第六章 恩返しはどこへ行く?_0014
014.ボランティアの本質
治療を終えた、ある患者から
この本を書いて欲しいと懇願されました。
「専門家である先生には、ちゃんと説明する義務がある!」と、
かなり痛烈な批判とともに、心情を述べ始めました。
なぜか?と申せば、
自分の受けた治療を友人に紹介しようと試みるも、外国の友人は
「そんな話を聞いたことがない。信じられない」とつき放ち、
理解をしようとはしなかったそうです。
親切心が仇となって返ってきたことに、
憤懣やりきれないと、
心のうちを打ち明けました。
(確かに、いくらインターネットを
駆使して世界中から検索を入れたとしても、
この情報を抽出することができないことを私は知っています)
以前からさまざまな患者から
「私と先生との間だけの共有財産にしておくだけでは勿体無い」と、
指摘を受けてはいました。
実のところ、私はこの内容を第三者に具現化させることは
難解だと考えて、二の足を踏んでいたのです。
この方は高等教育で教授する方であり、(知っているはずなのに)
このような難題をさらに付け加えたのです。
「専門家である先生が本を書いてくれれば、
これを読んでね、と私は渡すだけで済みます。
できれば中高校生の一般教養レベルで
理解できるように書いてください。
決して難解な専門用語などを使わないでください。
決して専門家用に書こうなどとは思わないでください。
しかし引用文献は世界的なものから抽出してください。
それと英語に翻訳して、彼らに論理的に理解のできる
読みものにしてください」と、
なんともまあ壮大な申し出です。
(私は学者として食べているわけではないのに!)
さて、この申し出は、
あらたなる私のモチベーションを上げる
きっかけとなった気がしてなりませんでした。
それはなぜか?と申せば、
恵まれない子たちを取り巻く周辺環境が、
この10年ほどで急激に良くなり出していることにも起因しています。
例えば
高等教育を受けさせるための
措置費用が捻出されるようになり、
これに連動して大学進学の無償化が開始されました。
誰もが自分のために努力をすれば、
願いが叶うという道筋が作られたのです。
さらに周辺を取り囲む大人たちからも、
子どもの高等教育を受けさせる
雰囲気づくりが始まりつつあります。
また、政府は成年年齢を18歳に引き下げ、
選挙権を与える制度に切り替えました。
これらの現象は、
より高度な社会還元できる存在を
生み出しやすくすることでしょう。
さて、
私でなければできないボランティア活動に、
より注視すべきではないか?
という意識が立って来ました。
それにしても、
まさかその問題解決のヒントが、
突然と生じたハプニングから生まれることになるとは
思いもよらなかったのです。
(2020年の新型感染症の到来です)
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