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リカレント教育? リスキリング? 言葉に振り回されずに考えたいこと


どういうフラグが立っているのか分かりませんが、最近「公務員のリスキリング」というテーマで声をかけていただくことが続いています。

(私ってそういうひとなのでしょうか?)

私が周りからどう見えているかはそれほど重要ではありませんが、いずれにしても言葉に踊らされないようにしたいなって思います。


私は国家資格キャリアコンサルタントであり認定ワークショップデザイナーでもあるのですが、この二つの資格に共通しているのは「《言葉》で関係性や意味を構築する」ということです。


言葉には、「それ」を特定し「それではないもの」と区別するチカラがあります。

LGBTQという言葉があることで、「旧来の男性とも女性とも異なる性別(=それ)」と、それではないものとを区別することが可能になります。
あるひとは、LGBTQという言葉がなければ、「(旧来の意味で)男性だけどその身体的な性別に違和感を覚えているひと」と表現されていたかもしれません。でも、その表現では男性という旧来の意味での性別を押し付けてしまうという限界があります。
LGBTQという言葉には、「旧来の男性とも女性とも異なる性別(=それ)」を特定し、それではないもの(男性や女性という旧来の性別)とは異なるひとびとを「あなたたちはそれ(男性や女性という旧来の性別)ではないよ」と認めるチカラがあるのです。

聖書には「In the beginning was the Word.」という言葉もありますね。


今回、総理大臣が海外のスピーチで強調したり、政府の予算案で目玉政策のひとつとして取り上げられたことから、にわかに「リスキリング」という言葉が知られることとなりましたが、以前は「リカレント教育」なんていう言葉も騒がれました。

でも、「それ」と「それでないもの」を区別する必要がなければ、必ずしもその言葉に頼らなくてもいいのです。

つまりは「リカレント教育」なんて言わないで「学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくこと」ってイチイチ言ってもいいはずなのです。


「リスキリング」も同じです。

「リスキリング」なんて言わないで「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」ってイチイチ言ったらどうでしょうか?

「わが社では大幅な事業の組み換えに伴い社員の仕事が大きく変わる。よってこの新しい仕事で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得してもらいたい」

「わが社では大幅な事業の組み換えに伴い社員の仕事が大きく変わる。よってリスキリングが必要である」

まぁ、どちらでもいいんじゃないでしょうか?


新しい言葉というのは、「それ」と「それではないもの」とを区別したくて使うのであって、区別する必要がなければ使わなくてもいいのです。逆に考えれば、そういった言葉を使うということは、何らかの事情で「それ」と「それではないもの」を区別したいのかもしれません。

例えば、新しい言葉を示して、その小さな塊の必要性を強調して、予算を獲得するひとたちとか。

「その言葉が生きている社会をつくりたい」と願う(目論む)ひとが積極的に使おうとする、と言ってもいいかもしれません。


繰り返しになりますが、区別できると便利だと思うひとは使えばいいし、あまり意味がないと思うひとは使わなくていいのがこの手の言葉。

そういう意味で言えば、私はものを書くときは文字数の制限があるので、読み手と意味が共有できて文意が定まるのなら新しい言葉でも積極的に使います。「リスキリング」をイチイチ長い日本語で説明する必要がないことは、私にとって利用価値があるからです。


そういう新しい言葉を使うことは、社会構成主義的に考えると、①見えている(見たい)現実の中で他と区別して特別な意味を見出し、②それのための新しい言葉が生まれ(輸入され)、③言葉が使われることによってある範囲の社会に共有され、④その社会で「共有されたこと」により新たな意味を纏い、⑤新しい意味が育まれることによって新しい現実が構成されるということでしょうか。

その社会をつくるために積極的に新しい言葉を使いたい立場のひとと、そうではないひとが生じるのは、自然なこと。


少し冗長になりましたが、いずれにしても私が想うのは、リカレント教育もリスキリングも、果たして言葉として必要かどうかは、ひとそれぞれ考えていいということ。


そのうえで、私が自分の芯として持っている考えがこちらです。

「人生100年時代、学び続けるのは生きがい的な意味での《おススメ》に留まらず、生存戦略として《必要なもの》になりつつある」

もちろん、《必要なもの》だから誰かに強制されてもやむを得ないものではありませんし、自ら学ぶことは選んでいいし、それを楽しんでもいいことは変わりません。ただ、生きる上での必要性が高まってきているということ。


その状況の中で、「リカレント教育」とか「リスキリング」という言葉が必要だと思うひとは使えばいい。いずれにしても、言葉云々の前にどんな社会をつくりたいのかどんな自分で在りたいのかを考えるのが先です。

そして、今回取り上げた言葉たちに関して言えば、大切なのは学び続けるということであって、それらの言葉が大切なわけじゃないということを忘れずにいたいなって思うんです。


皆さんは、いかがお考えでしょうか?




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