強い選手が出てきても業界が発展しない理由

Xのトレンドに「錦織」の文字。

「感動した!」 「ドキドキした!」 「凄すぎる!」 多くの人が復活した錦織選手のプレーに魅了され、 錦織”ランド”に引き込まれていった様子がXの多くの投稿からも感じられました。

しかし、

「こんなにも魅力的な選手がいるのに、なぜ日本のテニス界が発展しないのか…」

こう思う人も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

せっかく魅力的な選手がいるのだから

▶︎もっとメディアが取り上げてくれれば…
▶︎協会が頑張ってくれれば…

こんな声もよく聞きます。

そして、錦織選手本人も今大会のインタビューでこのように発言していました。

「何人も強い選手がトップ100にいる状態を作らないといけない」 「トップ10に1人くらい選手がいればより後ろの選手もついていきやすくなる」

魅力的な選手が増えれば、 お客さんも増え、テニスをする人が増え、日本のテニス界ももっと盛り上がる。

現に、錦織選手が日本の大会に出場すれば、 お客さんは集まり、盛り上がっています。 それなのに…

日本のテニス界が発展しているように感じない。

それはなぜなのか。

錦織圭はディズニーランド化しているから。

私はそう考えています。

「うーん、よくわからない…」

と思いますよねw

順を追って、説明していきます。

ディズニーランドが好きな方は
感じたことがあると思うのですが、 あのエリアに足を踏み入れると、
ディズニーの世界に入ったような感覚になりますよね。

建物も、食べ物も、その場所にあるもの全てがディズニーの世界になっていて、 耳をつけたり、コスプレをしたり、 あの世界観を体全部を使って楽しんでいると思います。

そして、全力で楽しんだ後、家に帰って 「あ〜〜楽しかった!」 って日常の世界に戻っていく。

こんな感じの方は多いのではないでしょうか?

この流れがまさに、
錦織圭選手の試合を見た後のお客さんの行動と同じ
であると感じるのです。

「錦織ランド」は、 有明コロシアムという場所に足を運び、 錦織選手の魅力的なプレーによってドキドキ、ワクワクさせられ、 非日常の世界を魅せられる。 そして、思い出に大会グッズを買って家に帰り、 「あ〜楽しかった!」 って日常の世界に戻っていく。

そして、またあの世界観を感じたくて、 錦織選手が出場するときにまた有明コロシアムまで足を運ぶ。 その世界観にいる間は、中毒的な感情の高ぶりがあり、 「またその空間に戻りたい!」 と思って戻るのです。

一見、テニス界としては、 たくさんのお客さんが会場に来るので盛り上がっていますし、 お金も落ちるのでこれから発展していくように見えます。

しかし、現実的には、 他のテニス大会でお客さんが増えているわけでもなく、 テニス人口が増えているわけでもなく、 強い選手が目に見えて増えているかと言われるとそうでもない。

その一番の大きな理由は、 このように話題性のある選手が出てきても その後「日常の世界に戻っていってしまう」こと。

もし、ディズニーの世界観を日常に持ち帰って、 学校でみんなが耳をつけ始めたらどうなるでしょう?

日常にディズニーの世界が広がっていき、 「この学校では耳をつけるのが当たり前なんだ」 ってなっていきます。

けど、実際はそうならない。

残念なことに、錦織選手の世界観も ディズニーランドと同じように日常に戻るとなくなってしまっているのです。

私はこれがテニス界が発展しない大きな理由だと思っています。

実は、今大会の勝利後インタビューで印象的だった錦織選手の言葉があるんです。

「いや〜強かったですねw 自分が一番びっくりしている」
「なんで入るんだろうと思うボールも入っていた」

錦織選手にとっても、想像以上の出来だったのでしょう。 ゾーンに入っていた、とでも言いますか。

だからこそ、多くの観客までそのゾーン(世界)に引き込まれ、 観ているだけでも心が動かされたのだと思います。

しかし私は、この錦織選手の言葉に、 観客の皆さんが 錦織の世界観を日常に持ち帰れない一つの要因がある と思っているのですが、

それが何かわかりますか?

自分には到底真似できない想像以上の選手というイメージを与えていることです。

テニスをしている人ですら自分に落とし込めないぐらいすごいプレー!だとインタビューからもそう感じてしまう。

錦織選手のプレーと試合後のギャップが彼の魅力でもあるのですが、 逆に言ってしまうと、 自分ごとに落とし込めないから自分の世界に何かを持ち帰ることができないんです。

実際、そんな簡単に錦織選手のプレーを真似できるかというとできません。 しかし、これならどうでしょうか。

例えば、錦織選手が 「今日の朝ごはんに普段は食べない梅干しのおにぎりを食べたから、その成分が集中力を底上げして想像以上のプレーができた」 と言ったとしましょう。

(実際そんなこと言ってませんし、本当にそんなことが起こるかどうか今は気にしないでください)

そうすると、魅力的なプレーをみて感動したお客さんたちは、

「普段の食事を変えたことで今日のようなプレーができたのか」 「梅干しのおにぎりって試合前の朝に食べたことなかった。食べてみようかな。」

少しでも錦織の世界に近づきたくて、真似をすると思いませんか?

