異動できると思っていたのに異動できなかった~ご相談へのお答え~
今日は、初めての試みになりますがいただいたご相談に対して、noteの記事でお答えしてみたいと思います。
【ご相談内容】
はじめまして、地方公務員をしているものです。現在、入庁から6年が経過し今年度から異動なしで7年目になります。
最初から採用された職種と違う内容の仕事をずっと続けているのですが、一昨年から今までの仕事に追加でさらに違う内容の職種の仕事をしています。
さすがに今年は異動出来るだろうと思っていたのですが、異動できませんでした。
こんな時はどうやって気持ちを切り替えればいいでしょうか。
(こちらの記事へいただいたコメントをご本人にご了解いただいて掲載しています)
ご相談いただきありがとうございます。本来であればご相談内容について一つひとつ確認しながら、どういった解決策があるのか一緒に考えていくところでしょう。
今回は上記のご相談内容から分かることからお答えします。
◆何にモヤモヤを感じているのでしょうか?
まず相談者さんは何にモヤモヤを感じているのでしょうか。
相談者さんの状況は以下のとおりです。
・入庁から6年が経過し今年度から異動なしで7年目
・最初から採用された職種と違う内容の仕事をずっと続けている
・昨年から今までの仕事に追加でさらに違う内容の職種の仕事をしている
・今年は異動出来ると思っていたが、異動できなかった
入庁から異動なしで7年目を迎えるのは、確かに長い気がします。しかし、この業界ではままあることです。仕事の内容にやりがいを感じていれば、それを長いと感じて「異動出来ると思っていたが、異動できなかった」という言葉にはつながらないようにも思います。
そう考えると、この相談者さんのモヤモヤは、「異動できない時間の長さ」よりも「採用された職種と違う内容の仕事をずっと続けている」さらに「追加でさらに違う内容の職種の仕事をしている」という状況と、強く結びついているように見受けられます。
もう少し踏み込むなら、この仕事の内容だけではなく、それを指示したりその配置を決めている上司との関係性がどのような状態なのかも、大切な材料のような気がします。
また、本来ならどんな仕事をやらせてもらえると思っていたのか、採用された職種の「本流」のお仕事と今のお仕事とのギャップをどのように感じてらっしゃるのか、そのあたりもポイントかもしれません。
いずれにしても、この相談者さんは、「採用された職種と違う内容の仕事をずっと続けている」さらに「追加でさらに違う内容の職種の仕事をしている」という状況にあまり納得感がなく、任された仕事に対してもイマイチやりがいを感じることができず、モヤモヤを抱えていらっしゃるのかもしれません。
そこに「そろそろ異動できるんじゃないかな~」という期待を裏切るように「残留」という結果を受けて、ますますモヤモヤは強くなり、ご相談いただくに至った。そんな状況ではないかと、私は受け止めました。
◆なぜモヤモヤするのか
まずこの相談者さんは、採用された職種とは異なる仕事を任されています。それも入庁した最初からとのこと。
もしかしたら、入庁する前の想像と大きく異なっているのかもしれません。自分の職種だとどんな仕事をするのか、ちゃんと想像できているほどギャップが大きくなりモヤモヤも強くなります。
職種が専門的であれば、その分だけ職種と仕事のギャップは自身のアイデンティティに関わる問題になります。私が化学技師として採用されながら、他の化学技師と異なるキャリアを歩む中で感じたモヤモヤと近しいものを感じてらっしゃるかもしれません。
ただし、それでモヤモヤを感じるのは単に職種と仕事の間にギャップがあるという理由だけではなく、そのギャップに意味が見出せないからです。
要するに「あなたは化学技師だけど、環境政策でいい仕事をしてきたから、このまま化学技師の枠にとらわれずにキャリアを積んでください」と誰かが言ってくれれば、ギャップがあってもその意味を理解できて、前向きに状況と向き合おうと思えるはずです。
材料さえあれば、「私は化学技師だけど、(略)キャリアを積んでくださいということなんだな」と自分自身で意味付けしてもいいと思います。
前項で上司との関係性についても少し触れましたが、ギャップを感じているであろう職員にこういう意味付けをしてくれる関係性なのか、もっと言えば、そういうことを言ってくれる上司なのかという点も、この相談者さんのモヤモヤとは切っても切り離せません。上司が言葉にしてくれなかったとしても、いい関係が築けていれば「この上司に頼まれたのだから」と、前向きにとらえることは難しくないでしょう。
モヤモヤの正体は、ギャップがあり、かつ、そのギャップに意味が見出せないこと。そして、ギャップとの向き合い方を上司が支援していないとしたら、その上司との関係性もモヤモヤを大きくする要素になっているかもしれません。
◆相談者さんができること
さて、前項まで書いたところで悩むのが「今の状況で相談者さんができることとは何だろう」ということです。
前項まで書き上げた段階で、ご相談内容に相当程度私の推測を積み上げてしまっているので、そのうえに実際の行動のことを書くことにどれだけ意味があるのかとも思います。
