センパイ著者にききました#04/今村寛さん②(全4回)
2月に初の単著『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』を出版した私、島田正樹が、同じ地方公務員として先に本を出版している「センパイ公務員著者」にインタビューをするシリーズ。
四人目は、福岡市に勤める今村寛さん。
今回のインタビューでは、今村さんが発信や著書を書くことをどのように考え、ときに悩んできたのか。そして新著のテーマともなっている「対話」についてじっくりお聴きしています。
◆元々想定になかった「第5章」
―― 2冊の本を書かれたわけですが、本を書いたことによるご自身の成長とか新しい気づきなどはありましたか?
今村さん:「書く」ということの力がすごいんですよね。言葉を紡ぎ出すことの力って本当にすごくて、執筆を始める前に「大体こんな章立てで行こうと思います」というのを第1章から第4章まで、各章7~8項目で、合計30くらい編集の犬飼さんわたしたんです。
―― 本を書くときに全体の構成として目次をつくる作業ですね。
今村さん:そうですね。で、実際に書く作業に入るときに、1冊目は出前講座を本にする形だったので、頭からしゃべっているとおりに書いていったんですけど、2冊目は頭から書かなかったんですよ。
私のnote(https://note.com/yumifumi69)などで既に書いていたものの並べ替えから始めて、第2章のこの辺はこの記事のこのエッセンスで埋まるとか、第4章はこっちの記事とあっちの記事を使うとここまで埋まるとか、そんな感じです。そうすると、目次づくりで項目は出したけれど、これまでに書いたことがない「初出し」のところがいくつか穴が開くじゃないですか。
―― noteでも雑誌でも書いたことがなくて、この本のために初めて書く項目ということですね。
今村さん:そう。その初出しのところも、もう項目のタイトルはあるから「大体こんなことを書こうかな」と思ってるんです。だけど、「今日はこの項目を書こう」と決めてもなかなか書けないので、メニューから料理を選ぶように「今日はこれが美味しそうだから書こう」みたいなそんな感じで書いたんですよね。
そうすると書く日が違うし順番もバラバラだから、だんだん「ここでこう書いたんだから、こっちではこう書かなきゃおかしいだろう」とか「これとこれ、つながらないだろう」とか「ここにもう1項目入れないとならないだろう」とか、そういうことになってくるわけですよ。
で……気がついたら、第5章ができちゃったんですよ。
「対話」で変える公務員の仕事: 自治体職員の「対話力」が未来を拓く
◆目次
第1章 自治体職員には「対話」が必要
第2章 自治体職員の仕事は「対話」で変わる
第3章 知っておきたい「対話」のコツ
第4章 「対話」の鍵を握るのは
第5章 自治体職員にもとめられる「対話」とは
―― 当初想定していた第4章で終わらず、新しい第5章が締めくくりになるように構造が変わったんですね。
今村さん:第4章で締めくくるつもりで考えていた項目も、ボリュームが増えすぎて、これは第5章として独立させなきゃまずいんじゃないかということになったんです。第4章自体もボリュームが増えて、全部で40項目くらいになりましたね。それで編集の犬飼さんからは長すぎると言われ。
本を読んでもらうと分かるんですけど、第5章は第1章から読んでいるときには、「なんでそこまで行くんだよ」っていう内容なんですよ。
でも、その「なんでそこまで行くんだよ」の部分がないと、この話は終わらないよなと思ったので、蛇足かもしれないけど第5章を書こうと。元々は第5章自体を書くつもりはなくて、あくまで第4章の最後の一節だったものが第5章になった形です。
―― ちっちゃいのが生まれたらそれがだんだん大きくなって独り立ちした、それが第5章なんですね。
今村さん:あれは1週間くらいでものすごく膨れ上がって。第4章の最後の節だけすごく増えて。それを第5章に持っていって、結局第4章を最後に書きました。元々の結論部分だったはずの第4章が最後まで残っちゃって。
―― 全体のバランスもとりつつ、すごく思いの詰まった第5章に橋をかけるように、第4章を整えるのは難しそうですね。
今村さん:難しかった。だから最初に書こうと思ったことと全然違うことを結論として持ってくるくらい、自分には発見があったわけですね。
◆「反対の意見がいても構わない」~SNS投稿のルール
―― 今村さんのSNSでの投稿やブログを拝見するたびに、「今村さんってここで読み手と対話しているのかな」と思うんですけど、如何ですか。
今村さん:あーなるほど、はいはいはい。
―― SNSで投稿する、もしくはnoteで書いてそれをシェアすると、皆さんがコメントをつけて今村さんもコメントを返す。あのやりとりが対話的ですよね。
今村さん:みんなと対話している感覚だよねっていう意識はあります。例えば「明日晴れるかな」(福岡市のオフサイトミーティング※筆者注)をやり始めた頃に、「明日晴れるかな」であったことを私がFacebookに書いて、それに誰かのコメントがついてというやり取りの中で、オフサイトミーティングがまだ続いているかのような感覚を持つという体験があったんですね。
