自分のトリセツ「はじめの一歩のために」
夢を叶えるために必要なこと
前回の記事「コーチングが行う3つの支援について」では、①目的地、②現在地、③はじめの一歩、の重要性について触れてみました。
人生で何かを成し遂げるということは、旅行と非常に似通ったところがあり、最初に目的地を決めるということですべてが始まります。(ただし、ミステリーツアーのような目的地の分からない旅は除きます。笑)
しかし、目的地が決まったとしても、自分がどこにいるのかが分からなければ、目的地にたどり着くことは決してできません。
現在地が明らかになって初めて、目的地へ向かうルートは決まります。
コーチングの場面においては、クライアントが今に至るまでの全ての記憶が現在地に該当します。
例えば、幼少期の経験であったり、繰り返される現象、両親からの信念の植え付け、教育や宗教などが、「今の自分」という存在へどのような影響を与えてきたのかを理解することが、現在地を理解する足掛かりとなります。
この現在地というものについて、フランスのロマン派の詩人、劇作家のアルフレッド・ド・ミュッセは次のような言葉で表現をしています。
誰もがそれぞれのめがねをかけている。しかし、そのめがねのレンズがどんな色なのか、ちゃんと知っている者はいない。
アルフレッド・ド・ミュッセ
目的地と現在地がはっきりすれば、人は夢へのはじめの一歩が踏み出せるはずなのですが、現在地を理解するということは、実はそう簡単ではありません。
そこで、とても重要となるのが、「ジョハリの窓」という考え方になります。
「ジョハリの窓」とは、心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが発表した「対人関係における気づきのグラフモデル」のことを指していますが、自らの「自己開示」と他者による「フィードバック」により、人は「今の自分」を深く理解できるようになります。
ですから、人が成長し、夢を叶えるという段階においては、自己開示ができる安心・安全な場所と、愛と温かさを伴ったフィードバックをしてくれる仲間の存在が必要となるのです。
そのように自らの現在地を明らかにしながら、目的地に向かうための「はじめの一歩」を踏み出すことで、人は自分の欲しい未来を手に入れることができるようになっていきます。
はじめの一歩を阻むもの
けれど、その「はじめの一歩」がなかなか踏み出せないという人が多くいるのも事実です。
そのことをコーチングの業界では、「心のブレーキ」とか「心のブロック」などと呼んでいます。
「心のブレーキ」や「心のブロック」は、不安や恐れといったネガティブな感情を生み出すため、はじめの一歩という行動を起こさせないように働きかけます。
仮に一時的に行動ができたとしても、「心のブレーキ」や「心のブロック」が解消されていない状態だと、長期的な成果につながるということはありません。
自動車の運転に例えるのならば、ブレーキをかけながらアクセルを踏んでいる状態であり、山登りに例えるのならば、重い荷物を背負って山道を歩んでいる状態なのです。
ですから、目的地と現在地を明らかにし、はじめの一歩を踏み出すためにも、「心のブレーキ」や「心のブロック」はしっかりと解消していく必要があります。
ただし、「心のブレーキ」や「心のブロック」の話をしていると、まるでそれが悪者であるかのように思われたりしますが、実は、「心のブレーキ」や「心のブロック」は、肯定的な意図によって生み出されたものだったりします。
つまり、それらを持つことによって、何かしらのメリットがあるということなのです。
どういうことかと言うと、人には恒常性(ホメオスタシス)という機能が備わっており、「はじめの一歩」という、現状からかけ離れたことをしようとする行動に対し、元に戻そうという力が同時に働いてしまうのです。
現状に戻るということは、居心地のよい、馴染み深い場所に戻るということを意味しており、本能の観点からみると、とても当たり前のことでもある訳です。
このように、人が夢を叶えるというプロセスにおいては、どんな夢を叶えたいのかという「目的地」を明らかにすること、どんな自分として夢を叶えるのかという「現在地」を理解すること、そして、現在地から目的地へと向かう「はじめの一歩」を踏み出すことが重要であり、そのはじめの一歩を踏み出すためにも、「心のブレーキ」や「心のブロック」は解消していく必要があります。
次の記事では、「心のブレーキ」や「心のブロック」の具体的な解消法について触れてみたいと思います。
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