・入庁から6年が経過し今年度から異動なしで7年目
・最初から採用された職種と違う内容の仕事をずっと続けている
・昨年から今までの仕事に追加でさらに違う内容の職種の仕事をしている
・今年は異動出来ると思っていたが、異動できなかった
それでも上記のような状態の相談者さんに知っていただきたいこと、考え得る行動について書いてみたいと思います。
ナンシー・K・シュロスバーグというキャリア理論で頻繁に登場する学者さんがいます。
彼女は人の転機には「イベントが起こった」「(起こると思っていた)イベントが起こらなかった(=ノンイベント)」という2つがあると言っています。
例えば、昇進した、子どもが生まれた、異動したといったものはイベントが起こった転機ですが、昇進すると思っていたのに昇進しなかった、異動すると思っていたのに移動しなかったというのはノンイベント型の転機です。
今回の相談者さんの場合は「ノンイベント」の転機にあたるでしょう。
シュロスバーグ氏は、転機においては4つのSを点検しましょう、とも言っています。
4つのS
Situation=状況(これはどういう状況なんだろう)
Self=自分(私は何が好きで何ができるんだろう)
Support=支援(周囲で誰が助けてくれるだろう)
Strategies=戦略(これからどうしよう)
相談者さんは、「気持ちを切り替えたい」と書いていますので、必ずしもこれを転機と捉えて、それを乗り越える方法を求めているわけではないかもしれません。
ただ、「異動すると思っていた(異動したかった)のに、異動しなかった」という状況で気持ちを切り替えるためには、今の状況に向き合うことが大切なように思います。
向き合う具体的な方策として、4S点検は有効な行動の一つです。
Situation=状況(これはどういう状況なんだろう)
⇒これはこの記事で私が整理したものを材料に、追加すべき要素や異なる切り口で(特に仕事以外の私生活も含め)整理していただくといいと思います。
Self=自分(私は何が好きで何ができるんだろう)
⇒おそらくこのSelfと次のSupportは、今回の相談者さんにとって大きなポイントのような気がします。まずSelfは自分が結局のところどんな作業や役割が好きなのか、これまでの仕事の中で褒められたりお礼を言われたり、やってみて夢中になれたものがないか振り返っていただき、そこから好きなことや得意なことを「仮置き」していただくといいと思います。
好きなことや得意なことを仮置きしたら、今の職場の今の仕事の中で、それらの占める割合を少しでも大きくするために、何ができるか考えてみてください。
ただし、矛盾するようですが、周りから頼まれる仕事はご自身が得意な仕事だったり、初めてやるその仕事が新しい強みや好きを開発するキッカケになることもあるので、好きでも得意でもない仕事を引き受けることも大切です。
Support=支援(周囲で誰が助けてくれるだろう)
⇒Selfに並んでポイントになりそうなSupport。これは職場では先輩や上司、その他同僚の中で誰が今の状況において支援をしてくれるか、考えてみるということです。職場ではないご家族やご友人の支援も考えていただくといいと思います。
誰が仕事で支援してくれるのか、職場での何気ない話で息抜きに付き合ってくれる人は誰か、プライベートの時間にご家族やご友人の誰とどんな過ごし方をすることでストレスを解消することができそうか、そういったことを整理します。
Strategies=戦略(これからどうしよう)
⇒最後にStrategiesです。前3点を整理したうえで、何かしら工夫をしながら現状に適応していくのか、所属内で担当業務を変えてもらうよう上司に直談判するのか、教育機関などで新しい何かを学んでみるのか、いっそ転職するのか。自分の求める生き方にマッチする戦略を立案します。
この4つのSはご自身一人で考えることもできますが、誰かに壁打ち相手になってもらって整理すると、一層はかどるかもしれません。
いずれにしてもこれらを整理したうえで、今一度、抱えているモヤモヤと向き合ってみてはいかがでしょうか。
これらが整理できると、状況を客観視でき今後の見通しも立てやすくなるので、今抱えているモヤモヤに対する感じ方も少し変わるかもしれません。
参考にしていただければ幸いです。
★ご報告★
おかげさまで初の著書を出させていただきました!
主に若手公務員を対象に「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」という信念のもと、「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう」というメッセージを込めて書かせていただきました。
そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。
よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。
また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。