第四章 脳はお馬鹿さん、腸は?-005
5_あごで噛めない現象を考える
あごで噛めない現象を生じる根本原因は、
不正咬合を伴う虫歯と歯周病にあると、私は仮説を立てています。
歯科医療の範疇から発生する、これらのささいな現象とも思われている
疾患は、りっぱな(?)生活習慣病の一つです。
ちなみにその一つである歯周病は年を重ねるほどに、
この罹患率は他の疾患に対し群を抜いて高いことが特徴です。
不正咬合とは、歯並びという見た目の問題にすぎない。
虫歯や歯周病は歯ブラシによって抑制することができる。
さらに、いまだ定期検診を受けておけば何とか対処ができる(?)と
信じ込まれているようです。(教育とは恐ろしい代物です…)
まさかこれを進行させると、人生50年後には不可逆的な
不健康問題に結びつくことになるとは、
未だ気づかれていないことが不思議でなりません。
つい数十年前の人生50年社会の終盤にはどんどんと歯を失い、
歯科医をウインドーショッピングするかのように入れ歯をたくさん
拵(こしら)えていました。
それをポケットデンチャーとなぞらえた現象は、社会問題化しました。
とうとうこれらの治療への参加に飽きた人が、
テレビのインタビューにこのように述べたのです。
「別に歯茎でも噛めるから、入れ歯など要りません」と。
マスコミはこの発言を世間に流布し、歯科医の存在意義を少なからず低下させたことは間違いありません。
あごで噛めない現象を抱えた視聴者であるその他大勢の人々は、
このことによってある種の幻想を抱いたことでしょう。
『なんだ歯科治療にあくせく通わなくても、まだまだ生きる余地はあるのだ、と』
私はインタビューに答えた人の娘さんたちが、
毎食ごとに長い時間をかけて丹念に具材を細かく切り刻む姿を
痛々しく感じたものです。
そのうちの一人は質問にこのように答えました。
「私たちが努力を惜しまなければ、お母さんたちは食べて生きることができるのです」と。
現代人の腸は、食材探しをしたり料理法を駆使したとしても、噛まずに飲み込んだ食べ物を消化吸収するだけのチカラを持ち合わせていないのです。
このため噛めなくなれば、日常の食生活から栄養やエネルギーを摂取することができません。
この状況下に、さらに何かしらのストレス(例えばもう一つの生活習慣病)が付加すると、腸の能力は低下し、免疫力も低下することによって感染症に罹患する恐れを生じるのです。
『食べ物にありつけないサバンナの狩猟民族より、ひどい状態となるのです(失礼…)』
なぜなら人間の進化のプロセスの中で、
あごで噛めるという条件のもとに、腸の長さを短くしたからです。
(これ重要です)
腸から体を動かすためのエネルギーを取り込めなくなれば、
運動に要する機能を低下せざるを得ません。
ついには寝たきりとなる理由は、この延長線上にあるのではないか?と、
私は密かに憶測をしています。
(人間の近くに捕食動物がいなくてよかったですね…)
医療は自然淘汰の対象とならないように、チューブ付けによって栄養とエネルギーを提供するしかできませんでした。
やがて病院での病床はこれらの慢性病患者によって溢れかえり、
労働人口を支える人々の急性疾患に対応することができないという、
本末転倒な現象をあらわにしたのです。
このことも社会問題化しました。
なぜなら急性患者を乗せた救急車が、幾つもの病院から受診を拒否されるという「たらい回し」という現象を、マスコミは映し出したからです。
政府はこの対策として新たに訪問介護の世界を作り、
寝たきりの居場所を自宅や施設へと移し換えました。
しかしながらこのような社会的な大改革をおこなったにも関わらず、
人の世話になる存在が人の役に立つ側に戻ってくる現象は、
いまだに見ることがありません。
(なぜなのでしょう…?)
つづく
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