経営者からのご相談も、聴くことから始めれば大丈夫 ~更新講習で「セルフキャリアドック」について学びました~
「経営者への提案って、結構キャリアコンサルティングと共通点が多いんだな……」
セルフキャリアドックという施策について中小企業の経営者に説明し、導入を提案するという演習に取り組んだときに、そんなことを感じました。
一方で、一緒に受講しているひと(=私と同じキャリアコンサルタント)たちからは、どうやって提案したらいいか分からない、難しいという感想もチラホラ聴こえました(みんな謙遜していたのかもしれませんが)。
簡単に状況をお伝えしておきます。
これは先日、初めてキャリアコンサルタントの更新講習を受講したときのことです。
キャリアコンサルタントは、資格の更新のためには有効期限の5年間の間に所定の講習の受講が義務付けられています。適切な知識・技能の維持のためです。
私は2021年5月から2026年5月までが有効期限なので、それまでに30時間の技能講習と8時間の知識講習を受講する必要があります。まだ焦るような時期ではありませんが、受けられるときに無理なく受けておこうと思い、2年経った今年から、ボチボチ受けることにしました。
(↑↑一応参考情報としてリンクを貼っておきます↑↑)
初めての更新講習、どのテーマの講座にしようかいろいろと悩んだのですが、今回は『セルフキャリアドック』にしました。
講習では、セルフキャリアドックの求められる背景や導入の意義、具体的な施策などを講義で学び、ある中小企業のA社のケースでのセルフキャリアドック導入について演習に取り組みました。
冒頭の「経営者への提案って、結構キャリアコンサルティングと共通点が多いんだな……」という私の感想と、他の受講者の「分からない」「難しい」という言葉とは、この演習の中での話です。
この演習では、社員のことで課題を感じている中小企業のA社の経営者がセルフキャリアドックのことを知り、詳しく話を聴きたいということで呼ばれたキャリアコンサルタントが経営者にセルフキャリアドックの説明と提案をします。
もちろん、セルフキャリアドックの意義や導入の方法、具体的にどういったことをやるのかを説明することも必要かもしれません。実際、演習での課題は、そういった設定でした。
でも、そこで「ありがとうございます。それではセルフキャリアドックについてご説明しますね。セルフキャリアドックというのは……」と言うわけはないんですよね。
そもそも、その会社に何が必要なのか、相談開始時点では、相談してきた経営者も相談されたこちら(キャリアコンサルタント)も分からないはず。
例えば、若手が定着しないことを問題だと感じているのなら、採用する若手の側に問題があるのか、採用した若手を受け入れた管理監督職や先輩の側に問題あるのか、現場で具体的に起きていること、交わされている言葉を確かめないことには、キャリアコンサルタントも経営者も適切な課題を設定することができません。
若手が定着しないということにセルフキャリアドックが効く可能性は低くないと思いますが、本当に必要なのは管理職や中堅職員へのマネジメントの研修だったり、傾聴やコミュニケーションの研修かもしれません。もちろん研修ではなく、彼らへのキャリアコンサルティングや評価制度の運用などが効く可能性もあります。
それこそ聴かなくては分かりません。
エドガー・シャインの「プロセスコンサルテーション」そのものの場面です。
これまで一度も経営者への提案の練習なんてしたことがありませんでしたが、この「プロセスコンサルテーション」を参考にキャリアコンサルティングとの共通点(以下の3点)を軸に展開することを考えれば、経営者への提案も”未知のもの”ではなくなります。
ただし、専門家として経営者に提案や、ゆくゆくは助言などをしていく立場であれば、キャリアコンサルティングとの違いも現れてきます。
例えば、キャリアコンサルティングでは助言はあまりせず控えめ、指示はほとんどしないはずですが、今回の演習でのキャリアコンサルタントはセルフキャリアドックの導入のためのコンサルタント的な立場でもあるので、組織に対してつまりは経営者に対してはある程度確信を持って助言や指示をした方がいい場面もあるはずです。
また、具体的な研修メニューであったり、社内でのキャリア相談の回数や対象の設定などについては、キャリアコンサルタントから提案するのが自然です。
ただ、いずれにしても、社員の育成やモチベーション、離職といった問題に悩んでいる経営者からの相談を受け止めるのもキャリアコンサルタントの役割。
そして、そこではキャリアコンサルタントが専門とするキャリアコンサルティングの技術が使える部分がかなりあり、「経営者からの相談にどう対応したらいいか分からない」なんて逃げ腰になる必要はなったくないということ。
何故なら、個人相手のキャリアコンサルティングも、経営者からのご相談も、すべては現時点の「分からない」状態を認め、相手の言葉に耳を傾けることから始めればいいのですから。
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