第四章 脳はお馬鹿さん、腸は?-006
6_体の中の植物と動物
解剖学的に、体を2つの要素から見てみたいと思います。
人体の根幹となる部分は、植物由来の要素である腸に始まりがあります。
腸の入り口は口、そして長いチューブ状の腸、出口は肛門です。
そもそも植物は、空気、水、無機物と太陽エネルギーなどを取り入れることによって、体の中から生命の源を作り出す生物です。
これに対し植物を起源とする動物は、
外部からのエネルギーを取り込む仕組みを体の中に作りました。
自らを養う力を持たない動物は、
この植物由来の要素にあごと言う捕食装置を作り、動くことを始めました。
動物の進化のプロセスの中で、泳ぐ(魚類)、のたうちまわる(爬虫類)、
飛ぶ(鳥類)、歩く(人類)という動きにバリエーションを作ったのはこのためです。*1
このことを可能にしたプログラムが、五感ー脳ー運動という仕組みです。
なぜわざわざこの2つの仕組みを作ったのか?と申せば、
効率良くあごで直接捕食し、腸から必要なエネルギーをとり出すためです。
動物学者が子どもの質問に答えるという話を、ご紹介しました。
あごに機能障害を生じると直接捕食することはできなくなり、
生きることができません。
あごで直接捕食できなくなった動物は、
食べ物からのエネルギー供給を閉ざされ、あっという間に動けなくなり餓死するか、捕食者に狙われる存在となってしまうのです。
一般動物の集団の中で、運動機能の劣った年を重ねた動物と子どもが狙われやすい理由はこのためです。
*1 M. Wilkinson. Restless Creatures: The Story of Life in Ten Movements. Icon Books. (2016) 「脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか:生き物の「動き」と「形」の40億年」 マット・ウイルキンソン著 神奈川夏子訳 草思社 (2019年)