なのでこういう風にSNSの中でコメントが続いているっていう対話も面白いなぁって思って。
よく、まだ何かわからない状態のことについて「観測気球」でふらっと「これどう思います」みたいなことをSNSで書いたら、みんながいろいろコメントを書いてくれて、何かオフサイトミーティングしてるみたいだなと感じています。
―― 今村さんの「観測気球」は投稿するたびにコメントがたくさん集まりますよね。
今村さん:対話の基本的なルールでもありますが、私の投稿のあり方として、どんな意見も受け止められるようなところにしているつもりです。「私はこう思う」と書くんだけど、私と反対の意見があっても構わない。それを常に意識しているので、コメントしやすいんじゃないかな。
◆師匠の太鼓判で吹っ切れた
―― 私も悩んだのですが「書き手としての資格」や「おまいう問題」について、今村さんはどうお考えですか。
今村さん:島田さんがnoteに書いたじゃないですか。あれは本当に響きましたね。(※2021年1月16日『あなたにそれを書く資格はありますか?』)
―― ありがとうございます。
今村さん:2冊目を書きながら、最後の最後まで自分の書き手としての資格で悩み続けたんですよ。あとがきにも書いています。最後のあとがきを書いても、結局それは解消されなかったんですね。
1冊目は、出前講座で何百回としゃべっている内容だから、それは私に書き手としての資格が十分にあるわけですよ。でも、「対話」については、私に「対話ってこうなんだよ」って講釈をたれる資格があるんだろうかと。
―― 書き終わっても消えなかった「資格」の悩み。今はどういう風に整理をつけておられるんですか。
今村さん:『「対話」で変える公務員の仕事: 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』を書いてすぐに原稿を加留部さんに送ったんです。加留部さんはプロのファシリテーターで私の対話の師匠です。
私が対話の「た」の字も知らない時に、最初にワールドカフェとかを教えてくれたのが加留部さんでした。もう10年以上前ですけど。
私の対話の概念は、その加留部さんに教えてもらってきたことがベースになっていて、どんなふうにしたらうまくいくかみたいな話は受け売りだったりするわけです。
なので、私の対話の歴史を全部知っている加留部さんに、世に出る前に読んでもらって「こんな風に出していいのかどうかも含めて、ご意見ください」とお願いしたんですよ。そうしたら大絶賛してもらって。
―― すごい。
今村さん:それはもう私が書き手としての資格として吹っ切れた瞬間ですね。
―― 師匠から太鼓判を押してもらえて吹っ切れた。
今村さん:そうですね。やはり書き手としての資格って自分自身で納得するものではなくて、人から評価されて初めて「自分がこれを書いてよかったんだ」みたいな気になるんじゃないかなと思いますね。
―― なるほど。
今村さん:普通の人はそれが出版して世に出るまで分からなくてドキドキするわけなんですけど。
―― フィードバックがあると勇気がもらえますよね。
今村さん:加留部さんに褒められたのが、まさに自分にしかできないことだったんですよね。書いているのは想いとか経験で、結局技術については書いてないわけです。それに対して、「今村さんが、本当に経験してきたことの中でどんな思いを積み重ねてきたのかということがはっきりわかる内容だった」、「だからこれは今村さんしか書けないし、今村さんにしか伝えられないことだ」と褒められたんですよね。
だから、最初に編集の犬飼さんが私の「対話に対するただならぬ想い」を感じて「書きませんか」と言ってくれたことに対する答えとして、これは合ってるんだと思えました。
読んだらみんなが実践できるようなノウハウじゃなくて、なんで私がこんなことをやってるか。結局私はそういうものしか書けないんですよね。想いとして伝えることが自分の得意技なんだろうと思うので、それがちゃんと今回うまくできただからよかったんだろうと。
>>「センパイ著者にききました#04/今村寛さん③」に続きます。
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★今村寛さんの著書
★ご報告★
おかげさまで初の著書を出させていただきました!
主に若手公務員を対象に「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」という信念のもと、「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう」というメッセージを込めて書かせていただきました。
そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。
よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。
また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。
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