スタディ通信 23年10月号
ミーティングが終わってから、気付いたら2週間経っていました。
その間は結構バタバタとしていましたね。9月から体調不良で仕事を休職していたのですが、復職したり。仕事があるってのはありがたいもんだなぁ、と感じております。
スタディのふりかえり
さて、2週間前にセッション15を行いました。
そこではAAと反知性主義の関係を、ジェイムズの議論から紐解く試みをしましたね。
ジェイムズは宗教という現象の土台を人間の「感情」に置きます。
このような姿勢はアメリカの反知性主義の伝統から解釈することが可能です。
ジェイムズはアメリカの哲学者・心理学者としてヨーロッパへ赴き、自然神学の最高峰であるギフォード講義に臨んでいます。その彼がヨーロッパの知識人に向かって上記引用のような宣言をする、これはアメリカの新鮮で鮮烈な霊性の発露と言えるでしょう。
この点はAAにもしっかりと受け継がれています。
AAメンバーはミーティングやスポンサーシップにおいて、自らの救いの体験を証しします。しかしAAメンバーは聖職者としての叙階も訓練も受けてはいません。私たちは自らの体験から、そして自らの確信からアルコホリズムからの回復を語ります。
個人の救済の体験を主体とした証言、それは18世紀アメリカのリバイバリズムを彷彿とさせるものです。AAのテキストにもこうあります。
「私たちの回復はAAという組織や教義によってもたらされたものではない。それはハイヤーパワーとアルコホーリク個人の間で起こるものである」そんなAAの反知性主義の宣言が上記引用でしょう。
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近年のAAでは「回復はミーティングにたくさん出席することによって起こる」「仲間の力によって回復する」「12ステップに徹底して取り組むことによって回復する」「サービス活動に携わることで回復する」「正直に話すことで回復する」などなどなどの回復の教義化・理論化の流れがあります。
そんな堅苦しく、閉鎖的で、理屈っぽく、頭でっかちな教義化に対して、ジェイムズの反知性主義に立つならば「そうではない。回復は自分を超えた力が自分に与えてくれる感情を土台にして起こる」と主張できるでしょう。
それはAA共同創始者のドクター・ボブが言った「シンプルにしよう」という言葉を思い起こさせる主張です。
「教義や理論で無駄に複雑にするのはやめよう、回復は神が起こしてくれるんだ。その事実で十分じゃないか?」そんなドクターの声が聞こえるような気がしています。
次回はプラグマティズムにフォーカスを移す予定です。よろしくお付き合いください。
参考文献
AA (2003) 『アルコホーリクス・アノニマス』 AA日本出版局訳, JSO
ジェイムズ, ウィリアム (1970) 『宗教的経験の諸相 (下)』桝田啓三郎訳, 岩波文庫
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