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ゆるりめぐる大人の修学旅行 その1

午前5時、眠気と寒さをこらえながら服を着替えてメイクをする。
珍しく友人達と旅行をすることが決まり(普段は一人旅が多い)一泊という短い時間の間に出来ること行けるところどっさり詰め込まれたので、まだ空が暗い中を出発することになったのである。
決して嫌々ではない。が、めちゃくちゃ楽しみというほどでもなかった。

同世代の女子が行きたいところといえばオシャレなカフェや写真映えするスポット、可愛いがあふれている雑貨屋さんなどなど。
興味がないわけではないけれど、オシャレなカフェより美味しい郷土料理が食べたいし、可愛い雑貨屋さんより歴史建造物の方が好き。
写真はあまり撮らないし(撮りたい気持ちだけはある)、人があふれた街中も嫌いではないけれど旅行なら自然豊かな場所でリフレッシュがしたい。

そんなことを考えながら友人達がせっせとネットや旅行雑誌を見ながらプランを立てているのをぼーっと眺めていた。
ありがたいことに現地のマップや駐車場、お店の情報やおすすめの商品まで事細かに調べてくれる友人がいたので当日のルートはあっけなく決まった。

自分の仕事は当日の車の手配と、車内で流すBGMのCDを作ること、それから宿泊の予約をとること。
楽なことばっかで若干の申し訳なさはあったけれど皆が行きたいところにくっついて行ければいいか。と呑気に構えていた。

行き先は広島。
大人の修学旅行になるね!と友人のひとりが言った
確かに一人や恋人と行くことはあるものの友人達と行くのは小学校の修学旅行ぶりではなかろうか。

修学旅行というのは学生にとって一大イベントであり、友人とのお泊まりでちょっと大人びた気持ちになったり、好きな異性との距離を縮めたり、夜に内緒話なんかして枕投げだの肝試しだのきゃっきゃうふふがぎっしり詰まったの何よりの思い出になるもの。

しかし自分にとっては悪夢のような不愉快極まりないイベントである。
なぜなら当時は親しい友人もいない上に教師という人間が苦手だった。
自分が精神的に幼すぎるのか自我が強すぎるのか、その両方だと思うが、学校嫌いが甚だしく遅刻常習犯な上に宿題もしない、一番前の席で爆睡、授業を抜け出したり途中で帰ったり、ランドセルが嫌いで好きな鞄で行ったりと協調性ゼロの問題児だった。
なのでもちろん修学旅行なんて行きたくなかったし、家でTV見たり本読んだり近所の河川敷散歩してる方がまだ有意義な時間に思えた。

でも休むわけにもいかずしぶしぶ行ったものの遊園地も原爆ドームも博物館もはたまた旅館でもひとりぽつんと過ごし誰とも口をきかずに二泊三日が過ぎたが、人に気をつかって無理している方が苦痛だったからまぁいいかと開き直ったフリをして、ちくりとした寂しさを抱えながらクラゲの様にふよんふよんと過ごした。

その時の情景と感情がじわじわと蘇ってきたからか今回の旅行に対してあまり乗り気になれなかったのかもしれない。

でも大人になって気の合う友人に恵まれてその友人達が旅行に誘ってくれたのだ。
ありがたいことだし、この先なかなか行ける機会も減ってくると考えたら行ってみようと思えた。

朝は苦手だな。
とぼやーっとした視界のまま洗面所に向かいコンタクトを入れて目が潤うと同時に目を覚ました。
手早く準備を済ませ皆が我が家に到着するのを待った。
集合時間ぴったりにぽよーん!と携帯が鳴った。
確認もせず家の駐車場に行き無事合流を済ませ車に乗り込む。
早速用意したCDを流しながら皆で歌いながら出発した。

その2に続く。

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