく立ち止まって、決して決まった一色ではない、その場所の色豊かな姿に気づくようになりたい。緑一色の京都某所を添えて。

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