これが日常に錦織選手の世界観を持って変えるということ。

朝の食事という日常という自分の日常と重なる部分があるから、 真似しやすいんです。


朝バナナダイエットとかもそうですよね。 体型が魅力的な人が

「朝にバナナを食べているんです」

と言ったことで、 多くの人がバナナを買ってスーパーからバナナが消えた… なんてことがありました。

自分の今の日常と重なると行動に移しやすいってことですね。

錦織選手は、 「日本はジュニアの時は強いのに。どう克服してプロになっても強い選手を出していけるかっていうのが鍵にはなるかなと。」 とも話していました。

プロになってから、ジュニアの時の世界観のままでは勝てない。 克服するということは、 ジュニア時代の日常からプロの日常に変化しているということなんだと思います。

さっきは、食べ物の違いという分かりやすい例を出しましたが、 ▶︎今まではこんな考え方をしていたけど、トップ選手からこんなアドバイスを受けてやってみたら、こんな大きな変化があった

▶︎格上の選手と出会った時、こんな行動を取り始めたら、格上の選手と練習できるようになった

など、プロ選手として強くなっていった日常の変化を少しでも言葉で伝えてくれたら、 多くのテニスファンがそれぞれの日常にその価値観を持って帰れると思うのです。

そうすると、 錦織選手のようになりたい! と思うジュニアや若手の選手がその世界観を取り入れようと真似をする。

そしたら、 どんどんプロ選手の思考が日本のテニス界に継承されていくんです。

今、錦織選手に限らず、 多くの選手は ▶︎プレーで魅せる ▶︎戦績で納得させる ▶︎ファンの数で魅せる というところにフォーカスしている方が多い印象。

これが悪いとは言いません。 憧れを抱かせ、刺激を与え、何かしらの影響があるとは多いますし、 少なからずプラスの影響が発生していると思います。

しかしながら、その力は非常に小さい。 現実問題として、テニス界は発展していない。

そのように私は感じています。

ディズニーランドと同じ状態では、 錦織選手本人に人は集まるものの、
テニス界が発展しにくいのです。

今の錦織選手のようになろうと思っても、 ・想像以上のプレー ・オンコートと日常のギャップ ・実績 そういうところで勝負することになり、 正直、みんながディズニーのようなテーマパークを作れるかと言ったら、 かなり圧倒的な成長を遂げない限りは難しい。

錦織選手も最初から勝てていたわけではありませんし、 最初から今のような人気があったわけではありません。 強くなったきっかけがあるはずです。

それは、例えばマイケルチャンコーチだったのかもしれない。

けど、コーチが良かったから勝てるようになったのではなく、 コーチによって、錦織選手の日常が勝てる選手の日常に変化したから勝てるようになっていったということ。

それがもし、錦織選手の言葉で聞くことができたら、 それを聞いた選手たちは、自分の今の日常に持って変えることができます。

日常に何か持ち帰ることができたら、 日常がアップデートされるような感じになっていくのです。

プレーや実績が錦織選手に近づくのではなく、 錦織選手が見ている世界観、思考に近づいていく。

そうすると自然とプロの世界でも成長できる選手になっていき、 その結果として試合に勝てたり、ファンができたりするようになる。

これが今のテニス界、強いてはスポーツ界に必要なことだと思っています。

戦績を残すこと、 強い選手になること、 ディズニーランドのように中毒性のある魅力を持つ選手が出てくるのを待つのではなく、

多くの方の日常に 魅力的な選手の生き方のコツを持って帰ってもらえるようなテニス界 となってほしいと心から思っています。

そしたら、テニスの日常がどんどん楽しくなっていき、 実績や数字ばかりを追う現実ではなく、 本当のスポーツの良さが伝わっていくと確信しています。

これを広げていくためには
私の発信で少しでも学びを日常に持ち帰ってもらい
日常の世界をアップデートしてほしい。

しかし、私自身も魅力的でないと
この発信内容も伝わらないですから、 日々勉強して、自分自身を磨いていくことを忘れないようにしたいと思います。

テニスに関わった人みんなが 人生を通して「テニスっていいな」と言えるような未来にしていくには私一人の力では到底無理です。

だから、同じ世界を見ていく仲間に少しでもこの価値観届けていきたい。

スタートしたばかりで、まだまだ未熟ですが、未来に向かって進んでいきますのでよろしくお願いします。

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