第三章 人間の顔とは何か?-003
あご、腸そして脳へのバーター取引とは
人間の頭蓋骨とは、脳とあごを収めているところです。
そこに、人間はあごで直接捕食するための五感を配置しました。
(目、耳、鼻などです)
効率的に捕食するために、五感からの情報を処理するコントロールセンターとしての機能を、脳に大きく求めるようになったのです。
実のところ、これら五感は私たちのあごを中心とした
顔下3分の2のための付属器官にすぎない、という話をご紹介しました。
直立二足歩行という他の動物の進化の歴史にないプロセスと、
肉食や火の利用による食の軟化がリンクすることによって、
この硬い頭蓋骨を変形させることさえ厭いませんでした。
(実のところ、この一部の変化は現在も進行中です)*1
簡単に申せば、あごと言うフードプロセッサーの大きさを
どんどん小さくして、頭蓋骨の中の脳を拡大させたのです。
これにより頭蓋骨全体の形をも変形させるという、
バーター取引を行なったのです。
化石学者は、頭蓋骨の脳に占める内容積を調べると、
その当時どのような暮らしぶりをしていたのか?を、
言い当てることができると申します。
人間の進化と脳の内容積、脳の拡大と集団化、集団化による
食べて生きる生活様式の向上には、
それぞれに相関関係があると報告されています。(面白いですね)
しかも脳の拡大は、人類の集団化と道具の開発を後押ししたのみならず、共に食べて生きると言う人類独自の生活様式を新たに作り始めることに繋がっていくのです。
*1 R. Corruccini. How Anthropology Informs the Orthodontic Diagnosis of Malocclusion’s Causes. Lewiston, New York: The Edwin Mellen Press. (1999); D .E .Lieberman,, et al. Effects of food processing on masticatory strain and craniofacial growth in a retrognathic face. Journal of Human Evolution. (2004)46:655-77.