センパイ著者にききました#03/後藤好邦さん④(最終話)
2月に初の単著『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』を出版した私、島田正樹が、同じ地方公務員として先に本を出版している「センパイ公務員著者」にインタビューをするシリーズ。
三人目は、山形市に勤める後藤好邦さん。
後藤さんがどのようにして日々原稿の執筆をされているのか、また、どのような想いで「ネットワーク活動」に取り組まれ、将来に向けてどのようなビジョンをお持ちなのかお聴きしました。
◆誰でも本を書く資格はある
―― 私は本を書いている時も本を出した後も、毎日ブログを書いていても、「私にこれを語る資格があるのかな」と考えることがあります。後藤さんは、そういう感覚はありますか。
後藤さん:本を書く資格があるかっていうと誰でも資格はあると思うんですよ。特に他薦であれば。編集部から依頼を受けたりとか、誰かからその編集部の人に紹介をされたとか。その時点で執筆する資格がある人だって認められたと思います。あとはその期待に応えるか答えないかということだと思うんですよね。
本を出版するプロから選ばれたということであればそれは資格があるし、その頼まれごとはしっかり自分を資格者として認めてくれたことへのお礼として原稿をお届けするっていうのが大事なことだと思っています。
逆に自分に課せられるものもあると思っています。特に、書いた後の読者からの評価というのは大事だと思っていて、「言っていることとやっていることが全然違いますね」と言われないような生き方をしないといけないなと思っています。本を書くことによって自分への戒めにもなりますね。
講演で好き勝手話したことって、聞いている人の心に記憶としては残っても記録としては残らないですよね。それと比べると本の場合、記録として残るので、「こんなこと書いているのと今の行動って全然違いますよね」と言われたら、何も言い返せませんよね。
だから、せっかく資格者として選んでもらったのであれば、最後までその資格者として居続けなければいけないというプレッシャーを自分に課せられるということ。本を書くというのはそういうことかなと思いますね。
―― 私も最近そのプレッシャーといいますか、戒める空気はひしひしと感じています。
後藤さん:ちょっとしたことでも、例えば仕事が降ってきたときに、できない理由を言っていると書いていることと違うわけですよね。だからその仕事がうちのセクションの仕事じゃないということも、ただできない理由を並べ立てて相手に押し付ける感じになってしまったら、その本の作者としてふさわしくないというプレッシャーを感じています。そんな場面のことも本の作者としての責任を自らに課しているところかなと思いますね。
―― 私もそれは背負って生きていくことになりますね……。
後藤さん:面と向かって言われることはありませんけどね。でも、陰でも思われたくは無いですよね、できれば。
◆各世代へのメッセージを一冊の本に
―― 2冊を世に出しましたが、これから書いてみたいテーマなどはありますか。
後藤さん:今日話しながら思ったんですけどね。5年間連載をして、その前からネットワーク活動を始めていて、この10年間の経験や気づきの蓄積が2冊に詰まっているわけです。
この2冊の本に入っていない気づきや学びを得るためには、これからの10年間も自分でいろいろと行動しなければいけないんでしょうね。やはり2冊の本に書いた10年分の気付きや学びを上回るものを得られるように、これからも続けていきたいですね。そこは今、島田さんと話ながら思ったことですね。
―― 後藤さんにも何か新しい気付きがあったのなら嬉しいです。
後藤さん:3冊目もなんて言われることもありますが、そんなにネタもないですからね。
―― 1冊目のいいところと2冊目のいいところが揃った3冊目が楽しみです。
後藤さん:そうですね。これもまた今思いついたのですが、「20代のときの自分」「30代のときの自分」「40代のときの自分」「50代のときの自分」それぞれへのメッセージみたいなものを書くように、それぞれの年代の人たちの公務員としてのあるべき姿みたいなことを、自分の経験から書けたらいいかもしれません。
―― 素敵な企画ですね。
後藤さん:そういうのも面白いですよね。管理職はまだ未知の領域なので、これから経験して書けるようになるのでしょうね。
―― それ5巻セットですよね。『1巻20代編』『2巻30代編』『3巻40代編』『4巻50代編』『5巻60代編』がセットになった『後藤BOX』をぜひ発売してください。
後藤さん:そんな、全てで1冊で大丈夫ですよ。
―― 各年代に伝えたいメッセージってありますよね。
後藤さん:ありますね。私が所属する山形市と異なり、20代後半~30代くらいで係長になる自治体もあったり、自治体によって状況は異なるかもしれませんが、それぞれの10年間であるべきみたいななんとなくのぼんやりとしたものはあると思うんですよね。
だから川北秀人さんの話みたいに、20代は制度を学び、30代は20代の後輩育てて、40代は中心として制度を作り、50代になったら若い職員たちの背中を押すといったような、10年刻みでざっくりとしたものがあると思うので。そういう10年刻みくらいの考え方と、自分が経験してきたことをうまくマッチングさせたら面白いと思うんです。
―― この企画をどこかの編集部に持っていったら買ってもらえそうですね。
後藤さん:いえいえ、まだまだ先の話ですから。
