【しまね女子ブログ】 小坂まりえvol.3
今回は、移住したおかげで“おいしい世界”が広がったよ!という話をしたい。
じゃーん。
これ、何だか分かりますか~?
イカロケット。惜しい(?)。答えは「シマメ」です。
正確には「とれたてシマメの煙突焼き(を、かじって旨さに悶絶したとこ)」
シマメとは、本土で言うところのケンサキイカ。隠岐ではシマメと呼ばれます。
寒さが深まるとともに身が厚くなり肝に脂がのってくる。つまり、冬に旨くなるイカ。
「隠岐の冬はシマメとともに来てシマメとともに去る」って某漁師さんが言ってました。
そして「煙突焼き」とは。漁船の煙突にペタリと貼りつけて焼く料理法である!
この日は取材の一環で、海士町の崎地区にある定置網の漁船に早朝から乗船。もちろん極寒。軽く吹雪。寒さに凍える取材班をねぎらおうと、漁師さんがとれたてのシマメを煙突で焼いて、ほらよっ!!と出してくれたのですね。神・・・!!
(↑)出航のときはまだ真っ暗。とにかく寒かった…
(↑)網を引き揚げる様子
隠岐へ移住して、「こげなうまいもんがあったんかー!」と目から鱗が落ちたことは何度もあります。このシマメも隠岐で知った美味の一つ。東京では食べたことありませんでした。初めて食べた感動というよりは、イカってこんなにおいしいものだったんだ!?という驚きでした。
イカについては種類の多さにもビックリ。夏は白イカ(ケンサキイカ)。季節のうつろいとともに、アオリイカ、寒シマメ、テナシ(ヤリイカ)、春シマメ・・・。
(↑)水揚げ直後のシマメたち。輝く生命力、美しい…(そしておいしい)
ワイルドでシンプルな食べ方もいろいろ教わりました。冒頭の煙突焼きも然り。
塩で茹でてまち針でほじくり出して食べるとか(例えばニイナという貝)
浜辺で石で割ってそのまま生で食べるとか(例えばウニ)
ズボラというんじゃなくて、シンプルな食べ方だからこそ一番うまいってやつ。
(↑)ニイナ。旨い!ビールに合いまくり。近年は少なくなってしまい非常に残念…
海士町にある知々井(ちちい)という漁師町の、漁師の女将さんにシマメのおすすめの食べ方を聞いたところ、「夏の白イカは刺身や一夜干しがいいけど、寒シマメは断然丸焼き!ガスレンジでそのまま焼いて輪切りにして醤油で食べたら最高!」
え~、そんな簡単でいいのお~、と早速やってみたところ、紛れもない真実でした。
何だこれシンプルなのに劇的おいしい!!
丸焼きしたてを勢いよくブツ切りにして肝ごと食べるって、ちょっと興奮。
そうそう丸ごと焼くと言えば思い出すのがバーベキューです。
隠岐ではBBQがド定番ですが、移住して初めてのウエルカムBBQでイカやアジやタイが丸ごと焼かれているのを初めて見た。
「これ、残酷焼きって言うんだよお~」ってヒヒヒと笑った男子は誰だったか・・・
あの時はじゃっかん引いたけど(笑)、今ではもう当たり前。うん、丸焼きはおいしい。
ちなみにシマメは、春が近づくと身が小さくやわらかくなります。シマメの食感の変化から、季節のうつろいを感じるというわけです。
脂ノリノリで肝ぱんぱんの寒シマメに対して、小さくて可憐で、桜が咲く頃だから“花イカ”という呼び名もある春シマメ。その春シマメの食べ方で最近教わったのは、身のやわらかさと薄さを活かした「イカしゃぶ」ですって!春が来たら試さねばなるまい。
このように、季節ごとにはずせない食べものを少しずつ覚えていくのは島暮らしを重ねる楽しみの一つです。
春になったらワカメは必食ですが、私の場合はワカメこそ「おぬし、実体はこんなだったか!!」と思わず笑っちゃった食材。島の人は長い棒の先に鎌をくくりつけて岸壁からワカメを刈るんですが、刈ってそのまま「ほれ!やる!」と渡されるワカメはめちゃめちゃおおきい。2mはあろうかというそのモリモリ具合にまず笑う。そして初めて見たワカメの根元、いわゆる「メカブ」の存在感よ。こげにがいな(=こんなにおおきい)ものだとはー!!
ワカメのしゃぶしゃぶも、この島に来るまで未体験でした。熱湯に浸した途端にパッと鮮やかなグリーンに変身するさまに「うわ!?綺麗!」と思わず奇声が。それ以来私の中では、ワカメしゃぶしゃぶの目が覚める緑は春の色。
ナマコ、山菜やタケノコ、ベコ(アメフラシ)…
暦に応じた島らしい素材や食習慣は山ほどあるので書き切れませんけども、こんなにも細かな季節のグラデーションを視覚や味覚で感じられる暮らしは、つくづく贅沢です。
寒シマメの煙突焼きや、春に刈るワカメのしゃぶしゃぶに、私はなぜ感動するのか。
おいしさは勿論。どストライクの旬だし、鮮度が桁外れであることからも味は約束されている。でもそれだけじゃないんですよね。
加工されてないぶん自然のエネルギーがそのまま入ってくる。自然のパンチ力、これも大きい。でもまだそれだけじゃなくて、やっぱり「人」や「暮らし」の要素があると思うんです。
「うまいぞ、ホレ食え!」って破顔でずいっと渡される、原始人みたいなシンプルなやり取りが嬉しいというか、なんだか安心します。島で連綿と積み上げられてきた土着民の食文化、生きる営みの核心部分に、ヨソ者の私も触れさせていただきました、“こっち側の世界”に入れてくれて有り難うー!という感じでしょうか。(言葉でうまく説明できず表現者としての限界を感じて悲しい。涙目)
いや考えすぎかな。もう単純に、お金をかけなくても胸張って「豊か~!」「贅沢~!」と言える、その喜びですかね。
ないものはない、という海士町のキャッチコピーが腑に落ちる瞬間です。
(↑)夏の海辺で食べたアワビめし。漁師さんがとってくれたアワビを海水で炊き込んで。最高か!
こっげなうまいもんを味わえるなら食べまくって太っても悔いなし!…とは言えませんが!(東京時代の体重に戻りたい~と思うこと13年…←1年目にみるみる太った人)
身体がたるまないようにちゃあんと運動しつつ、旬のアイテムをとりこぼすことなく爆食を続けたいと思います。
第3回、現場からは以上です!
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【名前】小坂まりえ
【移住市町村】隠岐郡海士町
【UターンorIターン】Iターン
【移住前の居住地】東京都(三重県出身)
【年代】4●歳
【お仕事】仕事はフリーランスでライター業をメインに編集やイラストなど諸々
【趣味】本とランニングとフラワーアレンジ。
島の植物を使ったリースやスワッグを作るのは至福の時間。
【Love shimaneとしてひと言】
島根の好きなところは、海が美しいこと、地酒が美味しいこと、人が適度に少ないこと、暮らしの中で神さまの存在を意識する機会が多いこと等々。