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『東京ウィンドオーケストラ』★★★☆

洗いたての白シャツに袖を通すような、小ざっぱりと気持ちが良いコメディです。

世界的に有名なオーケストラを、地元の島に招くはずが、当日やってきたのは、そのオケと、一文字違いの素人楽団。

”人違いが巻き起こす騒動”という、古今東西、繰り返し使われてきた定番のプロットを、奇をてらうでも、大袈裟にするでもなく。素直な展開を、起承転結、順に丁寧に積み重ねていく。

演出にしても、洒脱さや目新しさはありません。それでいて、まったく退屈しないのは、一つにさっぱりとした脚本。人間関係や感情についての余計な説明、語りが無い。物語が、突っかかりなく、綺麗に流れていく。

そして、役者。まず主役の女優さんがとてもいい、中西美帆さん。よく言えばクール、悪く言えば無気力。小役人的な事なかれ主義者で、少し身勝手な主人公を演じていますが、本人の人柄が出ているのか、細い針金が一本通っているような芯が感じられ、観ていて心地良い。

それは他の俳優さんも同様。皆が皆、小さなエゴを持った、大なり小なり自分勝手なキャラクターなのですが、演技に”ぶれ”も”だれ”ない。

何とか今日一日を誤魔化したい主人公。

島民にプロの吹奏楽を見せつけたい企画担当。

下手でも、またと無い機会。偽物とは言え、大舞台で演奏がしてみたくなる楽団。

そんなエゴの小競り合いも、嫌味が無く、小気味よいテンポがある。


物語の舞台でありロケ地は屋久島ですが、スクリーンに映されるのは、豊かな自然ではなく、役場や地方ホール、または中学校。それでも、湿った森の匂いのような”土地の空気”が、屋内でも漂っている、それが感じられる気がします。


絶賛を触れ回るような映画ではありませんが、稀に見る、休日の心地よいひと時を演出してくれる映画だと思います。

(@元町映画館 2017年2月26日)



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