お道化うた
一人の戯れた小男が
アコーディオンを弾いている
それに合わせて一人の道化が
潜水姿で叫いている
(平板なプラスチックを
柘榴水で満たそう
あっちこっちに飛び散らせてさ
絨毯なんかも真っ赤に染めて)
ヘルメットにくぐもった声は
悪夢の如く響いている
(霊柩と香煙が一穂
瀕死の孤独が翩翻と歩き、
機械仕掛けの大地が幽々と進んでいる)
(見えないのか
諸賢は平然と嘆いて
巨釜に茹でられ続けている
ご機嫌よろしゅう、
オヤ、お顔のあんまり赤いこと
幸と不幸を糾う糸の、繭になろうと志願した
それ故、頬をそんなに染めなさる?)
(霊柩と香煙も素通りするし
ごった煮の釜に孤独は皆無
それどころか溶け合う人、人、人!)
誰も足を止めない
道化の悲嘆は怒りと変わる
(曲がりくねった路は
ただ一向に真っ直ぐである
怠惰な神の目溢しを塞くには
命題は造作ない方が良いだろう
片手で釜を掻き回し
絶妙な蒸気で命数を隠し
搦めて引っぱって、
そりゃあ、素晴らしいアルデンテ)
(霊柩で通りがごった返して
香を焚く者もない
それでも大地が蠢くもんだから
均衡を失った、満艦飾!)
彼はそう言うなり
喪神した
歓声を上げて拍手を送る
きっと演技ではないのだろう、、、
笑え、笑えよ、道化師
君は驢馬の耳の方が似合うのだから
(詩誌フラジゃイル第10号掲載)
2024/01/07noteにて再掲
見出し:mage.space使用にて作成
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