―― 後藤さんが20代向けの話をどのタイミングで書籍化するのか、楽しみにしています。
◆強みを活かして、自分の可能性を広げる
―― 最後によろしければこの記事を読んでくださっている皆さんにメッセージをお願いします。
後藤さん:公務員に限った話でもないのですが、これからって考え方が大きく変わっちゃう時代だと思うんですよ。少なくとも、新型コロナウイルス感染症の影響でこれほど変わったということを考えると。
なので、未来志向で物事を考えて欲しいなぁと思うし、そういう未来の中で今の自分に足りないものって何かなとか、そういうことを意識しながら仕事をしたりプライベートの活動したりすることで、将来必ず役に立つんじゃないのかなっていうことですね。
―― 後藤さんのネットワーク活動もまさにそういうことですよね。
後藤さん:自分の強みを見つけて、考え方とか行動の仕方とかを変えて、今まで見逃していたチャンスをしっかりつかむことによって人生って大きく変わると思うんです。
本を2冊出しているような自分でも山形市役所の中に入れば普通の公務員ですからね。きっと「なんで2冊も本を出しているの」と思われています。でもそんな普通の公務員であり普通の私であっても、生き方をちょっと変えるだけですごく大きなチャンスを掴めたんだよということを、この2冊をきっかけに知ってもらえたらいいなあと思っています。
私がやったことをそのままやってという意味で本を書いたわけではなくて、「私はこんなチャンスの掴み方をしましたよ」ということを伝えたかったんです。強みを活かす生き方を意識をしながら、やってきたチャンスをつかめれば、自分の可能性が広がっていくことは間違いないので。そういう最初の自分に気づく1冊にしてほしいなぁって。
いつも例えで使っちゃうんですけど塩尻市の山田崇さんみたいな生き方は、私には絶対できません。山田崇さんみたいな人はまさにアントレプレナーだと思うんですが、同じ公務員として山田崇さんに負けないためには自分は何を一生懸命やればいいのかと考えた時に、いろいろな人をつなげるハブ的な役割で社会貢献をしていくのが自分の資質に一番合っているんだろうなぁと。そこの世界で負けないようにしようと思って自分の強みは生かそうと思ったんですよね。
塩尻市の人たちが「山田崇さんという公務員がいて自分の街はいいな」と思ってくれるように、「うちの街には後藤さんみたいな公務員がいていろいろな人を山形に連れてきてこんなことしてくれるからありがたい」みたいに思われたいですね。一人ひとりが自分の強みを最大限生かす、そして弱みを補うのは仲間。そういう生き方を一人一人がしていることによって、地域全体がよくなったりとか社会がよくなったりするのかなと思っていて、それをこの本で伝えたいんですけれど。
―― 自分の強みに気づくことの価値と強みに気付く方法のヒントも書かれていますし、後藤さんの経験を読み解くことで強みを活かすとどんないいことが何が起こるのかということもよくわかりますよね。
後藤さん:私は多様な考え方でいろいろな人とつながってコラボレーションしていなければならない時代になるんだろうなと思って仕事なり活動をしてきた結果、実際にいろいろな人とつながれたおかげで可能性が広がりました。未来を描く中で自分をどう高めていくか意識しながら活動することによって、仕事の質も上がるし人生の質も上がります。
何が人生の成功かなんてわからないけれど、自分なりに納得できる人生を歩めるというのはそういうことだと思うので、未来を見据えて頑張る公務員が増えたらいいなって思います。
―― 本日はありがとうございました。
【編集後記】
「強みを活かして行動すれば人生が拓かれる」
後藤さんのメッセージは明快でした。2冊の著書もあり発信力もある後藤さんですが、日頃は「こうしよう」「こんな風になろう」と呼びかけるものが中心。このような形でご自身の目指す"将来ビジョン"や書籍や連載など"書くこと"について語っている記事はあまりなく、後藤さんの生身の言葉をお聴きでき、非常に楽しいインタビューとなりました。
【次回予告】
私、地方公務員の島田正樹が、同じ地方公務員として先に本を出版している「センパイ公務員著者」にインタビューをするシリーズ。
次回は、福岡市に勤める今村寛さん(予定)です。
財政調整課長時代に始めた「財政出前講座」で全国各地でひっぱりだこになり2018年には、同講座を書籍をとおして体験できる『自治体の“台所"事情 財政が厳しい"ってどういうこと?』(ぎょうせい)を出している今村さんからお話をお聴きします。
★後藤好邦さんの著書
★ご報告★
おかげさまで初の著書を出させていただきました!
主に若手公務員を対象に「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」という信念のもと、「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう」というメッセージを込めて書かせていただきました。
そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。
よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。
また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。
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